鍛錬の場
1日が経った。
俺は今、本棚を片っ端から攻略している。
なんせ『速読(+EX)』があるので、400ページの文庫本を10秒で読み切れる。
「次は…っとこれだ。」
『スキル大辞典』か。『読書内容絶対記憶』があるから、読んどいた方がいいか。
敵の弱点を炙り出すのに便利かもしれない。
「俺のユニークスキルについて書いてあるかもしれんしな。」
驚いたことに、『読書内容絶対記憶』は、今まで読んだ本の内容も全て思い出せる。
それも童話から図書館の本読破のためだけに読んだ医学の参考書のようなものまで、一語一句間違えなく。
おし、読み終わった。やはり書いてないな。これで12冊目だけどまだ見つからない。
ざっと50冊は読んだか。まだ30分ほどしか経ってないんだけどな。
すると、ドアが開いた。
「治くん、台所にあったものでおやつ作ってみたんだけど、食べる?」
ちょうどいいタイミングで楓がくる。
女子力高いよなぁ、楓って。白鳥園では楓が料理専門だったっけ?
「ありがとう、いただくよ。」
「簡単なスポンジケーキだけど。どうぞ。」
『簡単な』だって。俺が作ったら人一人殺せるものができるのに。まあいい、いただくか。
一口放り込んでみる。口に入れた途端に広がる甘み。ふわっとした口触り、それを包み込む濃厚な生クリーム。
サイラ、なんてもの台所に残してるんだよ。
「楓はすごいよな。晩御飯は楓の料理が食べたいよ。」
「私はいいよ。ただ、お城の人に伝えなきゃね。あと、サイラに台所を使う許可もらわなきゃ。」
楓はすごく気が回る。このあと本を読むつもりだったが、楓の料理のためだ。
「お城には俺が行く。サイラは……そのケーキを一切れあげてから聞けば、多分問題ない。ってかそのケーキ作ってんだからもういいだろ。」
「それもそうだね。まぁ、一応ケーキを持ってくついでに聞くけど。お城の方はよろしくね。」
「あぁ、任せとけ。」
図書館を出ることは明日の朝までないと思ってたけど、案外早かったな。
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使用人室は……この先か。
俺は今、稽古場の近くにいる。そういえば、孝介達が鍛錬するとかいってたな。
「治、どうしたんだ?」
「あんた、来ないんじゃなかったの?」
なんか物陰に隠れて移動するとかすればよかったか?
「少し使用人室に用があってな。」
「少しだけ、みてかないか?みるだけでいいから。」
「なんでそんなに俺を誘うんだ?」
頼むから構わないでほしい。
「お前に意見を聞きたくてな。批判ならお前の十八番だろ?」
そうきましたか。どうしよう、言ってることが正しいから断りにくい。
「少しだけな。」
「ありがとう。」
孝介、たまには美嘉をかまってやるんだぞ。ずっとこっちを睨んでるんだが。
「でも、使用人室に行くのが先だからな。」
「わかった。稽古場で待ってるぞ。」
はぁ、面倒なことになった。すぐに終わらせよう。
手取り早くそこらへんの人にお願いすることにした。
「あ、執事さん。今夜の晩御飯は二人分抜きでお願いします。」
「わかりました。上に報告しておきます。」
なんでだ?あの執事さんの顔、すごく訝しむような目で見てたけど。素人のくせに料理にケチつけたいのか!みたいな感じかな?まあいいや、急いで稽古場に行かなきゃ。
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思ったよりも広いんだな。
孝介は練習試合中みたいだな。相手は謙介クンか。
「『身体強化』!」
やっぱり光るな。みんなも見えてないんだろうか?
『身体強化』その名のとうり、身体を強化するスキルだ。約50倍の力は出る。ただ、体力の消費が激しい。
延長戦に持ってくのが定石だな。『読書内容絶対記憶』が早くも活躍している。
図鑑読んどいて正解だったな。
「『腕力強化』!」
孝介は橘の『身体強化』による攻撃を、『腕力強化』により強化した腕で持った幅が30センチほどもある練習用の木の大剣で防ぐ。『腕力強化』は『身体強化』をピンポイントで行ったようなものだ。体力の消耗が『身体強化』より少なくなり、力が70倍ほどになる。腕力の他に、脚力、眼力、などのピンポイントなものはたくさんあるが、これらのスキルは全て自らの身体に使うもので、併用は難しい。だが、かつて召喚された、職業:勇者の中には『天才』スキルにより、『腕力強化』と『脚力強化』を併用していた者もいるらしい。使わないあたりを見ると孝介は持っていないか。
「『間合』!」
そう考えた直後、孝介は『腕力強化』によって大きく後ろに剣をふり、スキルを解いた後、距離を詰め横薙ぎにすべく大剣を振るう。『間合』は相手の間合を読み、懐に飛び込むことを最大補正する。距離を詰めるのにはもってこいだ。
「『闘気術』!」
『闘気術』にて橘の拳に集中した闘気。視認できるまでになったのはあいつのセンス故か。
『闘気術』は己の身体に闘気を纏い、己が身体を武器とする。量によっては鋼鉄すらも貫くという。
「『挑戦者』!」
これはまた勇者らしいスキルだ。『挑戦者』相手の力に応じて自らの得物に力を上乗せするスキル、相手が強いほど上乗せされる力も増える。
キイイィィィィィン
とても木と拳の出すような音ではない。それだけ『闘気術』と『挑戦者』が力を発揮したということだろうか。
だが、孝介の方がわずかに強い。次の瞬間、橘は壁に吹き飛ばされた。
孝介がここまでスキルに慣れていたとは驚いた。楓にも伝えとくか。
俺は図書館に帰る(?)べく出口に手をかけた。その時だった。
「どこに行くのかな?小説家さん。」
楓とサイラ、城の人しか知らないはずの名前で呼ばれたのは。
なんか、ブックマークが二人になってました。
メッチャ嬉しいです。まだ二人ですけど、頑張って増やしたいな。
※物語の進行のために日にちの変更を行いました。




