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ここはどこだろう?
真っ暗でなにも見えない。
『……いけ』
声が聞こえる。幼い男の子の声。
『出ていけ!』
えっ?
『早く僕の中からいなくなれ』
『それは無理よ』
今度は若い女の人の声が聞こえる。あれ、この声聞いたことがある気がする。
そして、見えたのは黒い男の子。目も髪も真黒でそれに対比するように肌の色は白い。
もう一人は白い女の人。違う、かな。よく見れば銀色だ。背中に垂らしてある長い髪も男の子に向いている瞳も。
あの人はレイラ様だ。この声もあの姿も全部知ってる。
そしたら、あの男の子は?
『ごめんなさい。私はあなたを助けることはできない』
あぁ、あの男の子が魔王なんだ。
これは夢?
『助けなんかいらない。お母さんを妹を殺したやつを殺してこの世界を壊してやる』
『そんなこと絶対にやらせない』
そこから始まったのは壮絶なというような魔法のうち合い。
レイラ様が光の魔法をうてば魔王は闇色の魔法をうつ。
そんな戦いが何時間も続いた。暗い暗い場所でずっと。
私は、そんな中を何もできずただ立ち尽くすだけ。魔法は私の体をすり抜けていく。
「なにこれ……」
私の呆然とした呟きは彼らには届かない。
『これは記憶よ』
後ろから声がして慌てて振り向く。
そこにいたのは金色の光をまとった女の人。
『初めまして、クリスタ。私は始まりの女神』
ニッコリと笑うと女の人はそう自己紹介をした。
「本当に女神様?」
『ええ、そうよ。そして、あなたにこの記憶を見せているのも私』
「どうして……?」
女神様は悲しそうにレイラ様と魔王との戦いを見つめている。
『あなたと一度話をしたかったの。勝手に私の力を与えてしまってごめんなさいね』
女神様の力? あ、聖属性のことか。
女神様は頷く。
『レイラには会ったかしら?』
「はい、とても小っちゃかったですけど」
私がそういうと女神様は小さく笑った。
『そうしたら彼女の想いはもう受け継いでいるのね』
その言葉にはっとなる。レイラ様の想い、それは魔王を助けるということ。
『魔王はとても強いわ。その強さの源は全て憎悪や絶望。人が憎い。国が憎い。世界が憎い。全てが憎い。そんな感情が魔王を強くするの。魔王を倒すには聖女の魔法で消滅させるしか方法はないのよ』
でも、女神様はそう続ける。
『レイラは違ったわ。彼を救おうとしたわ。私の考えを全て覆してくれた。だけど、レイラではできなかった。私が彼女に与えた力がまだ弱かったからその方法が無かった。でも、あなたは違うわ』
『あの頃はまだ私の神としての力が弱かった。だから、レイラは魔王を助けるのあなたに託したの。千年たった今はレイラ以上の力をあなたに与えられる』
「でも、私は……。この力を使いこなせない。レイラ様みたいにはできません」
『大丈夫よ』
女神様は私の手をとり安心させるようにうなずいた。




