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愛され転生令嬢は、頭が悪いと罵倒されました  作者: かないたちばな
王都学園一年目
28/36

過去話・魔石を作ろう〜実践編

今回も長いです

エラさん本領発揮



「「「「おはようございます姫様!!!!」」」」

「おはようゴザイマス……?」

 朝から刀工さん達にすごい熱量で迎えられた。

 なにがあったの。外面はにっこりしながら内心で琴音を見ると、悪びれない琴音がうんうんと頷く気配。

『いやぁ、偏屈で頑固な職人気質かと思ったら、みなさん新しい技術や腕を上げることに貪欲で柔軟で。製鉄の話で盛り上がっちゃったよ』

 詳しくはわからないけど、昨日私が寝ている間になにか通じ合ったもよう。琴音は実験、騎士は筋肉、職人は技術。ブルームの領民は職務に熱心である。善きかな善きかな。


「あ」

 少し離れたところに眩い赤色を見つけて近付く。

「サフルくんおはよう!」

「お、おはようございます、姫様」

 戸惑ったように頭を下げるサフルくんの様子に首を傾げる。目が合わない。不思議に思って見上げていたが、ボルグ師に呼ばれた。


「早速だが、姫様のやりたいってことを説明してくれ」

 昨日一日でだいぶ信用を得たらしく、ボルグ師がワクワクしたような瞳で促してくる。心は永遠の少年なのかな。素敵です。

「はい!」

 元気よく返事をしたのは琴音の方。

「御社にお願いしたいのは、魔物から採ったこの浄化器官を鉱物化させることです!」

 そう宣言してごそごそと籠から取り出した見た目生々しい臓器に、刀工さん達が一斉にずざっと後ずさった。

「鉱物化だ?そんなことが出来るのか?なんのために」

「機能はそのままで、腐らないようにしたいのです。鉱物化自体は、実際に生き物は化石になるので可能だと予測しています。目的は、農地改革と魔物の乱獲を防ぐこと」


 理路整然とした言葉に、刀工さん達が顔を見合わせる。ううん?あまり手応えがない感じ?

「農地改革……それは、俺らには縁のないことだな」

「魔物が減るのはいいことじゃないのか?人間や獣を襲うんだろ?」

 そうか。農業に向かないこの地で育った彼らには、農地のためといっても関心が薄いみたい。さっきまでの熱量はどこへやら、どこか期待外れといったような顔を見て焦る私をよそに、琴音は余裕な様子でルー兄様を振り返る。応えて頷いたルー兄様がドアを開け、外で控えていたらしい奥様方を呼び込んだ。


 ふわり、と漂うお出汁の香り。

 あれ、うちのご飯の匂いがする。昨日、この町で一番だという店で食べた昼食も、安定の塩味だったのに。

 首を傾げている間に、何人もの奥様方により料理のお皿が運ばれてきた。シンプルなサラダや野菜炒めと牛骨スープで煮込んだ野菜スープが、大きな器からいい匂いを放ちながらどんどんと小分けに取り分けられていく。

 朝食を済ませているにも関わらず食欲を刺激する匂いに、若い子達から年配の方に至るまで目が輝いた。

 琴音がにっこりと笑う。

「こちらが、浄化器官を使って無毒化した土地で採れた野菜を使った料理です。どうぞご賞味くださいませ」


 一斉に料理に手が伸びた。

 野菜と言いながらもどの料理にも肉が入ってるし、味付けに野菜じゃない旨味が足されていてズルい気もするけど、みんながその味に目を丸くする。

「美味い!これがいつも食ってるのと同じ野菜なのか?」

「土が変わるだけで?」

「そうか……鉄が変われば確かに打ち上がりの質も変わるか……」

「こんな美味くなるなら、やってみる価値はあるな!」

 打って変わって協力的な言葉があちこちから聞こえだす。

 やった、胃袋を掴んだ。美味しいものは正義。

「あ、鍛錬はボルグ師にお願いしたいです。皆さんには別件を」

 せっかくやる気になったのにと不満げな声が上がるが、そこは譲れない。わがまま姫だと罵るがいいさ。


 ちなみにお手伝いの奥様方への料理指導は、護衛騎士のマティアスさん26歳独身、うまみに出会って料理が趣味になった人でした。

 感謝。

 




 既に昨日の製鉄の実験のついでで、魔素あたりの特効薬でもある、竹炭と浄化器官を粉砕した『浄化炭』を使って玉鋼を作ってあるそうだ。


 通常の精錬した鋼に浄化炭を混ぜたものと、浄化炭のみを精錬したもの。後者はまだ実験段階なので、鍛錬の結果をみてから改良するらしい。

 鑑定結果は『魔鉱』の星2と『屑魔鉱』の星4。

 星は品質。屑だから材質としては混ぜ物の方が上だけど、浄化炭だけの方が品質はいいってこと?うーん、難しい。


 その魔鉱を鍛錬してもらうのが今日の実験。

 ついでに浄化器官が超高熱でどうなるかもやってみたい。

 あと、ギルタには陶器工房もあった。浄化炭を粘土にして、陶器みたいに焼いてみたらどうだろう?割れちゃうかな?

 これも顔の広いゴッタさんが職人さんに頼んでくれることになった。

 うまくいったら竹炭の生産量も増やさないとだな。ブルーム竹は一本が大きいし成長が早いので、素材として使い勝手が良さそう。


 とりあえずは鍛錬だとボルグ師にお願いすると、眉間にギッチリと皺を刻んだ顔で睨まれた。

「待て待て!そんな訳の分からないものを先祖代々継いできた炉に入れられるか!」

 前言撤回。全然信用されていなかった。

 浄化器官を叩き潰して飛び散らせ、ハグで破砕した前科を知るルー兄様が横でうんうん頷いている。ルー兄様がなにか吹き込んだに違いない。

「刀匠の魂を穢すわけにいかないからな」

 やはりか。麗しいキリッとした顔で諭される。

 妹可愛さより騎士の誇り的なものが勝利したもよう。むぅ。


「……ルー兄様、ひどい」

 ぷくっと頬を膨らませ、うるうる涙目で見上げてやる。

「ぐぅっ」

 罪悪感に胸を押さえるルー兄様からぷいっと顔を背け、険しい顔のボルグ師に向かって胸の前で両手を握り、首を傾げて眉を下げる。

「エラ、新しい炉が欲しいです。ボルグおじちゃまの邪魔にならないように……」

 浄化器官用の新しい炉を作ってもらうように、全力あざとさをもっておねだりをする。

「わかった、じいちゃんに任せとけ!」

 気難しく刀匠の誇り高いボルグ師だが、所詮は孫を持つちょろいお爺ちゃんだ(言い方……と琴音に突っ込まれた)。即座に引き受けてくださった。


「だが姫様、新しく炉を作るにはひと月はかかるぞ」

「ひと月」

 がーん。長い。長すぎる。

「煉瓦積みの簡易窯じゃあ温度が足りないしなぁ」

「……できない、の?じっけん」

「エラ、どれだけ可愛く言っても無理なものは無理だ。決してこれは兄様のせいじゃないぞ?」

 あざとく瞳をうるうるさせる私に、かがみこんで目線を合わせたルー兄様が、真剣な眼差しで再び諭してくる。

 ルー兄様の責任逃れの言葉に慌てたのはボルグ師だ。

「若様自分だけずるいぞ!ああ、姫様、そんな悲しそうな顔しないでくれ……くっ、しかし工房の炉になにかあれば、先代達に顔向けができねぇ!」

「じっけん……おじちゃま……?」

「泣きそう!?俺はどうすれば……!」

「…………あの、親方」

 てんやわんやの様相を呈してきたところで、おずおずと誰かが口を挟んできた。

 ちぇ。あともうひと押しだったのに。


「サフル?どうした」

 サフルくんだった。冷静なゴッタさんに問われたサフルくんが、言おうかどうしようか迷うような素振りで、燃えるような赤毛をくしゃりとかき混ぜなから切り出した。

「実は、俺……練習用の炉を作ってて」

「は?」

「作って、つか!街の外れにある使ってない工房の古い炉を直して、鉄釘とか鋳つぶしたやつで練習を」

 首をすくめて早口で言うサフルくんと、目を剥く師匠達を見るかぎり、どうもこれは怒られるやつらしい。


「おまえ、半人前がなんてあぶねぇことを!!」

「再利用!サフルくんえらい!」

 ゴッタさんの怒声と琴音の賛辞の声がかぶり、ビクッとしたサフルくんがその後のリアクションに困ってる。

 え、空気読んで琴音。今のはお説教の流れだよ?

 そしてルー兄様は、なんでサフルくんを羨ましそうに睨んでいるの。褒めたから?えらいって言ったから?


「監督者なしに炉を弄るにしても、他の工房の職人に見てもらってるにしてもウチへの不義理だ。問答無用でクビになってもおかしくねぇぞ、サフル」

「考えが足りなくてすみません!」

 琴音の賞賛をスルーしたゴッタさんが、厳つさ三割増しでサフルくんを叱る。顔を真っ青にしたサフルくんは慌てて膝をついて頭を下げた。

 内緒で他所の工房で練習するのは、お世話になってる工房のメンツを潰すってことなのね。なるほど。


「街の外れの使ってない工房っていうと、ドーガじいさんとこだろ。知り合いだったのか?」

 考え込むような顔をしていたボルグ師が、顎を撫でながら口を開く。

 サフルくんが微かに震えながらも頷いた。

「子供の頃からかわいがってもらってたんです。つってもその頃にはもうじいさんは引退してたし、工房も閉めてましたけど」

「そういや、ドーガじいの息子の嫁さんが、じいさんが面倒みてる若いのがいるとかなんとか……サフルのことだったのか」

 ほんとに顔広いなゴッタさん。小さな町だけど人口はそれなりだ。


「で、じいさんには好きなように使っていいって言われてるんで、……親方がよかったらですけど、姫様の実験にその炉を使わせてもらったらどうかって」

 なんですと。

 即座にぐりんと首を回してボルグ師を見上げる。

「いや、いくら廃炉だからって……うっ!」

 しがらみなのかプライドなのか、難しい顔をしていたボルグ師が私と目が合うなり声を詰まらせた。


「ゴフンンッ……。使えるかどうか確認してからだ」

「はい!」

「おじちゃま!」

「じゃあ、俺はドーガじいさんとこ行ってきます。ついでに陶器工房にも声かけときますね」

「ゴッタさん頼りになるっ!」

 なんてことだ、媚を売らなくても協力してくれるなんて!しかもほんと顔広い!

「親方、若様……そんな顔して睨まれても」

 ゴッタさんの呆れた声がしたけど、陶器工房への発注を考るのに忙しいので放置した。





 ーーそんな紆余曲折ありで訪れたドーガおじいちゃんの元工房で、更に一波乱あるなんて誰が思っただろう。

「いや。エラが考えた実験をするんだから、一波乱どころじゃ済まないことは想定内だ。だから俺が残ったんだからな」

「今回は私のせいじゃなくて、サフルくんのせいじゃないですか!」

 平常運転のルー兄様とぷんぷんと怒る私をのぞいたーーボルグ師、サフルくん、ゴッタさん、ドーガおじいちゃんが口をぽかんと開けて出来上がった試作品に目を奪われている。


「浄化器官が熱に強いのに火に弱くて普通に燃えるとか、びっくりですよね」

「「びっくりしたのはそっちじゃねぇよ!!」」

 こんがり焦げて炭になった成れの果てを憐れむと、ボルグ師とゴッタさんが素で突っ込んできた。

 考えてみれば死んだ魔物とか燃やして処理したら、何も残らないもんな。

「姫様、それよりこっちの説明をお願いします……」

 なんでこんなものが、と真っ青で震えるサフルくんが、今度こそ泣きながら私のワンピースの裾を掴んで縋ってきた。


「ありがとう成功しました!」

「だから何が起こったんですかぁぁああ!?」

 サフルくんがなにかうっかりすごい機密に触れたモブのように怯えている。やだなぁ。消されたりしないよ?


 魔鉱と屑魔鉱をサフルくんの練習用の炉で鍛錬した結果、叩いて刀みたいに伸びるかと思いきや立体のまま圧縮されていった。

 ここにはやはり技術力がモノを言うようで、サフルくんが叩いたものよりボルグ師が叩いたもののほうが美しい球体になった。

 しかし『鑑定』してみると、二つは全く違うものになっていたのだ。


「まず、魔鉱を鍛錬したら『浄化石』になりました」

 グロテスクな見た目の浄化器官と違って、つるりとした透明感のある綺麗な宝石のように見える。

 土に埋めてみると問題なく魔素の毒だけを吸収した。不思議なことに毒を吸うと透明感が濁っていく。残量が目に見えるなんて便利すぎる。

「これは魔素の毒素を吸収する特性のまま鉱石化したので、繰り返し使用が可能なようです。戻り次第、試験運用に入ります!」

 改めて魔鉱の材料を届けることにして、ボルグ師に作成をお願いした。炉が何ともなかったので工房で作ってくれるとのこと。


「そして屑魔鉱の方は、なんと」

「「「なんと?」」」

「ズバリ、『魔石』になりました!」

「「「魔石……?」」」

 やだリアクション薄い、と琴音が眉根を寄せる。

 いや、こっちの世界にはそういうファンタジー小説とかないんで、琴音と共存してる私ぐらいしか感動できないと思うよ。

 サフルくんは更にガクブルってるし。

「ズバリって言われても、聞いたことないんですけど!俺いったい何作っちゃったんですかぁ!?」


 魔石です。

 見た目はこれも宝石みたいに見える。

 外側は漆黒、中央にいくにつれて赤くなっていくグラデーションで、今は中心が黒ずんでいる。


「そうなんだよねぇ。魔石はなんと、火の加護人の炉でしかできないみたいなの」

「加護っ……」

 鑑定結果を伝えると、サフルくんが完全に言葉を失った。なぜだかドーガおじいちゃんが『わしは知っとったよ』みたいな満足げな顔でうんうん頷いている。

「なにを今更驚いてんだ?言っただろう」

 ゴッタさんが不思議そうに首を傾げる。

 サフルくん、迷信だって思ってたからね。


「それで姫様、魔石ってのは一体なんなんだ?」

 ボルグ師の問いに琴音が素早く反応した。

「まず、今この魔石は空っぽです。それをこうすれば」

 魔石を毒素を吸った浄化石にびたりとくっつけると、みるみるうちに浄化石が透明になっていく。

 代わりに魔石の輝きが僅かに増し、黒ずんでいた中心部分までが真紅に染まる。きらきらして綺麗。

「吸収した魔素毒を圧縮して保存してくれます!

 その他の効果については……ルー兄様、効果を検証したいのでもう一泊したいです!」

「わかった。手配しよう」

 頼られたルー兄様が、魔素毒を吸った魔石のようにきらきらし出した。綺麗です。




「ですが、その前に」

 にこり、と笑って籠から取り出したのは誓約書と魔素汁。

「こちらの秘密保持の誓約書にサインをお願いします」

 裏も何もない、純粋に口外を禁止するだけの誓約内容が記されている。具体的な契約とかはまた別途、父様達が用意してくれる。

「ああ……確かにこれは、どこにでも出せる技術じゃねぇだろうな」

 工房の親方であるボルグ師とゴッタさんは、あっさりと納得して書面を読んでサインをしてくれた。

 ドーガおじいちゃんも然り。ドーガおじいちゃんには工房と炉の使用についてもお願いしないと。


 そして肝心のサフルくんは、どこかぼんやりした顔で魔石を見つめたままだ。


「サフルくん?なにか質問があったら聞いてね」

 今この時点で、サフルくんは琴音にとっての最重要人物になった。全力で囲い込むよ!


「…………俺にしか、できない?」

「うん、そうだよ!」

 しっかりと頷いてみせる私の後ろから、ボルグ師が腕組みをして見下ろす。

「まだまだ修行は必要だがな」

「わかってます!でも…………そうか、俺に」

 サフルくんの頰にぽろりと涙がこぼれ落ちた。

「俺にも、できることがあったのか」





✳︎✳︎✳︎side サフル



 俺は商人の家に生まれた。

 なのに、商人に向いていないって言われた時、息子としてもダメだと言われた気がした。

 生まれた時から見ていた職業がうまくいかないなら、ほかになにができるというのか。

 家族の中で浮いてしまうこの赤毛もコンプレックスでしかなくて、目的も自信も失って。

 火の加護なんて信じてなかったし、誘われるがままに飛び込んだ鍛治の世界は興味を持てなくて。


 だけどーー

 目の前のきらきらした魔石と、それに負けないくらいきらきらした紫の瞳に魅入られた。

 

 この美しいものを生み出せるのは、俺だけ。

 それはひどく甘い陶酔を連れてくる事実。

 この力があれば、もっと綺麗なものを手に入れられるかもしれないーー








 翌朝。

 昨日一日で伸びに伸びた鼻っ柱は、得意満面といった顔で俺達を見下ろした姫様を見て、ぽきりと折れた。


「ね、すごいでしょ!?これでワームの地荒らし問題も解決だよ!!」


 姫様はうようよ蠢く巨大なワームの上に乗っている。そしてその後ろにびしっと整列したワームの群れ。

 普通女子供は怖がるのでは……いや、こんなん男でも怖いわ!親方ですら顔面蒼白でへたりこんでいる。


 町から離れた場所に呼び集められたワームの大群。

 どこにでもいる魔物で、人は襲わないがあちこちの地面を掘り起こす被害が出ているらしいとゴッタさんが呟いた。



「まさか、魔石で魔物を飼い慣らせるとはな……」

 唖然とした顔で呟く若様が、信じられないほど高く跳躍して姫様の隣に降り立つ。

「だがエラ、一人では危ない」

 姫様をひょいと抱き上げた若様の姿は、恐ろしく格好良く、まるで天上の芸術品だ。足元はワームだけど。


「調子に乗ろうとしてすみませんでした……」

「いや、お前もすごいと思うよ。あの方々が規格外なだけで」

 ゴッタさんの慰めも虚しくなるばかりだ。

 俺は俺にできることを地道に頑張ろう。




 その後、姫様の計画していた農地改革はもちろん成功した。

 それどころか、ワームが作る繭から絹製品ができたり、他の職人に発注していた台所の便利用品がバカ売れしたり、陶器工房と提携して作り出した料理を無毒化する食器が王家御用達になったり、真空ポンプなる大型機械で作り出した保存食品のでっかい工場ができたりと、姫様の功績は数えきれない。


 更にはあの謎のインクで署名した誓約書にも秘密があるらしく、俺達は浄化石や魔石について物理的に口外することができなくなっている。

 いや、口外する気もないからいいけど。

 姫様を敵に回すのは無謀だと、俺は知っている。






✳︎✳︎✳︎




 ワームで地下トンネルを掘る計画に着手する頃、成人の儀を終えたルー兄様が家出した。

 理由も言わず、伴も連れずたった一人で。


 寂しさを山積みの仕事と実験で紛らわせている内に、今度はガオ兄様が成人の儀を迎えて次期当主にと指名され、忙しくなりました。


 だけど、いつからか目を閉じると、黒髪の私の姿になった琴音がいてくれたから、私は孤独を感じずにすんだのだと思う。






 




今回の過去話はここまで


次話は王都の人達です


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