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鈴 女

山水(やまみず) 鈴女(すずめ)


侑汰の2コ上のお姉さんで現在侑汰と同じ高校の3年生。その特徴は類稀なき美貌。


実は侑汰の高校でも伝説級の美貌といわれている。鈴女は当然高校でも超有名人であり、侑汰はそんな姉さんとの関係が学校でばれると面倒なので秘密にしておきたかった。なので高校では姉さんに一切会わないようにしている。鈴女もそんな侑汰の意見を尊重して学校では会わないように努めていた。

(本当はめっちゃ会いたい… 侑ちゃんのばかぁ~)


さて、山水家だが父は公務員で転勤族、母は小物雑貨の輸入販売を行っている。このため母は仕入れなどで世界中を飛び回り1年の半分も家にはいない。ゆえに家のことはほぼ鈴女に任されている。


侑汰にとって鈴女は母親代わりでもある。鈴女は成績優秀で料理も得意、明るく優しい性格でおまけに凄い美貌、まさに完璧な女性だ。


家に両親が不在のことが多いため、侑汰は食事や洗濯などの身の回りの世話を全て鈴女に頼っていた。それ以外にも勉強や様々な知識を鈴女から学んだ。そのうちの一つが女性の心理だ。侑汰にとって鈴女は母であり、最高の姉であり、自分を導いてくれる先生でもある。このため侑汰は鈴女の言うことに逆らうという感情を持つことがない。


逆に鈴女にとって侑汰は自分の愛情を最大に注いで手塩にかけて育てた自分の子のように思っている。もはや侑汰を自身の一部と考えるぐらいだ。親の不在が多く、二人で力を合わせて暮らしてきたため、この姉弟の絆は限りなく強い。



鈴女がここまで侑汰に拘るのは理由があともう一つある。そのことを境に鈴女は侑汰のそばを離れなくなった。


侑汰が小学校5年生の時である。一緒に買い物に行っている途中、侑汰はふざけて鈴女から離れ一人先に道を走っていった。交差点を渡る途中で急に振り向き鈴女に手を振っていた時、鈴女が見ている目の前で交差点を曲がってきた車に撥ねられた。


鈴女は急いで侑汰に駆け寄り抱き起したが侑汰は意識を失っている… 鈴女は侑汰を抱きしめ泣き叫んだ。幸い侑汰は軽傷で済んだがそれ以来、鈴女は侑汰を離さなくなった。今でも道を歩くときは必ず侑汰の手を握る。


鈴女はその美貌ゆえ当然男たちが放っておくはずもない。数えきれないくらいの男たちが鈴女に言い寄ったが、鈴女は誰とも付き合わない。鈴女は侑汰を育てることを自分の義務と考えているために付き合う気が全くなかった。


そんな鈴女を見て侑汰も今まで彼女を持ったことがない。鈴女に言われた訳でもないが、侑汰も自然に彼女を作ろうとはしなかった。


鈴女と侑汰は互いに最高の姉弟だと思っている。


だが、この二人を外から見て一般的に表現するならば最高のブラコン、シスコン姉弟となる。



鈴女は最高の女性であり侑汰にとっても最高の姉であるが… 完璧な人間などいるはずがない。鈴女にも少し問題があり自分自身でもそれは自覚している。この問題は当然、今後の侑汰に影響を与えていくことになる。



「それで侑ちゃん、学校で何があったの?」


家に帰って来て直ぐに鈴姉は俺に聞いてきた。当たり前だけど…


「実はさ、以前から……」


俺は朱莉と沙奈江との今までのいきさつを大まかに話した。二人は仲が悪かったこと、俺が喧嘩をさせないようにしたこと、今はなぜか俺のことを二人が気に入っていることなど… ただし、あの二人からの被害は黙っておいた。


「侑ちゃんはその二人の女の子のこと、どちらも好きじゃないの?」


「あの二人と付き合うことは考えられない…」


「他に好きな人はいないの?」


「いないっていうか、他の女の子を見る暇もないよ」


「侑ちゃんさ、彼女が欲しい?」


「どうかな… 今はあの二人への対応で一杯だから…」


「その二人を考えないで侑ちゃん自身はどうなの?」


「ん~、よくわからないかな…」


「そっか… 取り敢えず明日は侑ちゃんを迎えに行くね」


「ごめんね、鈴姉。前は来ないでって言ってたのに…」


「そんなこと言わなくていいの」


そう言って鈴姉はいつものように俺を抱きしめた。鈴姉に抱き締められると本当に落ち着く…


―――――――――


侑汰と鈴女が去った後の教室


教室に残っていた生徒が男女を問わずみんなざわつき、騒然となっていた。みんな口々に「あの美人は誰?」といっている。


朱莉と沙奈江は意識が戻ってから亮佑に「あれは侑汰の姉さんだ」と教えられたが、彼女たちは完全にパニックに陥っていた。


「あ、朱莉… あの人侑汰のお姉さんなんだよね?」


「そ、そうだよね… 姉さんだ、うん」


「侑汰の彼女じゃないよね……」


二人は泣きそうになっていた。あんな女の人が相手じゃとうてい勝ち目がない。二人とも一瞬心臓が止まりそうになった。


朱莉も沙奈江も顔には相当自信を持っていたが、一瞬で吹き飛んだ。


「亮佑君、あの人本当に侑汰君の姉さんなんだよね…」


「そうだよ。俺は侑汰と中学から仲良くやっててあいつの家にも何度も行ってるからね。よく鈴女さんにはご飯をご馳走になったよ。」


「鈴女さんってどんなお姉さんなの?」


沙奈江は不安そうな表情で亮佑に聞いた。


「頭脳明晰、才色兼備、料理もできて優しくてしっかりしているパーフェクト姉さん」


「……」


二人とも何も言えなくなった。


「でも、なんで帰るときに手をつないでたの? いくら姉弟でも学校で手はつながないよね…」


朱莉が言うと、


「あそこの姉弟はちょっと特別でね…」


それっきり亮佑は何も言わなくなった。


ちなみに今、朱莉と沙奈江は抱き合っている。理由は本人たちにもよくわかってない…



「朱莉… 会議だ…ね」


「そう…だね」


朱莉と沙奈江は取り敢えず何がどうなったのかを確認するために話し合いをすることにした。

がっくり肩を落として教室を出ていく二人の後ろ姿は… まるで落武者のようであった。



ここはとあるファーストフード店


「どう思う、沙奈江?」


「姉弟なのは分かったけど… あの雰囲気がね…」


「そうだよね、手をつないであの雰囲気って… もはや恋人だよね」


「朱莉、もしかして侑汰って… シスコン?」


「それが最悪のパターンだよ。シスコンだったらあの姉さんがライバルだよ? どーすんの?」


「でもどうせ姉弟で付き合えるわけないし… 朱莉はどうする?」


「侑汰君がシスコンだろうがどうだろうが諦めはしないけど… もうちょっと様子みないと何が何だか分かんないよ」


「そうだよね。私も諦めはしないよ。もっと侑汰に癒されたいし…」


「沙奈江もそう思う? 私も侑汰君にもっと優しくされたい。あれ気持ちいい…」



侑汰の優しさによる中毒患者2名は諦めないことを決意した。



たくさんのブクマを頂きありがとうございます。 感想もいただき喜んでおります。

評価をしていただいた方々にも感激しております。


この話でこれからの展開の中心となる人物が揃ったことにります。これからが本当の話の

始まりとなりますのでこれからもお付き合いをお願いします。


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