戦い
最初の視点はルピナスです。最近多いですね。
なぜだろうか。敵の大将には見覚えがある気がする。
96年間ずっと引きこもって人との交流を絶った私の記憶に残っていると言うことは、実際に顔を見たことがあり、相当私に影響を与えたということ。だとすると、初めてお母さん以外の人間を見た王都で出会ったと推測がつく。
ぶくぶくと肥えた体、いかにも狡猾そうなつり上がった目。思い当たるのは一人しかいない。
(まだ生きて……いや、親族か何かという可能性もなくは無い……)
デロック公爵を睨みつけるルピナス。手にある拳銃をぎゅっと握りしめる。
こちらの軍は錬成師Sが作った最新型の武器を装備したロボット兵を使っている分、一体一体の戦闘力や体力、HP(この場合は耐久力の方が適切かもしれない)は総じて優っていると言っていい。が、こちら側は圧倒的に”数”が足りない。
ガリガリと敵の兵士を戦闘不能にしているが、焼け石に水、杯水車薪という言い方がぴったり当てはまるほど全体のごくわずかな量でしかない。
私は拳銃を目の前にいる敵の塊に向けて放つ。放たれた弾は、拳銃の弾とは思えない放物線を描き敵軍の中心部に向かっていくと、上空で弾ける。
上空で弾けた弾は虹色に光る粉を撒き散らしていく。敵軍は困惑し、一瞬滝のごとき連続攻撃によどみが生じる。
その隙を狙ってルピナス軍は攻撃を再開する。戦場での一瞬は命さえも軽く刈り取る。ルピナス軍はその一瞬で大量の敵を戦闘不能の状態に持ち込む。敵は一気に戦力を使えなくなった。さらに第二の刃が敵軍を貫く。
先ほどの虹色の光る粉は普通に撹乱のために使われたものでは無い。その意味合いも考えてあるのも確かだが、本来の使い方はさらに敵をかき乱す。
『虹色蝶の鱗粉』かなり希少な霊獣に当たる虹色蝶の羽から常に舞い落ちる鱗粉は強い幻覚作用を持つ。希少である自らを守るために手に入れたと言われるそれは、その輝きを見たものは一時的に暴力や殺傷をひどく嫌うようになり、武器すらも持てなくなる。ルピナスや運搬用ゴーレム達などの機械陣には効かないので、菫はもしもの時に敵を無力化するためにこれを集めていた。
鱗粉の輝きを見た半数以上の敵が武器を手放す。ルピナスは一気に無力化していくと、残ったものも無力化しにいく。最初は10:1ほどあった戦力差も今や3:1ほどに縮まりつつある。
なのにデロックは顔に焦りを滲ませ無い。ルピナスはわからなかった。なぜそこまで平気でいられるのか。
その答えは意外とすぐにわかった。
先ほど無力化した国王軍の塊から少し離れたところから歩いてくる男女が四人。
「ああもう、こんなに戦力を使えなくしちゃって俺まで出なきゃならなくなったじゃねぇか。どうしてくれるんだよ。」
「そんなことを言うな、これはデロック様からの直接の命令だ。働かなきゃいけなくなったことより信頼されていることを喜べ。おい、お前もなんとか言え。」
「悪いけどこれに関しては私もあいつと同意見。まあ最も、私がイラついてるのはこれから弄ぶ予定だった新人の兵も戦闘不能にしたことだけど。」
「戦士など所詮は駒。我らはデロック様の命令通りに戦ってればいい。死ぬのは当人の実力不足だ。」
四天王の登場だった。
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◇視点治
治は感動していた。
とてもロボット(ゴーレム)が個人で判断しての行動とは思えないほどのルピナス軍の統率された動き。
そして何より一人も殺していないこと。それは菫さんの言っていた『何も壊さない力』が至ることのできるところだった。
(虹色蝶の鱗粉の本来の力が現れる前に撹乱の目的で使用する……なかなか興味深い戦略だ。)
『鑑定』や『思考力強化』を使いながら一部始終を見ていた治は戦略の隅から隅までが理解できた。その全てが敵を傷つけないことに重きを置いており、治はさらに感動した。
「治くん、現状はどう?」
「ああ、ルピナス軍が敵の半数以上を無力化している。このペースでいけば俺たちの出る幕はないかもな。」
「よかったです。もう大丈夫ですね。」
琴美がかなり危ないことをいう。こういう時にそれをいうのはやばいと思う。
ーードォオオオオオオオン!!
そう考えたとき映像ごしに大きな音がなる。ルピナスの体が吹き飛ばされ、木々を倒していく。
「ルピナス!!」
今日1日で何度この名前を叫んだだろうか。
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P.S
今回少し短いです。すみません。




