神との邂逅、報われない僕らの世界
導入は軽めに……
ここは――どこだろう?
僕はいつも通り学校で、無知で愚かな学友たちを憐れみ、無力な自分に嘆いていたはずだ。
現実逃避が得意な僕だけども、ついに幻覚まで見始めるようになったのかな?
『あなたは、なぜそれが分かっていながら、そうも世界に対し憎むのですか』
「は……?」
頭に入り込んでくるのは、美しくも恐ろしい二面性を持った声とも言えない、意志のようなものだった。
突然目の前に現れた、『存在』を僕は理解しようとして……やめた。
ソレは理解できない。理解どころではない、知覚することで限界だ。
体が、僕の好奇心には理性に、本能に訴えかけてくる。
『ええ、その認識で間違いありません。その程度の魂で、私を捉えようなど不敬に当たります』
「ぁ…………っ」
この存在は違う。
僕が知る、どんなものとも違う。
この圧倒的、存在感――まさに神というべき御方だ。
『ようやく、そこに至りましたか。愚かな人の子よ。“発言を許可します”』
「……っ! なぜ、あなたのような御方が僕などをここに呼び出したのですか?」
ここは―――僕にとって、幼い頃から記憶に刻み込まれた憧れ、理想とする場所だ。
自我がまだ存在せず、自分が何者か理解していなかったあの頃とは違う。
いかにここが場違いかを分かる。
『ええ、あなたはここに本来は2度も訪れることはありませんでした』
「ならばなぜ?」
『あなたは……世界が嫌いですか?』
「――!」
その、質問は……
『偽りなど、神たる私の前で話せると思わないよう』
「…………………きらい、ですよ。こんな、どうしようもない世界なんて」
『でしょうね、あの世界は昔に比べ豊かになりましたが、緩やかに停滞しつつある。だからこそ見放されたのでしょう』
「え……?」
あっさりと肯定されたこともそうだが……みはな、された?
「ええ、それはもう。悩むことなく、この世界はもうだめだと」
そう、なのか……やっぱり、神様からみても僕たちは愚かでしたか。
「はい、私も見ましたが酷いものです。争いは絶えず繰り返され、何より人が生きようとする意思を感じない。技術は発展しようと、不自由で星を渡る術を得ようと奪うことしか知らない」
「そのとおりです。人は醜く、おぞましい」
「ですので……」
「……?」
「あなたを私の世界に招待しましょう」
その言葉を理解するのに、そう時間を要することはなかった。
……もしや、僕にやり直せと。
「いいえ、違います。私はあなたに疑問を抱きました」
「なんでしょう」
「なぜ……そこまで諦めがたく抗うのですか。すでに退廃し、衰退するのは星の意思です。そこに抗って得るものなど……ありませんのに」
なんだ、そんなことですか。
簡単なことです。
「――人間は、まだ終わっていないと、自らを持って証明するため」
「…………」
「人は、愚かでした。それは否定できぬ事実です。けれどそれで全てではない。今の人類は……すでに終わっています。けれど、だからこそ終わってしまうから次の可能性を残したかった」
別に大層なことではないです。
これを見た、誰かの戒めになれば。
有言実行、自らが示しにならなければ意味はない。
「ただ、それだけのことです」
「そう、ですか……ならばあなたの祈りは届きましたよ」
「え?」
「今、私の世界は汚されかかっています」
「……っ!?」
どうして……それを、僕に……
「救いたいと、思いませんか。他ならぬあなたの手で」
そうして、神様は手を差し伸べる。
僕の救いと願いを叶えるために。
「喜んで、その神命頂戴いたします」
僕はその手を取った。
地球では叶わなかった、キレイな世界のために。
主人公はタイトルの通り、狂信者です。
ただ信仰するべき神がいなかっただけで、日本では普通に暮らしていましたよ。
ただ、ちょっと頭おかしいですけど。