1話
目を開けたら、何も見えなかった。
というよりも目を開けられなかった。
体が動かない。その代わりに持ち上げられているような浮遊感がある。遠くから声が聞こえる。
これはもしや転生フラグ。っていたい。なんかたたかれた。超いたい。なく。マジなく。
「おぎゃああああああああああああ。」
というか。泣いた。うん。泣いたけど、思っているのと違う。
もしかして、転生後?
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「おめでとうございます。産まれました。しかも、男の子ですよ。男の子。苦労して共学行ったのに会えなかった男の子。まさか、こんなところで会えるとは。」
手術室にいた看護師が大声を上げる。言っていることはわかる。今のご時世そうなるのは当然。なのだが、その子は私のだ。
「こんなところで悪かったわね。貴女、減給ね。それにしてもこの子泣かないわね。その子返して。」
「ちょっ、先生。」
姉よ。貴女にそんな決定権ない。第一、この中で減給されるなら貴女だ姉さん。それと、返してではない。貴女は付き添いであって私ではない。職場に戻れ研修医。
「おぎゃああああああああああああ。」
「よかったないたわ。」
おい、何をしたバカ。バチンってすごい音がしたぞ。お前ほんとに医療従事者か。周りに無駄にある機材は置物か。案山子か。張子の虎なのか。バカなのか。バカなんだな。
「泣かないってことは生命に危険がある、」
「知ってますけど、それ女の子の処置でこの子、男。」
「おい、やぶ医者。人の患者に何をする。お前はこの最新機材を見て何も思わないのか。バカなのか。バカなんだな。」
そうだ。もっと言ってやれ。主治医。そして、ありがとう。この場で唯一私を気にかけてくれて。さすがプロ。どっかの姉とは大違いだ。
「男女平等。我が家の教育方針にしようと思う。」
「それを決めるのはお前じゃなくて、お前の妹。この子の母な。というか、職場に戻れ研修医。「産婦人科研修中ですが」うちにそんな連絡は来ていない。一昨日、手術の見学して外科無理って言ったの誰だよ。あと、早く妹さんにその子を渡せ。おばさん。」
「先輩より若いですよ。」
「喧嘩売りに来たのか。研修医。」
なんだ、このピリピリした空気。お前はほんとに何しに来た姉よ。というか、そろそろ私に返して。
「あの。」
「ごめんね。茜ちゃん。2000ぐらいかしら。ちょっと重いって感じる程度だけど気をつけてね。」
「この子が私の赤ちゃん。」