フェルン@と存在の認識
フェルン@さんの事を知ることになったのは、とある動画斎藤に投稿された1本の動画がきっかけである。
~動画内容~
「今日は、うちのギルドに入って約2週間になる新人ちゃんを、俺と相方の2人でPKエリアに連れて行き、PKエリア内の安全地帯から抜け出すことが出来ないようにしたいと思いまーす」
かなり軽いノリで始まった動画なのだが、始まって早々に人を不快にさせてくれる内容の動画だ……。
「どうも~、今紹介にあった相方で~す。で、誰を呼び出すの?」
「それは、アレだよアレ。例の問題児」
「あ~……。ゲームを始めて2週間毎日ログインしているのにも拘らず、未だにレベル2のアイツね」
ん?今、ゲーム開始2週間と聞こえたが、2時間との間違いだろうか……?
通常ならクエストを消化して回るだけで1日あれば、20レベルには到達出来るのに、変な人もいたものだ……。
だが、このオンラインゲームは一応MMORPGと言う事になってはいるが、シューティングゲームや、カードゲーム、ボードゲームなど各種ゲームは勿論の事、AI開発や懸賞などスポンサーの協力のもと色々な物で遊ぶことが出来る事が大きな特徴で、一応メインはRPGなのだが、RPGでは遊ばずにずっとレベル1で遊んでいる人も結構な人数居るので、2週間で2レベルと言うのは実はそれほど珍しくもない。
……だが、今動画の撮影者と思しき人物は、ギルドランクTop5に入る大手ギルドの幹部連中である。
所謂ゲームガチ勢の集まりだ。
そんなギルドに入って、2週間でレベル2と言うのはあまりにも不自然すぎるのだ。
「そうそう、アイツ。うちのギルドに入っておきながら、真面目にやる気が無いようなので、少し痛い目を見てもらおうかなと思ってね」
「でも、どうやって呼び出すの?」
「パワーレベリングしてやるからって言って呼び出すつもり。今、メッセージ送るからちょっと待って」
「はいよ」
メッセージ画面
フェルン@さん、こんばんは
今から友達とレベル上げをしに行くのですが、フェルン@さんもよろしければご一緒しませんか?
フェルン@さんはレベル上げで苦戦しているようなので、少しでもお手伝い出来ればと思っています
PTを組んで、同じフィールドに居るだけでレベルが上がると思います
レベルが少し高い場所に行くので、少し大変だと思うのですが、10分程度でもいいので試しに来ませんか?
少し同行してみて、ダメだと思ったらPTを抜けて、今まで通りフェルン@さんのレベルにあった場所でレベル上げをしていただいて大丈夫なので、時間があるようならいかがでしょうか?
メッセージ
本当にボクもついて行っていいんですか?
弱くて全くお役に立てないと思いますが、それでも良ければお願いします
あー……。上手く誘い出されてしまったようだ……。
「釣れた。今からPT送って迎えに行くとするか」
「OK」
/wis to フェル@:今からPT送ります。参加お願いします
システム:フェルン@がPTに参加しました
/PT 狼士:フェルン@さん、今から迎えに行くので村の近くのワープ地点に居てください
/PT フェルン@:わかりました。よろしくお願いします
「よし、行くか」
「OK、とりあえず登録地点まで飛ぶ」
そして、2人は一旦セーブした地点へ飛び、フェルン@さんとの待ち合わせ場所の村へと飛んだ。
「フェルン@さん、おまたせしました」
「誘ってくれてありがとうございます。よろしくお願いします」
「今、狩場の近くに飛べるようにしてから戻ってくるので、少し待っててください」
「はい」
そう言い残し、狼士はPKエリアに近い街へワープをして、登録をしてからフェルン@さんの元へと戻った。
「じゃあ、今からテレポート使います」
「はい」
そして、PKエリアに近い街へ飛ぶ3人。
「これから行く狩場の中に集落もあるんだけど、そこにワープするのは通常の10倍以上お金がかかるから、少し歩くことになるけど、敵に攻撃されて死なないようにだけ気を付けてください」
今、狼士が言った集落と言うのが、PKエリア内の安全地帯の事だ。
「はい、頑張ります」
「フェルン@さんが攻撃しなければ、向こうから攻撃してくることは無いと思うし、近づいてくるような敵は俺達2人で倒せるから、離れすぎないように注意してついてくれば大丈夫なので、気楽に行こう」
「はい、よろしくお願いします」
そして、狼士の計画通りに安全地帯を目指す3人。
「はーい、到着ー。ここまでは結構簡単だったでしょ?」
「はい、ボクはついてきただけで何もしてないので、簡単でした」
「ここからは少し難易度が上がるから、念のためにここで登録しておこう。たぶん大丈夫だと思うけど、万が一死んだ場合は、ここで登録しておかないと迎えに行けなくなるから」
「分かりました。死なないように気を付けます」
そして、フェルン@さんは狼士に言われるがまま何の疑問も抱かずに登録をし始めた。
……これが、これから始まるフェルン@さんの悲劇の始まりとは知らずに……。
「登録しました」
「じゃあ、行こうか。狩場は来た方向と逆側だから、ついてきて」
「はい」
そして、集落の反対側であるPKエリア前に到着する3人。
「ここから先が狩場だから、気を付けて」
「はい」
そして、数百メートル進んだ時、狼士の態度が一変する。
「ちょっと止まるよ」
「はい」
システム:フェルン@をPTから追放しました
「えっ?狼士さん?」
何が起きたのか理解できずに狼狽するフェルン@さん。
「オマエ、2週間もゲームやってて、まだレベル2とかふざけてるだろ!」
今までの態度が嘘のように、豹変した狼士。
「ちゃんとやってます」
「ヒーラー志望と言いながら、回復スキルも覚える気が無いようだし……」
「覚えたいんですが、スキル欄が覚えられる状態にならないんです」
「嘘つくな!ヒールはレベル2で覚えられるんだぞ!覚えられない訳ないだろ!」
確かに、このゲームではスキルポイントが1あればヒールのレベル1を覚えることが出来る。
回復職を目指すのであれば、まず最初に覚えるべきスキルであり、必修スキルと言えるだろう。
そのヒールすらも覚えないでヒーラーをやることは、まず不可能である。
なぜなら、もっと上位の回復スキルはヒールから派生しているスキルであり、スキルツリーの一番根っこの部分がこのヒールと言うスキルなのである。
よって、ヒールを習得しなければ上位スキルも習得できないと言う事になり、回復職を目指すのであれば必修スキルとなるのだ。
「百歩譲って、ヒーラーをやらないにしても、2週間でレベル2はあり得ないだろ!オマエどこのギルドに入ってるか自覚あるのかよ!」
「でも、クエストも出てこないので、レベルもなかなか上がらn……
「言い訳はしないでいいから!もうオマエとはかかわらないから頑張って帰還しろよ。オマエが、セーブしたポイントの周辺はPKエリアだから気を付けて帰れよ」
フェルン@さんの言葉を遮り、どう考えても無理な事を言い、狼士はフェルン@さんを攻撃した。
狼士は1撃でフェルン@さんを倒し、テレポートで街へ帰還する2人。
ここで、動画は終わる……。
動画の最初から最後まで不快で、最後の後味の悪さまでトッピングされ見ていて感じの良いものではなかった……。
プルルルル……。
この動画を見るように促してきた張本人に電話をかける。
「もしもし」
「もしもし、言われた動画見たけど、何これ?」
「動画投稿日も見た?」
「登校日……?えーっと……、1カ月半くらい前になってるけど、結構古い動画だな。何でこんな動画見せたの?」
「その子、まだその場所にいるらしいの。動画の説明欄にリンクがあるでしょ?そこの掲示板に、その子の近況が書かれてるから間違いない」
話の流れからして、嫌な予感しかしない……。
「で?」
「その子を助けに行きたいの!」
なんとなく予想はついたが、やっぱりそういう話か……。
「大変だと思うけど頑張って」
「何他人事みたいに話してるの?あんたもついてくるのよ!」
「ですよねー。でも、俺達そこまで強くないから2人だとあの場所まで辿り着かないよ?」
「一応ギルマスでしょ!ギルドの人に頼んでよ!ワタシも頼むから」
人に物を頼むのに”一応”とか言ってるし、一度人に物を頼むときの態度というものを叩き込んだ方がいいのかもしれない……。
「えー…。普通に気が進まないんだけど。ってか何のうまみもないPKエリアに見ず知らずの子を助けに行かないといけないんだよ」
「あの子が、ワタシ好みの可愛いショタだからよ!!文句ある!?」
文句ある?って文句しかないのだが……?
「一応明日、ギルド掲示板で行く人の募集かけてみるけど、集まらなかったら諦めろよ」
コイツとは古い付き合いなので拒否したところで、しつこく粘られるうえに後々面倒なことを言われる事は目に見えているので、表面上は了承したように見せておくことにした。
「集まらなかったら別の方法を考えるわ」
プープープー……。
諦めろと言ったのに、別の方法を考えるとか言ってるし……。
そ・れ・に!!せめて何か一言添えてから電話を切れ!!!
翌日……。
ギルド掲示板
来週月曜日、PKエリアに居るある人物の救出に向かいます。
協力していただける方は、今週の日曜日PM9時までに天空城にあるshowの自宅へ来てください。
9時から作戦などの話し合いをします。
また、月曜日に参加したい方で、日曜日に予定があって作戦会議に参加できない方は救出作戦に参加する旨をメッセージしてください。
ご協力お願いします。
救出予定の人物について
http://www~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
リンク先の内容は不快な内容が含まれています。見る際はご注意ください。
投稿者show
昨日言われた通りに募集をかけたので、理不尽な文句を言われることは無いだろう。
しかし、ユッキーとの電話でのやり取りの後に掲示板を確認してみたのだが、フェルン@さんの近況は毎日のように更新されていた。
これはすなわち、フェルン@さんがあのエリアに居る人達にある程度認識されていると同時に監視されていると言う事だろう。
簡単に言ってしまうと、あの周辺で遊んでいる人達の良い玩具と言うことになる。
……となると、あの場所に取り残された当初ならば何かの弾みで脱出出来たかもしれないが、今となってはユッキーのような変人か、奇特な人が現れない限り脱出はほぼ不可能だろう。
実際、幸か不幸かユッキーの目に留まったのだ。まだ救いはあるのかもしれない……。
そして、日曜日PM7:00……。
/wis from ユッキー:早く作戦会議したいんだけど
/wis to ユッキー:まだ7時www2時間も早いんですけどwww
/wis to ユッキー:暇ならギルドのデイクエ手伝ってよ
/wis from ユッキー:仕方ないわね、手伝ってあげるわ
PM9:00……。
/ギルド えーちゃん:マスターどこにいるの?家に居ないんだけど?
/ギルド show:ごめんなさい、デイクエ消化してました
/ギルド show:すぐ戻ります
「呼び出しておいて時間忘れるとか最低だな」
一緒に時間を忘れて狩りをしていたくせに……。コイツにそんな事を言う資格はないだろう。
口に出して文句を言うと、後で痛い目を見るので黙っておくが、なんて自分勝手な奴なんだろうか。
/ギルド オットー:ギルクエのやつですか?
/ギルド show:はい、そうです
/ギルド オットー:残り何匹?
/ギルド show:50くらいです
2時間時間はあったのだが、ギルド全員でやるようなクエストなので、元々討伐数が多かった上に真面目に狩ってはいなかったので終わらなかったのだ。
/ギルド オットー:後でやっておきます
/ギルド show:ありがとうございます
そして、自宅へ向かう……。
「お待たせしてすみませんでした」
「クエストお疲れさまです」
「オットーさんも来てたんですね。こういう事には無関心だと思ってました」
「えーちゃんに参加を強制させられました」
「別に嫌なら来なくてもよかったのよ。ただ、来ないなら月曜日は一緒に遊ばないって言っただけじゃない」
「来ないなら横に居ても話かけないでねって脅したくせに……」
えーちゃんさんとオットーさんはリアル夫婦だ。夫婦揃って仲良くゲームをしているらしい。
ただ、見ている限りではオットーさんの愛が強すぎるのだ。……と言うより、オットーさんのえーちゃんさんに対する構ってオーラが激しすぎるのだ。
その結果、オットーさんはいつもえーちゃんさんと一緒に居たがるのだが、えーちゃんさんは特にオットーさんでなければいけないと言う拘りは無いらしく、2人の間に物凄い温度差が生じている。
「あの動画は許せない!アナタがあの動画を見ても救出に行かなくていいって言ったのが悪いのよ!」
語気を強め、オットーさんに迫るえーちゃんさん。
「だって、もうすぐレベルが上がるから、あんなに強いモンスターだらけでPK厨の巣窟に行くとか、ほぼ確実に死ぬじゃん。デスペナがキツイねんって」
えーちゃんさんの圧にタジタジなオットーさんだが、行きたい区内理由は分かった。
「えーっと……。夫婦喧嘩はその程度にしてもらって、参加者はここに居る俺とユッキー、えーちゃんさんにオットーさん、コタロウさんの5人と今日は来てないですが、月曜日は参加するとメールをいただいたネロさんの6人ですね」
「ネロちゃんも来るの?なら心強いわね」
ネロさんはうちのギルドの中ではトップクラスの実力者だ。ゲーム全体で見ても結構上の方の実力者で強い知り合いも結構多い。
「そうですね。では、とりあえず簡単な概要だけを説明しますね。今回の作戦を実行しようと言い出したのは、ユッキーです。と言う事で、ユッキー、説明お願いします」
概要も何も、全ての始まりはユッキーなので、こういった説明責任は本人にしてもらおうと思う。
「皆様、今回はお集まりいただきありがとうございます。showの書き込みに貼っていたリンクは私が見つけて、showに頼んで募集をかけてもらいました。ワタシのレベルでは例の場所まで行くことが出来ないので、ご協力お願いします」
ユッキーが慣れない言葉遣いで集まった全員に向けてお願いをした。
まあ概要と言っても、あの動画が全てなので、これ以上言う事もないのだろう。
「showさんが人助けなんて言い出したから、何かの罰ゲームでも実行してるのかと思ってたら、ユッキーの依頼か」
オットーさんが笑いながらサラッと失礼なことを言いだした。
「オットーさん、笑いながら言わないでください。ユッキーだって助ける理由が”可愛いショタだがら”ですよ……」
「あー…。でも、それ分かる。あの子可愛いわよねー」
何故かユッキーの救出理由に賛同するえーちゃんさん。
「えっ?えーちゃん、もしかして……。ああ言うのがタイプなの?」
動揺を隠せないオットーさん。
「んー…、彼氏にしたいタイプではないけど、弟にしたいって言うか、守ってあげたいって感じにさせる雰囲気はあるわね。まあオットーちゃんは知らないかもしれないけど、私旦那いるし」
「へ、へー、えーちゃん結婚してたんだー。でその旦那とどっちがいいの?」
その旦那ってオットーさんあなたの事ですよ!!
「旦那に決まってるでしょ。恥ずかしいこと言わせないでよ」
「僕もえーちゃんの事、大好き」
ホッと一息ついて安堵したのち、余裕を持った感じでオットーさんが返答していた。
「「「・・・」」」
それを聞いて押し黙ってしまう3人。
「はいはい、ごちそうさまでした。さてと、コタロウさんは何故参加しようと思ったんですか?暇だったから付き合ってくれる感じですかね?」
いつまでも黙っていたのでは話が進まないので、コタロウさんに話を振ることによって、話の流れを当初の目的の方へと戻す。
「それ、私も気になってた。コタちゃんいつもはあまり喋らないほうだし、こういう事には興味ないのかと思ってた」
「ワイはえーちゃんの言う通り人助けとかには関心ないんやけど、ワイこのゲームめっちゃ好きやねん!でな、そのゲームでいくら合法とは言え、あんな行為が行われとるのが許せへんのや!」
コタロウさんが、怒りを露にしながら、参加理由を語った。
「確かにあのやり方はあんまりよねー」
コタロウさんの意見に賛同するえーちゃんさん。
「ネロさんは何か言ってましたか?」
「いえ、ネロさんは参加すると言う事しか書いてなかったです」
「でさでさ、このメンバーで救出は行けそうなの?」
ユッキーにとっては行けるかいけないかと言う事が一番重要らしく、結論を求めている。
「ネロさんが居れば何とかなりそうだね。全体的にレベルは高くは無いけど、壁、近距離3人、遠距離1人、ヒーラー1人だから大丈夫だと思うよ」
あまり、答えを焦らす必要もないので、とりあえず行けそうと言う事だけは伝えておいた。
遠距離アタッカーが少ないが、バランスの良いPT構成になっている。
「PTはどうするの?PTは最大5人1グループだから1人溢れるよ?」
「言われてみればそうだな。2つに分けるしかない?」
「拡張PTは?」
拡張PTとは、PTを最大4つまで統合して最大20人のPTを組むことの出来るシステムの事だ。
「拡張は一部ID前とイベント会場でしか使えない仕様だから無理だな」
オットーさんの言う通り、拡張PTは拡張専用IDの前と大規模戦などのイベント会場でしか使うことが出来ない。
「ですね。となると2PTで行くしかないですね。PT訳はどうしましょう」
「回復のしやすさを考えると、showさんとネロさんは同じPTかな。僕とえーちゃんは勿論同じPTで」
オットーさんはどうしてもえーちゃんさんと離れたくないみたいだ。
「分かっているとは思いますが、フェルン@さんをPTに入れて戻ることになるので、行きは6人、帰りは7人ですね」
「はいはいはーい!ワタシフェルン@ちゃんと戻りたいから一緒に戻る方のPTを希望します」
急に大きな声を出されたので、不快感しかない。
「じゃあ、PT1は俺、えーちゃんさん、オットーさん、コタロウさん、ネロさんの5人で、PT2はユッキーと言う事で、異議ある方はいますか?」
急に大きな声を出されてビックリした腹いせに嫌がらせのPT分けを提案してみた。
「「「異議なし」」」
どうやら1人を除いて異議は無いようだ……。
「ちょっと待って!帰りに二人っきりになるのは嬉しいけど!ちょっと待ってよ!もうちょっと考えよう!帰りに2人は良いけど、行きはもっと考えようよ!お願いします。もっとよく考えてください!!」
ユッキーも他の誰からも反対意見が出なかったことに少し焦ったようだ。
「大丈夫よ、ちゃんと回復薬と復活石は沢山用意しておいてね」
サラッと酷いことを言うえーちゃんさん。
「回復もしてくれないの!?一緒に行く意味は!?」
「頑張ったその先に、フェルン@さんとの二人っきりの時間が待ってるぜ」
少し話し方におふざけが入り始めたオットーさん。
「PTにいれてテレポートで帰還するまでの数分やけどね」
聞こえるか聞こえないか微妙なくらいの小声で痛い所を突くコタロウさん。
「ちょっと!ツッコミが間に合わないから!お願い。許してください!」
「仕方ないなー。じゃあ、俺、コタロウさん、ネロさんのPT1とえーちゃんさん、オットーさんのPT2どっちがいい?」
「どっちも微妙……。野郎どもの暑苦しそうなPTに美女が1人飛び込むか、イチャイチャ完全アウェーPTか……。えーちゃんとオットーさんがイチャイチャしないで尚且つワタシを無視しないなら、えーちゃんたちのPTがいいかな……」
贅沢を言うことの出来る立場でもないくせにかなり偉そうだ……。それに、誰が美女だ?
「僕たちは常にラブラブだから、それは無理な要求だな」
「たぶん動いてるから、私とオットーが特別変な動きをすることは無いと思うわよ。無視されても近くに他の人もいるからボイチャで話せば良いだけじゃない?」
オットーさんの意見を完全に無視しつつ、ユッキーにフォローを入れるえーちゃんさん。
「そうね。じゃあ、ワタシはえーちゃんたちの方で」
「じゃあ、PT1は、俺、コタロウさん、ネロさんの3人、PT2はえーちゃんさん、オットーさん、ユッキーの3人と言う事で大丈夫ですか?」
「OK」
「大丈夫」
「問題なし」
「はい」
今度はおふざけ無しでしっかりと全員賛成したようだ。
「じゃあ、全員大丈夫と言う事で、フェルン@さんはユッキー達のPTで回収してください。残りの細かいことは、明日ネロさんも合流して、全員が集まってから決めましょう」
「皆、今日は本当にありがとう。ワタシ、フェルン@ちゃんを責任をもってPTに入れて帰還するから」
ユッキーは集まってくれた人達にお礼を言い、明日への意気込みを語った。
「ユッキー明日は頑張ろうね」
「では、他に何か話し合っておくべきことはありますか?無ければ解散にしますが、何か疑問などある方いればどうぞ」
「さっさと解散してえーちゃんと遊びたい」
最後までブレないオットーさん。
「早くフェルン@ちゃんを助けて仲良くなりたい」
コイツもブレないな……。
「明日は何時から救出に行くん?」
そして、冷静なコタロウさん。
「あー……。一番重要なことを決めてなかったですね」
「ネロちゃんは何時にINするか言ってた?」
「ネロさんは特に何も言ってはいませんでしたが、INするときは7時前後だと思うので、そのくらいの時間を目安にしていただければ良いと思います。フェルン@さんも7時から10時の間はほぼ毎日活動しているみたいなので、ネロさんがINしていることを確認してから全員の準備が整い次第出発して、だいたい8時前後にフェルン@さんと接触できればいいかなと言った感じでしょうか」
因みにフェルン@さんの活動時間は掲示板の書き込みから、おおよその活動時間を算出したものだ。
「ワタシはそれで大丈夫」
「私も問題ないわ」
「えーちゃんが大丈夫なら僕も」
「ワイも大丈夫やけど、月曜に会われへんかったらどないするの?」
「私が残る」
コタロウさんの疑問に対して、何の迷いもなく即答するユッキー。
「1人で大丈夫?」
少し心配そうなえーちゃんさん。
「大丈夫。言い出したのはワタシだし、そこは責任を持ってワタシが残るわ」
動機は不純かもしれないが、こう言った心意気は関心するところがある。
「ユッキーだけだと少し心配だから、その時は俺も残るよ。2人ならトランプとかオセロとか将棋とか色々と暇つぶしの幅も広がるだろ」
1日2日くらいなら、何もせずにそう言ったことで時間を潰すのも悪くはないだろう。
「ありがとう、show」
「じゃあ、この件は解決って事で。……他に何かありますか?」
「無いな」
「無いかな」
「たぶん無いわね」
「ナス」
何故か最後の最後でふざけるユッキー。
「はい、では無いようなので今日は解散とします。集合してくれてありがとうございました」
「「「「お疲れさまでした」」」」
そして、明日フェルン@さん救出作戦が始まる……。
-To Be Continued-