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 魔物は動かない。私たちを観察するようにじっとこちらを見て微動だにしない。

 なら、先手必勝! 


「いけ!」


 今まで一番勢いよく水の柱があがった。魔法(みず)は一直線に魔物に向かっていく。

 しかし、魔物は狼のような姿の通り素早い動作で魔法をよけた。でも、大丈夫。


「こおれ」


 静かな声とともに魔物の周りに飛び散った水が凍った。もちろん、魔物の足も巻き込んで。


「ナイス、カイル」


 さすが、カイル。何も言わなくてもわかってる。

 次は、私の番。あの魔物を浄化しなくいといけない。初めての浄化。実際に練習することはできなかったけど、イメージでなら何回も練習してきた。だから、大丈夫。


「よし……!」


 手を前にだし手の平に魔力が集める。あとは、願う。魔物が浄化されるように、上手くいくように。

 暖かい光が手に集まってくるのを感じる。大丈夫、うまくできてる。


「聖女様! 魔物が動きます!」


 無理です。ソニア様。今、集中切らしたら魔力が溢れて終わりです!


「まかせなさい! あなたにだけいい顔させてあげないわよ」


 その言葉と同時に真っ赤な炎が魔物の周りを覆った。残っていた氷は解けて蒸発していく。しかし、周りの草は燃えないように調整された魔法。

 リア様、すごいです。そして、ありがとうございます。

 魔法が完成した。すごい、本当にすごい。

 暖かくてふわふわしてなんだか安心するような魔法。


「『浄化』」


 ふわりと光が広がっていく。

 魔物から真っ黒い煙がでてきては光にふれると消えていく。


 そして、真っ黒な煙も光もなくなった。

 そこに残っていたのは……。


「ワンッ!」


 真白な毛並みの犬だった。



 ※※※


「どうしましょうか。この犬」

「どうしようかしら、この犬」

「どうしようか、この犬」


 ひそひそと後ろに座って毛づくろいしている犬をみてつぶやく。

 あれから、他に魔物はいないか確認してすぐに村に戻った。子供は意識も戻ってケガもかすり傷程度。

 湖を見に行くのはまた明日になった。

 私としては無事に浄化の魔法が使えたのが安心したんだけどね。


 そして、今の問題は素知らぬ顔で毛づくろいをしているこの犬。

 犬じゃなくて狼なのかな。どっちでもいいけど。

 とにかく! この犬をどうするか。

 ギリギリ抱っこできるくらいの大きさの犬。

 念のために連れてきたはいいものの瘴気は感じられないし、もし森の中で暮らしていたなら戻さなきゃなんだけど、ここから動く様子もない。


 そっとふわふわな背中をなでれば、犬はきょとんとした顔で私を見返した。


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