俺のスキル(2)
「では、準備のできた勇者様から順番に職業とスキルの報告に来てください。」
あぁ終わった。俺の異世界での旅が終わった。
唐突な公開処刑。知っててやってるのか?
みんなの前でどうやって「小説家です!」なんていえばいいんだ?
ほら、いまもだれかが「剣闘士です!」って言ってたよ。
「治くんはまだ行かないの?」
「あのなぁ、みんなが戦闘職に就いているであろう時に、俺だけ『小説家』だなんて。
カッコ悪すぎだろ?」
「私は治くんならなんでもいいけど?」
「そう言うときに見せるおまえの彼女らしさってほんと達悪いよな。もう可愛すぎて行く気が出てくるぞ。」
「じゃあい行こう!」
長い間彼女してるだけあって、簡単に俺を動かせてる。
楓、あの笑顔はズルいぞ。
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「皆さま、集計が終わったので、本日は解散とさせていただきます。
明日は能力を検証したいとおもうので、今晩はよくお休み下さい。」
俺たちは集計が終わったあと、昼食をとっていた。
「治くん!このスープすごく美味しい。あ、こっちのパンも!」
なんかあっちでパクパク、こっちでパクパクしてるのがめっちゃ可愛い。
楓で和んでいると、勇者孝介殿がいらっしゃった。
「治、この後どうするつもりだ?予定がないなら俺たちと一緒にスキルの練習しないか?
たくさん練習したほうが魔人達も倒しやすいとおもうんだ。」
ここに来てもまじめだな。生憎と俺はどんなに練習しても魔人を倒せそうにないんでな。
「わりぃ、おれは行かないわ。」
図書館にでもこもるか。
「ほらね?孝介くん、もうコイツを誘うのはやめようよ。」
「そうだぜ孝介。お前が信頼できるって言ったから期待したのに、イチコウかよ。ノリ悪いし。」
おうおう、本人の目の前でよくそんなこと言えたなぁ。美嘉に橘ナントカさんよぉ。
これを言葉にしないあたりが素晴らしい。頰を引きつらせていても、コメカミをピクピクさせてても。
「おい美嘉、謙介、第一高校だからとかそうやって人を悪く言うのは感心しないぞ。
特に美嘉。お前仮にも幼馴染なんだから、もっと仲良くしろよ。」
孝介、よく言ってくれた。最後の一行は俺からも少しやめてほしいが。
「だってコイツ楓ちゃんの恋人のくせにろくに運動も勉強も出来ないんだよ?楓ちゃんの印象を悪くするこいつは楓ちゃんの友達として許せない。」
「まじかよ!噂の今井チャンの恋人ってコイツなの?」
あぁ、頰の筋肉痛は辛そうだし、ここ離れるか。
「治くん、午後どうする?」
「俺は図書館でスキルについて調べるつもりだ。おまえは?」
「私は治くんについていくよ。」
「別にいいが、つまんないぞ?」
「そこは彼女としてついていきたいなぁと思って。」
いい子だ。なんていい子なんだ。やべ、涙腺が。
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「という訳で、コイツが俺の彼女の楓。」
「はじめまして…でもないね。よろしく。」
「こいつが、出会って5分で俺の読書友達(?)になったサイラ。」
「よろしくね、楓。」
はい、楽園にいます。
「自己紹介も済んだところで、サイラに質問したいんだが。」
「いいよ、答えられる範囲なら。」
「俺、ここで寝ていいか?お前はここで寝泊まりしてるんだろ?」
早く沢山読みたい。
「もちろんいいよ。僕としても、夜1人は寂しいからね。」
「ふふ、治くんらしいね。じゃあ私もお願いしていいかな?」
「お前もか?なぜ?」
「彼女として、一緒にいたいの。お城からここまでは結構離れてるんだもん。」
なんか、『彼女として』を最近沢山聞くな。
「いいよ、でも夜は2人とも静かにしてね。」
「そそ、そこまではしないから、絶対、絶対だからね!」
うわ、顔真っ赤。楓っておもしろいよな。
「サイラ、楽しいのは非常に共感するがあまりイジメないでやってくれ。あと楓、絶対を強調すると疑われるぞ。」
「もう、治くん共感してどうするの!」
なんか、こういうのはいいな。楽しい。ずっとこういうのがいいな。
やべ、フラグだった。
「そういえば治、君のスキルはなんだった?」
ほら、フラグ回収。
「笑わないなら教えてやる。」
「笑わないって」
「ほい。」
「ふむふむ、最初の二つは…初めてみるな。これは、『全言語理解』!それに『速読(+EX)』!あと『読書内容絶対記憶』!治、君はスキルに恵まれすぎだ。まるで、本を読むために産まれてきたような人だぞ。」
あれ?思ってたのとちがう?
ひょっとして戦闘のこと考えてない?
さすが本好き。ちょっと嬉しいぞ。
「『全言語理解』は『言語理解(現代)』の上位互換、存在すら知らない秘境の言葉や、古代の言葉すらも理解してしまうもの。『速読』は5秒で見開き1ページを読んでしまうもの、それに(+EX)だから100倍。
5秒に100ページよめるんだぞ。あとこれ、『読書内容絶対記憶』今までよんだ本とこれから読む本の内容を絶対に忘れないというもの。頭の中に図書館を作れるようなものだぞ。」
『言語理解(現代)』というものは、使用する際に言語名を呟かなければならないらしい。
なので、見たことない言語だと読めないのだとか。
本当に読書するためのスキルだな。
補足
+D→1.5倍
+C→3倍
+B→10倍
+A→15倍
+AA→20倍
+S→50倍
+SS→75倍
+EX→100倍 となります。