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お久しぶりです。
後半は宮廷魔道士その一ことエドガー視点です。
空はどんよりとした雲で覆われている。
昨日の晴天とは大違いだ。
ユキを抱いて気合い入れた。
よし、大丈夫。だって、私は聖女だもん。女神様とレイラ様の期待に応えなきゃいけないんだ。
昨夜みた夢に出てきたあの男の子。あの子は多分、魔王。
前に女神様にみせてもらったレイラ様と魔王の戦いの時に出てきた男の子にそっくりだった。
なんでこんな夢を見たのかは分からない。けど、今やることは湖の浄化!
「なんか昨日よりも濁ってる……?」
「ああ。このままだともっとひどくなるかもしれない。クリスタ、はやく終わらせよう」
リア様たちはまた魔獣が出てきた時のために戦闘態勢だ。
ユキは私のサポートをしてくれるみたい。私の横にピッタリとくっついている。
「ふぅー……。よし」
湖の手前で膝をついた。
祈る姿勢、形はどうとでもいいらしい。想いがしっかりと伝わることが大事なのだ。私はお祈りと聞いてこの姿勢が一番最初に思い浮かんだ。
両手を組んで目をとじる。
昨日の感覚を思い出して。湖がキレイに元通りになりますように。村の人たちがもう一度、元気になりますように。
魔力が出ていくのを感じる。思ってたより魔力の消費が激しい。前よりも魔力量は増えてるのに、もう半分近く魔力がなくなった。その分浄化は進んでる。あと、少し。
※※※※
膝をつき、両手を組み祈るその姿。
浄化が始まると同時に神々しい光が辺りを照らした。
聖女レイラに付き従ったという神官の文献通りの光景に感動を覚えた。
いや、感動している場合ではない。
「来ますよ!」
湖から湧き上がるように生まれてくる魔獣たち。
狼の姿をした魔獣や馬のような魔獣。それらは、クリスタ様に向かって進んでいく。私たちの役目はそれを防ぐこと。クリスタ様が無事に浄化を成功できるように、魔獣たちを倒すのだ。
前回はクリスタ様の力でユキ様を聖獣へと戻すことができた。今回、クリスタ様は浄化で手一杯。私たちだけで対応しなければならない。
過去の文献によれば聖魔法を使わずとも魔獣を倒せるのは分かっている。しかし、魔獣を倒す訓練はしていても実践は初めてだ。
できるのか……? いや、やるしかないのだ。
「止まれ」
キンッ――。クリスタ様へと向かっていた魔物たちの足が止まった。その足元は氷。カイル様の魔法だ。
彼の顔にも緊張が浮かんでいる。そうだ、みんな初めてなのだ。もちろん、クリスタ様も。
私よりも年下の彼らが頑張っているのだ。
「燃やしつくせ」
その炎はカイル様の氷を溶かすことなく魔獣だけをつつみこんだ。




