俺のスキル
2回目。
そこには召喚の間とほとんど同じ壁画があった。違うのは5人全員が光を纏っている所ぐらいか。
やはり少し離れた所にいる男には既視感を抱かずにはいられない。どこで見たんだ?
ふと、列の先頭の姫さんが足を止めた。
「みなさん、もうすぐ神殿の職員が来ます。ここで待機してください。」
そういい残して姫さんは奥に行った。
俺たちは言われた通り待機する。
目の前にあるのは巨大な十字架。さっきの五人の像。
そう、ここは神殿。俺たちのスキルと職業がわかる場所だ。
「治くん、私どんな職業になるかな?」
「治癒術師あたりじゃないか?お前は壊すより治すだろ?」
「うん、やっぱりあまり傷つけたくないかな。もしそうだったら治くんが守ってよ?」
「俺が戦闘職だったらな。」
そんな話をする。俺はこの楓を守ることができるだろうか?楓を失うなんてことにはなりたくない。
そのためにも今日はすごく大切だと思う。俺は少し真面目に考える。すると姫さんがおじさんとともに戻ってきた。
「このかたは神父のライアさん。これから5新神の方々に守護を与えてくださるようお願いする、いわば仲介役のようなものです。」
「ライアさん、よろしくお願いします。」
「これは勇者様。このような老人にありがとうございます。皆様がここの神殿で与えられた力を使いこの世界を救ってくださることを考えればこんなこと世界に貢献するだけです。」
さすが孝介といったところか。どんどん味方を作る。
「では皆様、スキルについてこちらから説明させていただきます。
まずスキルには『解放』と『覚醒』と言う………」
姫さんは俺が今日の朝聞いた話をし始めた。途中にエクストラスキルとユニークスキルの説明があったが単にレア度
で決められるだけだった。
持ち主がこの世に一人二人ほどしかいないのが固有スキル。
持ち主がこの世界に100〜200人ほどしかいないのが極上スキル
サイラが持っていた『スキル譲渡』はエクストラスキルだった。結構すごいじゃん。
「スキルに関する説明はこんなところです。次に職業・スキル鑑定を行いますので、このクリスタルを持っててください。」
そういってサイラが見せてくれたクリスタルと同じものを配る。
「神父さん、お願いします。」
「わかりました。勇者様方、十字架の前の陣に入りクリスタルを両手で握り手を胸の前にしてください。」
言われた通り祈りを捧げるような姿勢になる。
「では、『神託』」
ライアさんが呟く。どうやらスキルのようだ。
サイラのように体が輝いている。やはり先ほどのは見間違えではなさそうだ。
すると、クリスタルが唐突に青く輝き出す。
光はどんどん増していき、やがて消えた。
すると、クリスタルにスキル・職業が表記される。
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治
職業:小説家
ユニークスキル:『読書』
『作文』
『全言語理解(バント王国語理解は融合済み)』
エクストラスキル:『読書内容絶対記憶』
スキル:『睡魔耐性』
『速読(+EX)』
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なにこれ、めっちゃ嬉しいけど……小説家って戦えるっけ?
場合によってはただの足手まとい?
「え、お前勇者なの?!」
声が聞こえた。確か第三の橘だったな。
振り向くと橘と孝介が話しをしていた。
やはり孝介は勇者だったか。
「俺、格闘家だってよ。羨ましいなぁ、代わってくれよ。」
俺、小説家だってよ……羨ましいなぁ、代わってくれよ。
「治くん、治くんはなんだった?」
頼む楓、そのとびっきり美しい無邪気な笑顔で聞かないでくれ。
話をそらすしかないな。彼氏としての威厳のためには。
「そ、そういう楓はなんだったんだ?」
「私?私は治くんの考え通り治癒術師だったよ!」
そういってクリスタルを見せてくれる。
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楓
職業:治癒術師
エクストラスキル:『女神の祝福』
『聖女』
スキル:『癒し(+S)』
『治癒術適性(+AA)』
『バント王国語理解』
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ふむ。ユニークスキルはなし、数は俺の方が勝ってるな。
能力は……まぁいいや。言葉にすると悲しいからな。
「で、治くんはどうだったの?」
振り出しに戻った。
「孝介は勇者だったらしいぞ」
「治くんは?」
「橘はかk「治くんは?」」
「そういえば美嘉はなんなんだr「治くんは?」」
「……。」
「治くんは?」
はぁ、言わなきゃダメか。
「笑うなよ。」
「うん。」
「ほれ、」
クリスタルを放る。
「小説家?」
「悪いか?」
楓は少し考えて言う。
「すっごく、治くんらしい。」
そんな眩しい笑顔で言うな。泣けてくる。
早くバトルがかきたいいいいいいぃぃぃぃぃぃぃ。
※『全言語理解』をユニークスキルに変更しました。すいません。