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2人の美少女には要注意

「ねえねえ山水君、やっぱ男子って胸の大きな子が好きなの?」


四方はこの質問をわざと八条に聞こえるような声で俺の方を見て言う。四方の胸は自慢できるぐらい確かにでかい。胸の大きさが残念な八条はそれを聞いてプルプルと震えている。


「山水君も貧乳の残念な人より大きい人の方が好きだよね…」


これを聞いた八条は俺の方を阿修羅のよう表情で睨んでくる。 俺は何も言っていない…


今度は八条が俺の方を向きながら実は四方に向いて言ってくる。


「山水君は高校生にもなっていちいち可愛い子ぶって喋るウザい女の子ってどう思う?」


お互いに相手の痛いところを突くポイントは正確だ。1㎜の誤差もなく相手にダメージを与えるところを突く。しかも俺の名前を隣に添えて… 言われた相手は表面には見せないが… いや、見えてるが怒涛の怒りがこみ上がる。


大体そんな質問に俺は何て言って答えればいい? 下手に「はい、そうですね」なんて言ったら地雷が爆発する。


相手に嫌味を言われると四方の場合、動きが止まり瞳孔の開いた目をして無表情となり、ゆっくり俺の方へ顔を向けてくる。

八条の場合は持ってる物を握りつぶしそうになる勢いでこぶしを握りワナワナと震えて、ゆっくり俺の方へ顔を向けてくる。


何故か二人とも最終的には俺を睨んでくる。ここだけ二人とも息があっている。もう一度言うが、俺は何も言ってない…


大体人の嫌味を言うのにいちいち俺の名前を出すんじゃない。まるで俺が関係しているように聞こえる。

こんな感じで、二人は俺を巻き込んで互いを罵るようになってきた。もはや、二人の争いから逃げることも出来なくなり、毎日二人から頻繁に物凄い表情で睨まれるようになった。俺の精神は崩壊するまでカウントダウンの状態。


俺は怜治の言葉を思い出し、本気で怜治に相談しに行った。


「怜治、助けてくれ… 俺もう限界。あの二人は何なの?」


「侑汰、今から言うことは内緒な。俺さ、入学してすぐにあいつら二人に近寄ってこられてね… 初めは可愛いから嬉しいなって思ってたんだけど… だんだん二人でお互いの貶し合いが始まって… それを聞いてたら徐々にあいつらが怖くなってきてね。そんな時に他の子から告白されたんで、速攻でその子と付き合うことを決めたんだ。俺から見てもあいつらはヤバすぎる…」


あの二人はどうやら怜治を取り合って潰し合った結果、トンビに油揚げをさらわれたような形となったようだ。俺は「ざまぁ~」と思って少し楽しくなったが、今はそれどころじゃない。


「怜治、俺さ あいつらの間に挟まれてとばっちり食いまくってるんだけど、もう限界… どうしたらいいと思う?」


“溺れる者は藁をも掴む”こんな気持ちで俺は怜治に相談した。


「いっかい完全に無視してみれば? 何を喋って来ても相手にならなかったら二人で直接喧嘩するんじゃない?」


その意見を聞いた俺はなるほどと感心して実行することにした。



次の日、俺は二人を完全に無視してやった。

結果↓

机を蹴られた。

椅子を蹴られた。

コンパスで刺された。

ノートに落書きされた。

紙くずを投げられた。

教科書を投げられた。

机の中にごみを入れられた。

四六時中、両方から物凄い表情で睨まれた。


俺の心は折れた。


俺はイジメを食らって病んでいる連中の気持ちが分かるようになった。そこだけ成長した。


その次の日、俺は椅子の上に正座して頭を机にこすり付けて二人に謝った。

「今回だけは特別に許してやろう」と、二人から有難いお言葉を頂いた。こんな時だけ彼女たちは息が合う…。怜治のアドバイスは二人の憎しみを俺1点に集中させる結果となった。 怜治、有難いアドバイスを有難う。…


それからも二人の不毛な罵り合いは続いていった。ただ、罵り合いでは四方にやや分があるみたいだ。

四方は本当に悪口を考えるのが上手い。あるとき八条のことを「物干し竿」と表現して嫌味を言った。

俺はよく意味が分からないので直ぐにググってみた。

(痩せていて背が高く、体に凹凸がない人を表す。一般的に貧乳で背の高い女性を馬鹿にするときに使う)


俺はあまりの表現の上手さに思わず「プッ…」と吹いてしまった。そんな俺を見て八条は「そんなに死にたいの?」といった殺意を持った目で俺を睨んでいた。俺はスマホを持っている手が震えた。それ以来、俺はググることを止めた。


この頃になると俺は、四方と八条の二人の会話(罵り合い)に強制参加させられるようになっていた。ある意味会話の回数も一気に増えることとなった。おかげで恐怖を感じる回数も増えた。


そして妙に四方や八条から個別に話しかけられるようにもなってきた。多分理由は俺がどちら側に付くかを二人で競っているからだろう。この状態になって俺の苦痛はさらに増大する。俺が片方と喋るともう片方から必ず妨害が入る。しかも見えないように俺だけにしてくる。


「…でね、そしたら……」四方と話しているとき、急に俺の右脇腹に何かがめり込んだ。あまりの痛さで息もできない。ゆっくり右を向くと八条の肘が俺の脇腹に刺さっている。八条は知らない顔をして前を向いている。


「山水君さ~ この前ね…」八条と話しているとき、左手の甲に激痛が走った。「いってぇぇ~」 と叫んで左を見ると… 俺の左手にコンパスが刺さってた。「ごめんね、手が滑っちゃった… キャハ」 そう言って四方は明るく笑っていた。滑らなかったらどこに刺さってたの?


あいつらの意地悪さは底なしのようだ。とにかく、どちらかと喋ると必ず俺は痛い目を見る。しかもそのグレードはどんどん上がっていく。だからと言って無視を決め込めばあいつらの仕打ちは倍になる。


俺は日々、女の怖さを体で教えられている。これ以上あいつらと一緒に居ると女に対してのトラウマを刻まれる。あいつらは確かに顔はいいが、中身は最悪だ。気に食わないことがあればすぐに実力行使… まるで猛獣だ。


そろそろ本気で対策しないと俺の体がヤバくなってきた。四方には手の甲に穴をあけられ、八条には脇腹に痣をつけられ…


俺はこの席に来た時、両サイドに天使がいると喜んだ。でも、よく見ると実は悪魔だったことが分かった。ここはデビルとサタンに挟まれた魔の席だ。


何とかしないと俺に明日はないことだけは理解できた…


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