ルピナスの記憶
昨日投稿できませんでした。申し訳ありません!
これからちょくちょく(特に金曜日)更新できない日があるかもしれませんが、愛想は尽かさないでください。
こちらの事情に巻き込んでしまい、申し訳ありません。
治は今まさに『開いた口が塞がらない』状態だった。ここが地下だと言うことを忘れそうなほど広い空間。一般の大工場(車とか組み立ててそうなとこ)の10倍は軽く超えているだろう。
そこでは小型の運搬用ドローン型ロボット(ゴーレム)が縦横無尽に駆け巡り、二つの腕を自在に操る直立二足歩行ならぬ直立二輪走行ロボットがまるで整理するようにせわしなく魔道具を出し入れしている。しかも驚いたことに魔道具によってアームの形を変えて丁寧に運んでいる。さらにルピナスによると一糸乱れぬ統率された動きはそれぞれの機体のコンピューターの作り出すネットワークを通じてそれぞれで判断しているものだそうで、ひょっとしたら俺よりも頭がいいのかもしれない。
「ルピナス、こいつらは今何をしてるんだ?」
「……お母さんの遺品の整理」
表情の乏しいルピナスの顔にわずかに影がさす。遺品と言ってたな。
「それじゃあ、お母さんは……」
「ごめんなさい……私がいながら、ごめんなさい……」
楓も少し涙声になりながら聞き返す。ルピナスは続ける。
「今から私の記憶を見てもらう。楓、闇属性は使える?」
「うん……全属性使える。」
「今から見せる呪文を唱えて。」
全属性の話を聞た時は少し驚いていたが、すぐに自分の懐から手帳を取り出して呪文と思われる文章を書き始める。
ちらりと見てみたが、まだ治の知らない呪文だった。呪文系の魔導書は全部読んだんだけど。
「行くよ……」
メモ書きをちらりと一瞥すると、そう言って楓は魔力を集める。楓は修行を積んで神気を使えるようになった人なので、途中経過である魔力の操作もできる。これは、スキルを持っている俺はできるが琴美はできない芸当だ。
するとルピナスの体が光り始める。初めて見た呪文をいきなり無詠唱だなんて楓らしいと言えばいいのか。するとルピナスの額から三本の光の筋が現れる。それが俺たちの額に一本ずつ繋がるといきなり記憶がフラッシュバックしたような感覚に襲われる。
『ルピナス、こっちにおいで!』
暖かい声とともに女性の姿が見え始める。
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『ルピナス、こっちにおいで!』
それはお母さんの声だった。目線はお母さんのおへそぐらい、ちょうど10年前の私ぐらいの背丈だろう。
『お母さん!』
視界の中のお母さんが大きくなっていく。ルピナスが走って行ったんだろう。
『ルピナス、少し大きくなった?』
『私ね、ちゃんとけんきゅーじょ守ったよ!』
『よ〜し、ちゃんとお仕事頑張った子にはご褒美です!』
『やったー!』
『一緒に王城のお父さんのところに行きましょう!』
『会えるの?』
『うん。』
『やったー!』
一瞬鏡に映ったルピナスの顔はひどく喜んでいた。唐突に場面が変わる。
『どこだ、どこに行った!お前ら探せ!チリ一つ見逃すな!』
人気のない路地裏に男の声がする。炎がメラメラと燃え、バタバタと足音がする。私の知らない、お父さんでもない誰か。初めて聞く声だが、恐怖で体がすくむ。
『ルピナス、あの人たちが狙っているのはあなたなの。すぐに研究所に戻りなさい!』
小声だが緊迫感に満ちている。お母さんの声だ。
『でも、お母さんが……』
『そんなことはいいの!早く逃げなさい。大丈夫、私は勇者として召喚されたのよ。』
お母さんも勇者として召喚されたらしい。
『早く逃げなさい。もう追っ手がここまで来てるわ。』
『絶対に戻ってくる?』
『愛する娘の成長を見届けない親がどこにいるのよ。』
お母さんは笑顔で言う。ルピナスは走り出す。さっきの森ではあんなに速かったのに、今回は普通の小学生ほどのスピードだった。後ろで銃声が響く。この世界に銃なんて存在しないから、きっとお母さんの武器だろう。振り返ると、こっちをみながら二丁の拳銃を構えて王国の紋章が描かれた鎧を着た人たちを抑え込むお母さんの顔をみた。またも場面が変わる。
そこは、研究所の管理人室のようなところだった。モニターにみたことのある服装が目に入る。
『お母さん!』
ルピナスは急いでエレベーターの降り口まで駆けていく。
エレベーターホールには傷だらけで壁にもたれかかるお母さんの姿が見える。
『……ルピナス……ただいま』
今にも消え入りそうな声がする。
『お母さん、こんなに怪我してるじゃん!ポーション持ってくるから待ってて!』
走り出そうとしたルピナスの腕を誰かが捕まえる。振り向くと全身に傷をつけたお母さんが力強く握っている。
『……ルピナスもしも楓が来たら、私のことを伝えて。あと、あなたは何も悪くないの。私がもっとしっかりしていればよかっただけだから。』
『……お母さん?』
ルピナスの声が震えている。
『あなたは、いつまでもルピナスだからね……』
お母さんが微笑む。
『お母さん、お母さん!』
それっきりお母さんは動かなくなった。
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森の中に二人の男がいた。
「ボス、ヤツの本拠地を見つけました。追跡したところ、新たに男一人女二人が入って行きました。全員成人したばかりではないかと。」
一人が通信用魔道具を使う。
『よくやった。これでSの遺産は俺たちのものだな。』
「へいボス。突撃はいつにいたしますか?」
低く、暗い声がひびいた。そしてその声の主にもう一人が尋ねる。
『王国から少し兵を借りる。100年間待ち続けた我ら一族がようやく報われる時だ。』
不気味な笑い声が森に響く。
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前書きで言いましたが、ちょくちょく更新できない日が生まれるかもしれません。おお許しください。




