琴美の試験
『タイム、5分42秒!合格とする!』
銀狼さんの声が聞こえた、次は私の番だ。
「じゃあ、行ってきますね。」
「おう、気をつけろよ。」
治くんに見送られながら私は洞窟へ歩いていく。ほんと、予期しない形で一緒になったと思う。
(結局、ゴッドスキルの影響だったんでしょうか?)
私はどこか引っかかるような疑問を感じながら治くんに手をふる。
治くん……村上治の観察。
(まさか異世界に飛ばされるなんて思ってもいませんでした。)
親に命じられて、治くんと行動を共にするためになった実行委員。その結果飛ばされた異世界。
(このことは伝えるべきなんでしょうか?)
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少し進むと他と比べて大きな空間に出る。そこには楓さんと銀狼さんがいた。
『おし、きたな。お前はあの部屋だ、2,30メートルぐらいあるが大丈夫か?』
「はい、これくらいなら。」
私は集中して神気を手に集め、地面に手をつけた瞬間に放つ。
ゴゴゴゴという音とともに現れたのは岩の階段。別に敵がなんなのか知らないうちに体力を使うなんて勿体無いことはしない。
「じゃあ、行ってきます。」
トントンという岩を踏むおとを出しながら琴美は登っていく。先ほどとは違いスマートな方法に銀狼は新鮮さを感じたのであった。
「銀狼さん、何か失礼なこと考えた?」
時々楓は『読心』を持っているのではないかと割と本気で思う。
そんなことが後ろで起こっているとき琴美は部屋の中で今後の方針を考えていた。暗殺見たくゆっくり確実にやるべきか正面から普通に倒していくか。琴美は後者をとった。
まず真っ暗な部屋をどうにかすべく、神気を集めてそれを光に変化させた。
目に入ってくるのは三種類の魔獣。お互いが威嚇しあうように睨みつけていたが、部屋が明るくなると同時に一斉にこちらを振り向く。狼の魔獣と虎の魔獣とケルベロスのように三つの頭のある犬の魔獣。名前は覚えていないけど、狼は『威圧』と『服従』虎は『俊敏』と『凶化』犬は『闇魔法適正』と『魔力操作』のスキルを持っていた気がする。
『威圧』、『服従』は共に格下の相手に対してしか使えないもので、『威圧』は相手の動きを鈍くして自然に畏怖を感じさせるスキル。『服従』は『テイム』の劣化版で自分に反抗しなくなるというものだ。
琴美は以上のことを踏まえ、一番倒しやすそうな狼から仕留めにいくことを決めた。
まずは狼の群れに向けてゆっくりと加速すると走りながら神気を足と腕に集める。神気の量が限界に至った瞬間に琴美は地面を思いっきりける。
バコッッ!という音と共にクレーターが現れ、琴美が飛んでいく。
神気をまとった腕を構えて自らの体に回転をかける。バレエさながらの綺麗な軸を保った回転をしながら狼が6匹ほどいる群れに突っ込むと逃すことなく神気をまとい武器となった腕で胴体に切りつけていく。
今の攻撃で切りつけた傷口には琴美の神気がこもっており、あとはそこをうまく操作して狼たちの体内にあるコアの魔力を暴走させれば狼たちは討伐できる。
琴美は慣性により未だに止まらない体を少しひねり、きりもみ回転をしながらザザァァァァっと音を立てて綺麗に着地する。その動きを行なっている際も神気を操作していたため、それと同時に狼たちは倒れる。コアの色が少し輝いているのは魔力が暴走した証である。
琴美が着地すると、次は犬の魔獣が闇魔法を使ってくる。犬の魔獣は比較的頭がよく、着地のタイミングを計算していたのか着地とほぼ同時に影縛りが作動する。が、琴美は冷静に神気を操作してその魔術を消滅させる。イメージは音の逆位相で、相手の魔力の波長と真逆の波長に神気を操作し、ぶつけることでお互いを打ち消しあう。
その後、この部屋いっぱいに神気を広げる。これにより、この部屋の魔力は消滅して犬の魔物のスキルは二つとも意味をなさなくなる。よって、凶悪な魔獣はただの頭が三つあるだけの犬に成り下がり、ここからは一方的に琴美が倒していく。指先に神気を集中させてそこらへんに落ちている石を石が消滅しないギリギリの速度で放ち、神気による軌道修正を行いつつ一発も外すことなく弱点である首の付け根に当てていく。結果、犬の魔獣は全滅する。
最後に、一番厄介な虎の魔獣だ。2匹とも戦いを見ていたので琴美の強さは十分知っており、もうすでに『凶化』されていた。『凶化』は思考力が著しく下がるが、攻撃力・魔力量が爆発的に増幅し、かなりの脅威となる。さらに、『俊敏』を持っているため先ほどの狼のようにはいかない。が、琴美には勝利への道がもうすでに見えていた。
まず、ずっと証明として使っていた神気の塊を虎の前まで持っていき、一気に爆発させる。簡易閃光弾のようなもので、視力と思考力の下がっている虎は所構わず攻撃を始める。当然、琴美には当たらないどころか、スキを見せまくっている訳で、琴美は2匹の背後に回り、先ほど作った石槍に神気を纏わせ首元を貫く。
「ごめんなさい。」
2匹が倒れたあと、琴美はそっと呟き階段を降りていく。
『タイム、3分53秒!合格とする!』
「琴美ちゃん早いね!」
楓の笑顔を見て治に近づいた本当の理由を告白しにくくなった琴美だった。
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