7
「クリス、あの氷の王子と一緒に魔法の練習してたの?」
ベルの言葉に首を傾げる。
氷の王子って誰? そんな人知らないけど。
「誰? その人」
「知らないの? カイル・オルコット様のことよ」
まさかのカイルの事でした。
いやでも、氷の王子って。あ、氷の魔法を使ってたからかな?
ベルにそう聞くと呆れたようにため息をつかれた。
なんで?
「カイル・オルコット様。オルコット侯爵家次男。成績優秀、眉目秀麗。しかも、魔法の腕前も16歳にして一流。属性は水。得意な魔法は氷を使った攻撃魔法。他にも……」
「ちょっと待って」
相変わらずの情報量。
まだまだ、言い足りなそうだったけど止めた。一度話しだすと止まらなくなるからね、ベルは。
「氷の魔法を使うから氷の王子って言うのよね?」
「違うわよ」
また、ベルにため息をつかれた。
「氷の魔法を使うからっていうのもあるんだけど……。その名前にはオルコット様の性格も含まれてるの。まるで氷のようで誰も寄せ付けない」
聞いたことあるでしょう? とベルは続けた。
「近づいた令嬢を氷漬けにしたって。あの噂本当みたいよ。氷漬けっていうのは言い過ぎかもしれないけどね」
でも、あのカイルと噂のカイルは真逆。
噂は聞いたことあるし、この前も氷の矢で的を貫通させてたけど。
噂のカイルと全く結びつかないんだよね。
「カイルはそんな人じゃないと思うの。この前だって、魔法について教えてくれたもの」
カイルは優しい。だから、絶対に違う。
じゃなかったら、私を助けてはくれないだろうし魔法も教えてくれない。
氷みたいって言ってたけどそんな感じ全然しなかった。
「噂なんて当てにならない。私は私の見たままを信じる」
「クリスがそう言うなら……」
ベルは困ったように頷くと私に念を押すように言った。
「もし、本当に困ったことがあったらすぐに言って。必ず、力になるから」
「うん、分かった。ベルは心配症ね」
ふふ、と笑うと珍しくベルは赤い顔をしてそっぽを向いていた。
それにしても、カイルってこんなに信用ないんだね。意外。
侯爵令息様だし、人気も結構あると思ってたんだけど。
「だから、性格の問題」
考えているとベルに答えた。
「なんで、考えてること分かったの?!」
「クリスは顔に出やすいのよねぇー」
コロコロと笑うベルにやっぱり私はかなわないと苦笑いした。