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遅くなりました!
「あれ?」
ん? 教科書がない。ちゃんと机に入れたはずなんだけど……。
もしかして、忘れたかな。でも、ちゃんと持ってきてたはず。おっかしいなぁ。
「どうしたの?」
「教科書がなくて……」
うーん、やっぱり忘れたのかな。はぁー。
「次はエイル先生の授業よ? 教科書がないと分からないでしょ?」
そうなんだよねぇ。エイル先生の授業難しくて分からないだよねぇ。どうしようか。
「持ってきてたと思うんだけど。先生、言ってくるね」
ただ、忘れただけ、なんて思ってたのがいけなかった。教科書が消えた日から嫌がらせが始まった。
ああ、もうめんどくさい!
結局、あの教科書もボロボロでもう使えないし。
これを指示してるのがアステリア様だっていうのに驚いた。まさか、あのアステリア様がって。意外だな。アステリア様ってなんて言うかコソコソするより正々堂々とやるようなイメージだった。
多分だけど、私が王太子殿下と仲良くしてるなんて思われてるからかな。誤解だ! そこは断言できる。王太子殿下と仲良く? あわよくば婚約者の地位を? 絶対に嫌だ! そんなのいらない!
私は、王太子殿下と仲良くしたいだなんてこれっぽっちも思ってない。いや、仲良くはしておいた方がいいだろうけど。そういう仲になりたいだなんて全く思わない。
「クリスタ・メイラー。アステリア様がお呼びよ。着いてらっしゃい」
なんて考えていたらアステリア様から呼び出しくらいました。
はーい。私が逆らえるわけないですよ。だって、この方アステリア様の取り巻きの方ですもん。
ついて行った先は個室のサロン。
これは、やばいですかね? さっきの会話はベルが聞いてたし遅くなったら誰か連れてきてくれるでしょう。多分。いや、絶対。
「中でアステリア様がお待ちよ」
ノックをすれば凛とした声が返ってくる。
うーっ。初めての会話がこれとかすごい悲しくなる。
「失礼いたします」
「待っていたわよ。クリスタ様」
ニッコリ微笑むアステリア様。
綺麗な方なんだけど、目がね……。なんか、笑ってない気がしてね。
取り巻きの方は入ってこないのね。ってことは、一対一。
……つらい!
「用件は分かっているわよね?」
「はい」
「そう。これから王太子殿下には近づかないでもらえるかしら」
「もちろんです! といいますか、私から王太子殿下に近づいたことはありません」
私の返答にピシリとアステリア様が固まった。
「王太子殿下の婚約者になろうなど思ったこともありませんから!」




