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「クリスタ・メイラー様ですね? 王城より召喚状をお待ちしました」
そう言って騎士さんから渡されたのは綺麗な封筒。まず、こんな上等な紙触ったことない。しかも、王家の紋章いり。渡されるとき手が震えてしまった。
書いてあったのは、聖属性について新しいことが分かったから王城まで来るように、と。
新しいことが知れるなら行ってもいいんだけど。
なんで、王城なんですかねぇ?! わざわざ、呼ばなくてもいいよねぇ?!
なんて、表には出しませんけども、そんな私の雰囲気を感じたのか騎士さんは少しプルプルと震えていた。
「騎士様。ありがとうございます。これは、いつ登城すればいいかご存じですか?」
「今すぐに、とのことです」
……今すぐ?
ちょっと待って。今すぐって言ったこの人。
一応私も伯爵家の令嬢ですから準備やら何やらしなくてはいけないんですけど。王城に行くのに相応しい格好という者があるんです。さすがに制服で行くのはダメだと思うんですよ。
「今すぐというのは厳しいかと……」
「いえ、準備はこちらで済んでおります」
あ、はい。
これに『はい』という返事以外の選択はあるんでしょうか……。
……ないですよね。
あぁもう!
諦めて行くしかない……。
「メイラー様。行きましょうか」
「わかりました」
さいわい、授業は全部終わっているから大丈夫。それに、放課後だったから生徒の数も少ない。噂がたつなんてことはないと思いたい。
私の平凡な学園生活が……。もう無理なのは分かってるんだけど……。
思わずため息が出そうになるのを我慢する。
嫌ではないんでけどね。これまで平凡な貴族令嬢だったからお城に呼ばれるなんてことはなかった。だから、すごく緊張はしている。
それに、聖属性の魔法も使ったことがない。その事についても何か言われるのかな。一ヶ月経っても使えないのはさすがにおかしいと思う。でも、使い方がわかんないもんなぁ。
正直言うと私がなんでこの属性を持ってるのかわかんない。本当に平凡な貴族令嬢なのに。他の人と違うのは前世の記憶を持っていることぐらい。それも、最近分かったこと。あとは、魔力量も普通、勉強は他の人よりいい自信はあるけどそれは関係ないだろうし。
やっぱり良く分かんない。前も考えたけど私が特別、とかそういう訳でもないし。
「メイラー様? どうかしました?」
「あ、いえ。なんでもありません」
頭を抱えてたら騎士さんに心配そうな目を向けられた。
そういえば私彼の名前聞いてなかった。
「あの、騎士様のお名前は?」
「これは失礼を。私はダリル・マクレウスと申します」
マクレウス様、ね。
あれ、マクレウス様って第二騎士団の副団長を務めている方では……?
マクレウス様はそんな私の考えが分かったのかニッコリ微笑んだ。




