完全戦闘モード
このおじさんの魔力はどれだけあるんだろう?
普通の人間に扱える魔力量というのはこのおじさんの百分の一以下だろうと思う。
全ての人間がこんなに大量の槍を放っていたら多分一夜で王国が壊滅するだろう。
つまり、それほど大量の槍を出現させては放って、出現させては放って。
魔力量というのは魔力を扱うためだけにあるスタミナのようなもので、鍛えれば伸びるが、『逸材』を使って鍛錬をした私でさえ勝てないような量を扱えるというのは人間なのかどうかを疑ってしまう。
そんな風に考えながらおじさんが放つ大量の魔法を捌く。
最低限急所に当たらないようにしながら大きさなどをみてその後の軌道を予測。その予測した動きに合わせて次に動くべき場所を割り出す。これら一連の動きは先ほど治が『譲渡』した『思考加速』により一瞬で導かれたものを使っている。治と相談した結果、それぞれの持ち味を生かせるスキルを譲渡した結果だ。
このおじさんの攻撃は遠距離なので、私の『ディアナ』が生かせる距離背あることは間違いない。でも、この怒涛のごとき攻撃を捌きながらとなると途端に何倍も難しくなる。
まず。弓には構える時間がいる。その時間を与えてくれないおじさん相手には弓矢は全く使えないだろう。
いや、少し語弊があったかもしれない。この『ディアナ』は役に立っている。でも、迎撃にしか使えていないので、おじさんにダメージを与えることが全くできていないのだ。
せめてもう少し放つまでの予備動作が少なかったら『思考加速』を使いつつ狙いを定めることで大幅な時間削減が可能なんだけど……
この戦いが終わったら治くんに文句を言うことを心に誓うと私は防ぐことしかできないこの状況を打破するために一歩踏み込む。
おじさんは動かなかった私がいた場所に定めていた狙いをずらすためにコンマ数秒の隙を作る。
私はその間に『思考加速』を発動して敵の槍を撃ち落としつつ攻撃するための軌道を計算する。
『究極化』済みの『思考加速』は1秒を最大で(調整可能)1000秒と認識することができる。
おじさんの攻撃がやんだ時間は約0.6秒、体感で600秒の時間の中で私は懸命に頭を回して一つの軌道を叩き出す。
私は時間の流れ(体感)を戻すと一本の矢を放つ。
私が打った矢は計算をし尽くして叩き出した軌道の通りに進んでいく。
この矢の進む軌道はおじさんの放つやりにぶつかることで向きが変わる。いわゆる”跳弾”だが、治くんによると”神気を物理的なものに変換させたものだから跳弾させることも可能”だそうなので今回はそれを利用する。
でも、全てが計算の通りいくような世の中ではなかった。
順調に進んでいった矢はおじさんの放つ土属性の槍に触れた、と思うとそのまま進んでいく。
カムフラージュのために放った大量の矢とともにその矢はどこかに飛んでいく。
私はそこで一瞬動きを止めてしまう。この隙が命取りになった。
最初に撃ち落そうと思っていた土属性の矢がこちらに向かってくる。軌道を予測した限り幸い急所は外れているがそのまま進むと左腕に到達する。きっとこの戦いで左の腕は使えなくなるだろう。
だから私は左腕のことは諦めて次の攻撃に入るための準備を始める。先ほどの透過は何か前兆があるだろうから、それを見つけるために『思考加速』を使って目をこらす。
あと約1000秒(体感)で矢が私の左腕を穿つ。それよりも前にこの問題を解決しなければならない。
そのために頭を必死に回転させている時だった。全てがスローモーションに見える私の目にも普通のスピードに見えるほどのスピードで大きな火柱が上がった。
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◇視点ルピナス
久しぶりのこのモードに慣れるのに少し時間がかかったけど、もう感覚を思い出したからアームの先まで手足のように扱える。まあ実際に手足なんだけど。
このフォルムは私の全パーツを集合させた形で、真の姿というと仰仰しいけど大体そんな感じの姿。
この森全体に配置された約2000の監視用ツールは全て私の頭につながっていて、簡単にいうとこれら全てが私の目であり耳である感じ。
これらのいくつかを使って自分に装備させることも可能で、目安として1〜10個が自己防衛用戦闘モードと言われるモード。そして全ての監視用ツールを利用する完全戦闘モード。
自己防衛用戦闘モードでは自分の頭の中に入る容量の情報しか使えないけど、このモードになった場合はデータを分散して監視ツールに記憶させることもできるので戦闘の幅が広がる。
私は目の前の魔人の討伐に向けてさらに決意を固めた。
サブタイトルが内容とマッチしていませんが、気にしないでください。




