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図書館と管理人

本日2回目

朝、俺は目を覚ました。

見慣れない天井。体の沈む布団。


「本当に日本じゃないんだな。」


思い出される昨日の記憶。俺らは異世界にあるバント王国に転移されていた。

そしてここはお城、孤児院の布団とは桁が違う柔らかさを持つ王家御用達のベットで寝た俺は昨日の疲れなんてない。そんな俺は重大な問題に直面した。


「この城って図書館あるのか?」


そう、これは1日に1冊は本を読まないと落ち着かないという読書好き(というか中毒)の治にとって明日を生きるための重大な問題。


「誰かに聞くか。」


俺は情報収集という名の延命措置を行うために着替えてドアを開けた、すると目の前をメイドさんらしき人が横切る。

そう、リアルメイド。だが俺はその程度では話しかけるのを躊躇わない。理由は単純、今の俺は優先順位的に図書館(いのち)のために行動を起こさなければならないからだ。

いけ、俺!


「すいません、この城に本がある場所ってありますか?」


「これは勇者様、おはようございます。本の場所ですね、ここをまっすぐ300メートルほど進めば、庭に出ます。

そこを左折しもう400メートルで離れの図書館でございます。」


おい、なんか300とか400とか聞こえたぞ。歩くのかぁ。

これから通うつもりだったのに。もっと近ければ…


「じゃあ俺図書館に行ってきます。」


「かしこまりました。」


運動キライダーーーーー!




ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

「はぁやっとついた。なんだよこの馬鹿でかい城。」


思わず愚痴った、だが心はウキウキしている。

確かに今まで読書しかしてこなかった俺にとってこの距離は地獄だ、でも今目の前にある建物を前にしたら少し達成感がある。それくらい嬉しい。

そこにあるのは普通の小学校の校舎ほどの大きさの建物。この中に本が詰まっていることを考えるとにやつきが止まらない。


「読破に一ヶ月かかるぞこれ。」


一ヶ月で読破できる点はさておき、確かに大きな図書館だった。これは数々の図書館の本を全て読破してきた治の血が騒ぐ。


「本のラインナップは日本と同じ(・・・・・)ような感じなのかな?」


自分で言ってあることに気づく。


「待てよ、そもそも言語は日本と同じ(・・・・・)なのか?!」


撃沈。何も考えてなかった。

急に歩いた時の疲れが戻ってくる。


「俺の700メートルのウォーキング……」


ここにきた理由を失ってはきた意味もない

ここに残っても意味がないと思った俺は帰ることを決意する。

トボトボと歩き出した時…


「ちょっと待って!」


俺はゆっくりと振り向く、そこにいたのは銀髪の青年。

丸渕のメガネと銀髪の相乗効果というか、めっちゃ頭良さそう。


「君は勇者様だよね?扉の向こうから聞いていたんだけど、言語のことなら心配しなくていいと思うよ。」


「どうしてだ?俺は日本語以外まっぴらだぞ?」


すると少年は少し笑った、ニヤリと。


「じゃあ、なんで今こうして会話できてるんだろうね?」


確かに!なんで会話できるんだ?

少年は笑ったまま続けた。


「僕はサイラ、この図書館の管理人。詳しいことは中で教えるから、入ってきなよ。」




ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

扉は二重になっていた。なんでも、重要な文献、それこそ勇者召喚に関するものなど、他国に渡ったら困るものが保存されてるらしい。


「管理人という仕事柄、ここからは出られないんだよね。そのくせ全く人が来ないから退屈で、友達が欲しかったんだ。」


えらく複雑な鍵を操作しながらサイラは言う。

サイラは十二歳の時から管理人をやってるらしい。管理人になる条件が揃っている王室関係者がサイラだけだったのだとか。


「だから嬉しかったんだ、君がここに来てくれたことが。」


笑いながらそう言うサイラ


「おし、開いたよ。」


そういってサイラが操作盤のようなパネルを軽くタッチすると、扉は音を立てながら開いていく。

まるでロボットアニメの扉の開閉のように。


「ようこそ、王城図書館へ!」


夢かと思った。外から見たら小学校の校舎ほどしかなかったのに、中はそこらの県立図書館を二つ繋げたような広さがある。さらに本棚が空中を浮かんでいるところもあるので、蔵書数としては図書館二つだけでは追いつけない。


「すごい!これなら読破するのに半年はかかるぞ!」


「読破に半年か、やっぱり君とは気が合いそうな気がする。そういえば、君の名前は?」


「そうだったな、俺は治、村上治だ。」


「治、これらの本は全て君が読んでいい。管理者権限だ。」


「本当にいいのか?」


「あぁ、早く本について語れる友達が欲しいんだ。」


「ありがとう。これからよろしくな、サイラ。」


「あぁ、こちらからもよろしく、治。」


俺たちは笑って手を握り合った。

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