部が悪い
楓は自分の目の前にいる白髪のおじさんを睨む。
「どうしたの?おじさんが先でしょ?」
楓はこのおじさんに競争で負けたのだ。
一番信じられないのは楓だろう。楓は途中から神気による強化レベル(便宜上このような書き方をしていますが、全神気を強化に使った場合を100としています)を50%から70%に引き上げた。
にもかかわらず、楓はこのおじさんに負けてしまったのだ。
「そう焦るな。我も久し振りにあれほどのスピードで走ったんだからな。」
「その割には全然息が切れてないようだけど?」
「気持ちの問題だ。」
楓は話しながらも必死に頭の中で発動する魔法のイメージを組み立てる。
属性は『木』。これは『治癒』の属性の上位に存在する。
一見関係のないように見える二つだが、歴史を遡ってみるとわかる。
まず、この世界には植物が存在して居なかった。そんな時に始まったのが最高神を決める一種のゲーム。
時空の神ハラナが人間を創り、言語の神カームと職業の神ダンタ、文明の神リントの三人(三神)が共同で魔獣や魔人などの魔の者を創り、そして命の女神ハーブが植物を創った。
それの影響で植物を操ることが出来る者には追加要素のようなものに”生命力を操る”力が備わる。
そのため治癒術師上がりで女神の加護をもらっている楓とは『木』の属性は非常に相性がいい。
ちなみに、今話したことは本当の歴史を知らない王国の人達にとっては考えもしないことであり、『木』属性に『治癒』の魔法があるのかは多くの学者の中でも議論が絶えないものだったりする。
それはさておき、楓は頭の中のイメージを固め、ここ一帯を森にする必要があった。
理由は単純で、今のままでは部が悪いからの一言で表せる。
楓の専用武器は弓。こんな開けた場所では絶対に向かない。
そのため、ここら一帯を敵の目隠しのために木々で覆う必要がある。
「ふむ、そろそろ準備が出来たぞ。」
「そんなこといいから、始めるなら早く始めて。」
「あまり急ぎすぎると人生損する……ッぞ!!」
「なっ!!」
おじさんは私との会話の最中に魔力を足に集めていた見たいだった。私にはまだ魔力が見れない。
そのため、何も対策していなかった私は出遅れてしまい、必死に組み立てたイメージも崩壊してしまった。
魔力による身体能力の強化。これには呪文が存在しないので、これを行うためには『魔力操作』を得るか、楓のように必死に練習するかの方法をとる必要がある。
今回のはきっと後者だと思う。理由としてはまず、すごく洗練されていると言うことと、魔力の動きに全く気づけなかったことが挙げられる。
基本的に前者の場合は操作可能な魔力の量が後者よりもわずかに多くなる(後者の場合は練習量によって上下するが)。そうすると必然的に魔力の流れは大きくなり、魔力の質を統一するのに苦労する。
無論、前者を簡単に切り捨てることはできず、あくまで可能性の範疇に過ぎない。前者の人が後者の人に負けないレベルで練習したら出来るようになるかもしれない。実際に楓は相当練習して通常の『魔力操作』を使う人よりも多くの魔力を扱える。が、それは『逸材』と言う者を持っているからであり、通常の場合はそれこそ目の前のおじさんぐらいの年齢になるまで毎日欠かさずに練習する必要がある。
つまり、何が言いたいかと言うと、”このおじさんはすごく強い”訳だ。
「ほう、これに追いつくか。まだ見たところは成人したばかりかそこらなのにな。」
「おじさんも、見た目の割には全然衰えてないみたいだけど?」
「これでも若い頃よりはだいぶ弱くなったんだがな。まあいい。次、行くぞ!!」
このおじさんはこの更地を最大限に活用してくる。
障害物が存在しないこのフィールドをあらゆる方向に変則的な動きをすることで、所々姿を見失ってしまう。
そしてその隙を突くように魔法で攻撃をしてくる。
今の所使っている属性は『風』と『土』と『水』。それぞれ槍状に変形させた物をこちらに放ってくる。
さらにいずれも詠唱が存在しないので常に神経をとがらせる必要があるのは辛い。
「本当に魔法専門だったんだね!!」
「嘘をつく必要がないからな!!」
おじさんから放たれる無数の槍を『ディアナ』で撃ち落としながら相手に話しかける。
正直無駄な抵抗だとわかっている。でも、もしかしたらわかるかもしれない。
このおじさんが全く魔力切れしない理由が。
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◇視点治
同じ頃、治は『未来予測』で今後の状況を確認していた。
(ふむ……こちらはロボット兵で足りるか。)
それに合わせてスマホを操作する。そして『戦況把握』との併用によって視点を少し変えてみる。
(なっ!!)
そこにあったのは火に包まれる森の姿だった。
(アイツが危ない!!)
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