5
「魔法って何だと思う?」
修練室にところでいきなりカイルがそう聞いた。
そういえば、考えたことなかった。この世界に生まれてから当たり前のように存在していて、それが普通だから。
「カイルは?」
「僕は人々の願いの事だと思う」
「人々の願い……?」
「そう。魔法って『こうありたい』『そうなってほしい』ということを世界に対して願うことだと思うんだ。呪文も世界に呼びかけるために使うだろう。それに無詠唱のときも想像する。だから、魔法は人々の願いの事だと考えているんだ」
僕の勝手な考えなんだけどというカイルに首を振る。
「とても素敵だよ。人々の願い、そんな風に考えたことなかった」
「そういうものだよ。魔法があるのが普通だからね」
「そうなんだけど……。他の人にも教えようか?」
「いや、それはやめてくれ。結構恥ずかしいから」
提案したら本気で嫌がられてしまった。ベルとかにも教えようと思ったのに……。絶対共感してくれると思うんだけどな。
人々の願いが魔法。
うん、すっごく良い。私は好きだなカイルの考え方。
そういうとカイルは恥ずかしそうにでも嬉しそうに笑った。
「クリスタ、そろそろ魔法について教えるよ」
「うん」
そして始まったカイルによる魔法の授業。
「水属性の代表的な魔法は何か知ってる?」
「水を作ることよね」
カイルは正解と言い頷く。
「それじゃあ、応用すると何ができると思う?」
応用? 水に関係すること。だったら、雨を降らせたり川を作ったり、かな。
悩んでいると的の前に立ったカイルが振り返った。
「応用っていうのは、こういうこと」
そういうと右手を掲げ、的に向けると呪文を唱えた。
すると、カイルの手のひらに水が集まり瞬く間に氷が作られる。そして、氷の矢となって的に突き刺さった。
うん、凄いとしか私には言えない……。
というかあの氷の矢、的を貫通してない?
それに、氷を作る魔法って難しいと聞いたことがあるような。カイルってやっぱりすごいんだね……。
氷の矢か。そっか、氷ももともとは水。だから、魔法で作れるんだ。
氷で作れるもの……。あ、そうだ!
「氷の床とか作るのはどうかな。面白そうだとは思うけど」
「氷の床ね、多分作れるよ。ただ、魔力がもつかどうか」
そう言ってカイルは呪文を唱えた。私の知らない呪文。
やっぱりすごいんだね……。
なんて考えてる内に修練室の床は氷で埋まっていた。
「カイル、凄いね」
「凄いってクリスタがやれって言ったんだろう」
はい、そうです。ごめんなさい。
「それでこんなの作って何をしたかったの?」
「いや? 別にできるかなって思っただけで……」
私がそういうとカイルは床に倒れこんだ。
あー、また私何かしたかな?