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ルピナスと迷子

「お前はここが何処かわかってきているのか?本来お前のような人間が来るべき場所ではない。」


「ここがどこかわかっているのか、という質問についてはYESですね。でなければこんなに厳重に重ねがけされた幻術を見破ってまでここに来ることはしませんよ。」


「なるほど、神気が扱えるか。まあどちらにしろお前がここにいることを許しているわけではない。直ちに立ち去れ。」


「そうはいきません。銀狼さんからの依頼ですから。」


「銀狼……?」


「はい。ご存知ですよね、カーム様の神獣です。」


「……ついてこい。」


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

◇視点ルピナス


ジャンケンに負けた。

今日は治と過ごせると思ったのに、お姉ちゃんの、本妻の力を改めて実感することになるとは。


そんな経緯があり、私は今図書館に居る。

私は全ての本を読むことのできる神器を治に貸してもらうことができるが、やはりこうして本に囲まれるというのは心躍るものがあるので少し気分が乗ってしまっている。


さらにここは帝国の図書館。噂に違わぬ蔵書の量で、治に『速読』を付与してもらっておいてよかったと思った。


そもそも、私がここまで本に執着するのにもそこそこの理由がある。

私はお母さんから『魔法改造』を付与してもらった。

しかしこの『魔法改造』というのは、骨組みが変えられないという縛りが存在するので、より沢山の知識を持つことで改造の幅を広げないとせいぜい『他と違うけど用途は同じ』ぐらいのものしか出来上がらない。

つまり、知識をたくわえることで武器を増やしていかないとこのスキルはあまり意味をなさなくなってしまうという事だ。


そんな深い(?)理由があって今はもっぱら読書に時間を割いている。

そんな時期だからこそこの帝国の図書館は嬉しいもので、今日はとことん読むつもりでいた。いたのだが。


「ねぇねぇ、なんでお姉ちゃんはそんなに読むのが早いの?なんで?」


なんか知らない間に子供に絡まれてた。


名前も知らない、本当に初対面のこの子。

こちらでは特に珍しいわけではない普通の金髪に、茶色の瞳。質素なドレスに唯一ネックレスだけ首から下げて“そこそこの令嬢”感を出したこの子。

やけに馴れ馴れしく話しかけてくるのは若さゆえなのか。

萎縮した様子などかけらも見せず、ズカズカと私の読書のために取っておいた時間に踏み込み、そのままどんどん時間が過ぎていく。


「ねえなんでお姉ちゃんはそんなに沢山本読んでるの?なんで?本なんて楽しくないじゃん。」


「……ちょっと静かにすべき。ここは図書館、みんなで使う場所。」


「え〜、じゃあ図書館から出ようよ、そしたらお喋りできるでしょ?」


「……じゃああなたはなんのためにここにきたの?」


「え〜っと……なんでだろ?」


あぁ、この子ダメな子だ。将来がめっちゃ心配になる子だ。

取り敢えず、私の周りをうろつかれては非常に邪魔なので、母親か父親を探すぐらいまで手伝ってやろうか。


「ということで、あなた、お父さんかお母さんは?」


「あれ?本当だ、いない、」


「……そこはニッコリしながら言うところじゃない。」


「じゃあ探すの手伝ってよ、」


「最初からそのつもり。」


「じゃあ行こ!」


そう言って少女は私の手を引いて走り出す。

これで私の図書館で本を読む時間が大幅に減ったわけだけど、この子を放置するなんてやっぱりできない。

私はそのまま少女に手を引かれ、喧騒に包まれる望月祭の人の中に埋もれていった。




ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


それから約30分後。

私たち二人は人に揉まれて、流されて、祭りの端の方まで行ってしまった。

ガチで人が多い。これほどまでとは思わずに、正直なめていたとしか言いようがない。


「あはは!!さらに遠くに来ちゃった気がする!!」


おい、そこの少女、真剣に悩んでくれよ。笑ってないで。


「はぁ、せっかくの読書時間を切り捨てて外に出たのに……」


「お姉ちゃん、あれ食べよ!あれ!」


「なんかこいつ(被害者)がこの様子だとやる気がだいぶ失せるんだよなぁ。」


と聞こえない程度にボヤきつつもちゃんと言われた通りのものを買ってやる。

少女は、買ってやったアイスクリーム(この世界でもある)を落とさないように丁寧に運び、道路脇にあるベンチまでいく。


「そういえばお姉ちゃん、名前聞いていい?」


「……ルピナス」


「ルピナスかぁ、うん。ルピナスお姉ちゃん、次はあそこの路地裏行こうよ!」


「……あんなところ人いないよ?」


「間違えて入っちゃったのかもしれないでしょ?」


「……わかった。」


ベンチで座りながら少しだけ会話する。この時間が無駄なのではと思ってしまうが、まあ子供に合わせてやらないとあとで疲れて寝落ちでもされると大変だ。





アイスが食べ終わり、少女に言われた通り路地裏に向かった。

そういえば、この子の名前聞いてない。


「……ねえ、名前、教えて。」


「え?私の?」


「……ほかに誰のが?」


この子は、なんというか馬鹿ではなくてただ単にいちいち話の脇道にそれていっているような気がする。

知識とかそういうのはむしろ平均と比べて多い方だと思う。


「私の名前が知りたいの?」


「……わたしだけ教えるのは不公平。」


「う〜ん、たしかに、ここなら人も少ないから教えてあげる。」


人が少ないから?

どういう意味だろう。そんなに忌み嫌われているような名前なのだろうか。


すると、その少女はおもむろに首から下げていたネックレスを外した。

次の瞬間、その少女を光が包んだかと思うと、上から順に少女が別人になっていく。

金髪は色素が抜け落ちたような銀髪に、茶色い瞳は綺麗なブルーに、少し白っぽかった肌はもっと白く。


やがて光が治ると、その少女はニッコリ笑っていった。


「帝国第二皇女、愛称はメアリー。今井菫の転生した姿だよ、久しぶりだね、ルピナス。」

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