スキルと解放
俺はいま、サイラの寝床である、管理人室にいる。
お盆にお茶を乗せてきたサイラが口を開く。
「この図書館の管理人になるにはある条件が必要なんだ。」
「条件?」
「そう、ここを管理するためには二つ、必ず持ってなければならない『スキル』がある。」
「スキルか、この世界では誰もが持っているものなのか?」
「あぁ、一応みんなが持っているとされている。」
「されている」とはどういうことだろうか。持っているけど使えないとか、そんな感じだろうか。
「『されている』といったのはスキルの性質に関係しているんだ。」
「どう言うことだ?」
「スキルは『解放』と言う段階を超えなければならないんだ。」
サイラはスキルについて説明してくれた。
スキルには『解放』と『覚醒』と言う二つの段階が存在するらしい。
魔力を操ることのできる生物は、この世界に誕生か転移したときになんらかのスキルが手に入る。
だが、これを使うにはまずスキルを『解放』しなければならない。
『解放』には二つの方法がある。一つ目は守護神達に守護されること。
神殿で神様の守護を得ると、もともと持っていたスキルの封印のようなものを神様が解いてくれる。
二つ目は、『スキル解放』のスキルを持つ者に解いてもらうこと。このスキルを持つものは非常にレアだが、
次の段階である『覚醒』に近づきやすいという利点がある。そのため、貴族なんかは息子のスキルを覚醒させるために大量の金を払うんだとか。
『覚醒』というのは、スキルの本来の力が引き出された状態である。それだけきくと、進化のようなものだと
思ってしまうが、厳密には『スキル昇華』と言うスキルを使ったものが進化で、進化の場合は『力の追加』
覚醒の場合は『力の大幅アップ』なんだとか。
「自分のスキルを確認できるのは解放された後。スキルの解放では、同時に職業の決定が行われることが多いんだけど、その際にこのクリスタルに職業と一緒にスキルも表示されるんだ」
そう言って懐からクリスタルを出す。
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サイラ
職業:王城図書館管理人
エクストラスキル:『スキル譲渡』
『言語理解(現代)』
スキル:『交渉』
『睡眠時間短縮』
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あ、そう言うことか。
「気づいたみたいだね。これだけで気づかれたのはちょっと悔しいよ。」
「何故俺らが何も知らないバントの言葉を喋れるのか。
お前が『言語理解』を『譲渡』してくれたんだな。」
「まぁ、スキル譲渡は譲渡する際にスキルが劣化してしまうから今は『バント王国語理解』にでもなってるんじゃないかな?」
「お前の言ってた管理人になるための条件ってのは?」
「この図書館には色々な国の本が入ってる。それを読むためには『言語理解』系のスキルが必要でしょ?
それに本を守る立場にある以上、睡眠時間はなるべく短くするんだ。」
「なるほどな。その二つが条件ってことか。」
「これから本を読むんだったら、『睡眠時間短縮』を『譲渡』してあげてもいいよ。」
「いいのか?これで予定の半年よりも一ヶ月ぐらいはやくなるぞ!」
「じゃあスキル使うから手を出して」
そう言われたので手を出す。
サイラはそれを握ると呟く。
「『譲渡 』……『睡眠時間短縮』」
呟いた途端サイラがうっすらと輝き始めた。スキルを使うときは光がでるらしい。
でもこれだと、戦いの時は分かりやすすぎるきがするな。消す方法も聞いてみよう。
「これで譲渡できたはずだよ。」
「ありがとう。質問なんだが、スキルを使うときに体が光らないようにする方法ってあるか?
戦いのとき不意打ちしやすいとおもうんだ。」
「体が光る?」
「お前、光ってなかったか?」
「そう言う話は聞いたことがないね。たしかに光ったのかい?」
「いや、ぼんやりとだけ。」
見間違えかな?
「見間違えの可能性もあるけど、ほかのひとの時も見えるようだったら教えてくれ。勇者ゆえの力かもしれない。」
「わかった。スキルはいつ確認できるんだ?」
「勇者達の教育係達の話だと、たぶん今日だと思うよ。」
ーー ピーンポーン ーー
「誰か来たみたいだ。」
「お、おう」
あれは間違えなくジャパニーズ呼び鈴のおとだ。少し驚いた。
「はい、どちらさまですか?」
『あの、そこに治くんいますか?』
楓か。時計を見ると朝食の時間だった。
「サイラ、すまんが朝食の時間みたいだ。」
「いいよ。じゃあ扉あけるね」
「行ってくる。」
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朝食会場には俺以外がすでに揃っていた。
「皆さんおはようございます。今日は食事後に神殿に行きたいと思います。」
姫さんが言った。よし、俺のスキルはなにかな?
多分こう言う説明系が続きますが、ご容赦下さい。