楓たちの武器
ブロロロロという音を立てながら畑しかない町外れを走っているのは二台のバイクと一台のスポーツカー。もちろん治たちである。
妖狐をテイムした後、銀狼の試験を無事にみんなで合格したので俺たちは神の加護から出た。銀狼は神殿の守護という本来の仕事があるので、いつでも駆けつけられるように『テイムカード(改)』に登録してもらった。
『テイムカード(改)』は普通のとは違い、使用時に使用した人のところへ転移するようにできており、カード内の世界にいなくてもいいようにした。いざとなったら銀狼を転移させることができるというわけだ。
俺たちは森を抜ける際は経験値稼ぎのためにたくさんの魔獣を戦闘不能にしていった(殺してはいない)。その度に治はカードを集めていたので今ではケースの3分の二の容量が埋まってしまった。ケースには『欲しいカードを出してくれる』を付与しているため、カードを見失うことはないが、中身が上級魔獣以下の弱っちい(治たち基準)カードしかなく、これから災害級以上と出会ったら適当にカードの中の魔獣を入れ替えるつもりでいる。
森の中を歩いていた時はテントでの野営しかできなかったが、治は『睡眠不要』スキルがあるので夜な夜な楓たちの乗り物と武器作りに励んでいた。そして出来上がったのはご想像のとうり伝説級を軽く超えるものである。
楓専用機『水龍』
全体的に赤いボディー。陸海空を移動することが可能で紅葉と楓の葉っぱをかたどった髪留めに変形。最高速度は治の『ムラクモ』と並ぶ。カーナビもついているという優れもの。
楓専用武器『ディアナ』
ローマ神話に出てくる月の女神兼弓の女神からもらった名前の弓。普段は『水龍』の一部となっているが、楓が念じることで楓の手の中に転移して弓となる。神気を形とすることができるように色々付与されており、神気を込めるだけで実体はないが破壊力抜群という神気の矢を放つことができる。当然、魔術のように炎に変えたりもできる。ちなみに治はこのネーミングを考えるにあたって今まで読んだことのある神話を必死で読み返した。
琴美専用機『グリフォン』
青いボディーのかっこいいスポーツカー。『水龍』と同様に陸海空を走れるが、『水龍』や『ムラクモ』と違い潜水艦となることができるため、水中の探査ができる。また、キャンピングカーのような形態も存在し、野営ではすごく便利で、こちらはイチョウをかたどった髪留めに変形する。
琴美専用武器『神琴』
刃渡り30センチほどの短刀。合計十二本あり、神気による操作で宙に浮かせたり敵を追尾したりできる。神気を込める事で炎を纏わせたりできる。『ディアナ』のように普段は『グリフォン』の一部となっている。
とまあ、こんな感じの武器ができたわけで、さらにそれの性能が当然のごとく「常識?なにそれおいしいの?」と言っているようなもので、簡単に人には見せることができないということは銀狼の説教で身にしみて分かっている(つもりの)治は人前を走る際の手段として『水龍』と『ムラクモ』を馬に、『グリフォン』を馬車に変形できるようにしておいた。また、妖狐との戦いで武器を取られたときの対処法がないことに気がついたので、全ての武器に呼べば手に戻ってくるように付与しておいた。ちなみに『ハバキリ』は少しオシャレな本のしおりに変形する。
そんなこんなで今は王都の東の端の方にいる。俺たちは最初の神殿を見つけるために帝国に向かっている途中である。
「そういえば治くん、治くんなら『どこで○ドア』も作れたんじゃないの?」
「それも思ったんだが、その際は空間を超えることになるからこれから戦う相手の時空の神が支配する領域に干渉しちまうんだよ。テイムカードとかの空間は俺が直接出入りするわけじゃないから空間干渉してるけど、俺らが直接空間を超えたりしたら俺らの存在を教えているようなもんだろ?」
「確かにそうですね。用心に越したことはないです。」
俺たちは会話をしながら本日の野営地に乗り物を止めたあと『グリフォン』をキャンピングカーに変形させ、夕食の準備をする。楓と琴美は治特性完璧保冷バッグから今日村でもらった野菜と狩りで手に入れた肉を取り出し、俺は『万能の大鎚』を取り出して唱える。
「職業変更……職業:料理人!」
途端に手に持っていたペンがかなりの業物であろう包丁に変化する。
料理は『調理』を持っている俺が担当する。
俺は鳥の手羽先を取り出し、片栗粉もどきをまぶすと土魔法で作ったかまどの中の薪に火をつけ、上にフライパンをのせる、油はこの世界にもあるらしく、村人から買った油をフライパンに入れるとじっくり揚げ焼きを始める。
別のフライパンで甘辛ダレを作りつつ、まな板と包丁で野菜をカット。玉ねぎもどきと人参もどきはスープに、その他の野菜はサラダにしていく。
30分後には全ての調理が終わっており、楓たちと一緒に食べる。調理スキルはどんな料理も上手にできてしまうので、いつも「おいしい」と言ってくれる。すごく嬉しい。
土魔法と水魔法でお風呂を作り、入った後はすぐに寝る。当然お風呂にはラッキーな展開は存在しないのが現実だ。俺は寝る必要がないので道具作りや神気の特訓をする。と、このような感じで野営は終わる。
が、いつもそうとは限らない。満月が真上に来た時だった。
なんの前触れもなくゴォッという音とともに森の方で火柱が上がる。
俺はすぐにその場所に駆けつける。そこでは木々が消滅しており、あちこちで焦げた匂いがする。だが、そんなことは気にならなかった。
「楓か?」
楓と全く同じ顔の少女がそこには立っていたのだった。
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