パーティーの雑用係は最後の最後に最後の本気を見せる
すいません完全に思いつきです。あらかじめ言っておきます下手です。それでもいいというなら読んでってください!
「我が元までよく来たな!!勇者カインよ!!」
「覚悟しなさい魔王ドラガン!!」
異世界勇者ものならありきたりなワンシーン。だがそこにはゲームであるような余裕は一切なかった。
魔王の前に戦った四天王やその他の敵にかなりの苦戦を強いられすでに勇者パーティーは満身創痍だった。
「勇者よ、早速始めようか」
魔王は杖を勇者は聖剣を構える。
「これまで失って来た。仲間のために私は負けない!!はああああ!!」
勇者は魔王の元へと肉薄し聖剣を振り下ろす。だが魔王はそれを杖で受け止めさらに、力で勇者を吹き飛ばす。
「勇者とはこんなものなのか?いくらなんでも弱すぎるぞ」
勇者が離れた隙に賢者が大魔法を発動、戦士が時間を稼ぎ、聖女が吹き飛ばされた勇者の傷を癒す。
「うるさい羽虫だな」
魔王は、自分の目の前で剣を振り続けている戦士の頭を掴み賢者の方向に投げる。
「ぐはぁ!」
「うっ!」
「私の体に傷をつけられるのはそこの勇者が持っている聖剣くらいだと聞いておらぬのか?」
2人が地面に倒れこむ。
しかし賢者と戦士が戦っていた数十秒のおかげで完全とまではいかないが聖女の魔法で勇者を回復することができた。聖女は、そこで魔力を使いきり気を失う。
「勇者よ。ようやく回復したか。早く我を楽しませよ」
「はあああ!」
勇者と魔王は、互いに近づき剣と杖を振るう。
一撃一撃が必殺の一手。一撃も失敗するわけにはいかない。勇者の額に汗が落ちる。
「ふはは、楽しいな!勇者よ」
「くっ!」
だんだんと疲労の所為か勇者が魔王に押されてきた。魔王はどんどんとスピードを上げ杖を振る。勇者も負けじと剣を振るうが最早防戦一方にしかならない。
(このままだと確実にやられる。あれを使うしか)
勇者は魔王の杖を上に弾き後ろに下がる。
「ほう?何か見せてくれるのか?」
「ええ見せてあげるわ!私の最期の力『グランドクロス』!!!」
聖剣から閃光の一閃が放たれる。これは勇者が今出せる全ての力全ての魔力を消費して放たれる大逆転の為の一手。
「いいじゃないか!!『ブラックホール』」
だが、それも魔王の使った魔法によって発生した。黒色の渦によって吸収されてしまう。
「う、嘘」
「なんだ、勇者その絶望的な顔は!早く向かってこい!勇者だろう?」
勇者はふらりと立ち上がり聖剣を振る。だが、先ほどまでのキレや速さもなく。聖剣も最早輝きを失っていた。
「もう。終わりだ勇者」
魔王は勇者に拳を叩き込む。
「くはぁ!」
「やはり、勇者といってもこの程度か。死ね」
「ちょっと待てや、にぃちゃん!」
「まだ人間が残っていたのか?」
魔王と勇者が部屋の扉の前を見ると、そこには何処にでもいそうな一人のおっさんが立っていた。
「誰だ?貴様は?」
「俺か?俺はしがない雑用係だよ。魔王」
「はっ!雑用ごときが我の前に立とうと言うのか」
「や、めて。逃げ、て」
「勇者も言っておるではないか!今逃げるなら特別に見逃してやってもいいぞ」
「はぁ、生憎とそんな訳にはいかねぇんだわ。にぃちゃんよ」
雑用係は魔王の下まで走る。
「なんだ?やはりただの一般人か」
魔王は雑用係に瞬時に近づき殴る。すると体は容易く飛んでゆく。
だが雑用係はその程度では諦めない。雑用係は、何度でも何度でも突進して行く。その度、何度も何度も魔王に吹き飛ばされる。
勇者が涙を流す。
「も、うやめて」
「ぐはぁ、いいや、まだだ」
さらに何度も何度も吹き飛ばされる。
「もう、やめてよ!お父さん!!」
雑用係レイジは、ボロボロになりながら勇者である。娘に微笑む。
「やっぱいてぇな。ふぅ、カイン今までよくやった。お前は俺の誇りだ。だからよく見ておけ。これがお前の超かっこいい親父の本気だぜ」
レイジは、魔王に向かって今までにない速度で走る。
「ふはは、遅い!遅いわ!!死ね!人間!」
魔王の拳は、レイジの腹を貫通する。
「ぐ、おおおおおおお」
「父さん!!!!」
レイジは、血を吐きながら自分の腹を貫通している魔王の腕を両の手で強く握る。
「くらいやがれ魔王!!『終焉』」
ラストは自分の触れている相手に強制的に終焉をもたらす魔法。その強すぎる効果故に様々な制約がある。だが腹を打ち抜かれた今ならどんな制約だろうが大して関係ない。
魔王の体がどんどんと黒く変色し、ボロボロと崩れ落ちて行く。
「クソが!!!!ただの人間程度にこの俺が!!!!この俺が!!!!!」
数秒後には魔王は完全に消え去る。世界には平穏が訪れた。
どさりとレイジが、地面へと倒れこむ。
「父さん!!」
倒れたレイジの元にカインが駆けつける。レイジは、最後の気力を振り絞り娘の手を握り、掠れた声で話す。
「どうだ、父さんの本気かっこよかっただろ?」
「父さん喋っちゃダメ!まだ聖女の魔力なら直せるかもしれない!」
「いや、もういいよ。どちらにせよ腕も・・・」
レイジは、手を握ってない方の腕を見せる。その腕は黒く変色していた。ラストの制約の効果だ。
勇者の目からボロボロと大粒の涙が流れ落ちる。
「ほら、泣くな。美人が台無しだぞ」
「でも!でも!」
「大丈夫だ。最後くらい笑顔でいてくれ。な?」
「うっ、ひぐっおどうさん。ありがどう」
「あぁ、母さんに済まないと言っておいてくれ。チッ、も、う限か、いかよ。じゃ、なとうさ、んはいつで、もお前達、を見守ってる、からな」
握られていたはずの手の力が抜け、床に落ちる。残ったのは齢17歳の少女だけだった。
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「ういっしょ!今日の分はこれで終わりかな?」
そこには、畑を耕している勇者がいた。
あの件から数週間後無事人里に帰還することに成功した勇者一行はそれぞれの故郷に帰っていた。
「お疲れ様。カイン。サンドイッチよ」
「ありがとうお母さん」
「ふふ、今日はお父さんが大好きだった。タマゴサンドでーす!」
「やったー!!」
「たくさん召し上がれ」
カインは口いっぱいにサンドイッチを頬張る。旅の途中でも食べた父のサンドイッチと同じ味がする。
次第に涙が溢れ出す。
「お母さん。私、お父さんを守れなかったよ」
「貴方のせいじゃないわ。それにあの人ならずっと側で見守ってくれてるわよ」
母も涙を流す。
「そうだといいな」
「ふふ、大丈夫よ。そうじゃなかったら私が天国に行った時に飽きるくらい叱ってあげるわ」
「はは、それは怖いな。心配するなしっかりと見てるぜ!!」
2人とも声がした方に振り向くが、そこには誰もいなかった。
「レイジさん?」
「お父さん?」
だが2人には桜の木の下で笑顔でこっちに手を振っている。レイジがいたような気がした。
ありがとうございました。こんな作品を最後まで目に通してくださって本当に感謝しかありません。
こんな物を読んでくれたあなたに幸がありますように。