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目覚めたら最強の魔法戦士だった ~学校のクラスで異世界転移〜 (略称:めざまほ)  作者: 今野よーよー
めざまほ第三部 黒騎士ユウトを追え! ~サトル転生篇~
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第二話 仲間から頼られるサトル

 目を潤ませて僕を誘惑してくるリンゴ。


「い、いや、僕にはリナがいるし」

 慌てふためいて誘いを断ろうとする僕。


「サトル君のいた世界とは違って、この世界は多夫多妻制なんだよ。

 複数の恋人がいて普通なの。

 子どもは村で育てるんだよ」


「そ、そうなの?」と僕。


「だからね、リナもきっと許してくれる。

 一緒にいよう?」


 そうして、僕はリンゴと一夜を共に明かした。



 その晩、僕は前世時代の自分の夢を見ていた。


 夢の中にいたのは、高校を出て就職して3年目、会社を辞めようか迷っている時期の僕だ。



 孤独! 僕を締め付けるのはどこまでも広がる孤独だ!


 人づきあいと言えば、会社で他の社員と通り一遍の挨拶を交わすだけ。

 プライベートでは、付き合っている彼女はいるが、表面上の付き合いだよ。

 彼女はキリスト教の信者で、結婚するまではキス以上のことをさせてもらえないし。


 誰からも飲みや遊びに誘われないし、こちらから誘う気力もない。

 一人きりでこれからも生きていかなきゃいけないのか。


 それに、世の中には面白いことなど何もない。

 僕を熱中させるものなど何一つない。

 音楽にも小説にもテレビにもゲームにも飽きてしまった。

 音楽を聴いても小説を読んでも、広がるのは灰色の世界。

 味気ない。僕は味覚を失ってしまったのではなかろうか?


 僕は「死にたい」とmixi日記に書いた。

 その頃は、mixiが全盛期だったのだ。

 4年前にログインしたきり、ずっとほったらかしだったmixiの日記。

 すると、翌日に僕の高校の先輩であるIさんからメールが来た。

 Iさんは文学が好きで、地元の大学の文学部に進んでいった。


「命短し恋せよ乙女だぜ。


 (美人かどうかは知らないが)彼女もいることだし、(それは実に素晴らしいことじゃないか)誰からも誘われない日は、(おれはむしろラッキーだと思ってるけど)一人でバルザックでもスタンダールでも(どちらもほんきで読んだことはないが)コーヒーを飲みながら読めば、21歳の男としては上等すぎるほど上等だと(うん、俺が勝手に思ってるだけかもしれないけれども、いや、世間的にみてもだと思うなやっぱり)思うぞ。


 ただ、芸術家を少しでも志すならば、(高杉晋作のように、)面白くなきこの世をおもしろく(するのが芸術の役割ではなかったか)ぐらいのことを言っても、いいのではないか?


 あまりにストレートすぎる(コーヒーに砂糖を入れるという行為をしないという意味のストレートではないが、あくまで)のは、レトリックが効いてないという点で、(本当にすぐれた詩人は、率直な表現がすでにもうアンビバレントであり、コンプレックスであり、レトリックなものではなかったか?)いけてないと思うぞ。


 心の微妙な振動がそのまま言葉になるように、(これはいいことを言い過ぎているのだろうか?いや、これぐらい言っても、罰はあたるまい)、そうなるように、詩人は(それは人間一般に当てはまることなのだろうが、ここはレトリックを考えて、あくまで詩人を主語にしておこう)生きていかねばなるまいぞ。」


 僕には、僕より年下の彼女がいる。

 その彼女はまあ彼女なんだけど、うわべだけの付き合いだよ。

 世間で恋人がするようなたわいもないおしゃべりをして、キスをして、ただそれだけ。

 心の深い部分での結び付きなんてないんだ。


 「面白くなきこの世をおもしろく」?

 そういう心の持ちようみたいなのは嫌いだ。

 世界はこちらがどう思おうと、淡々と進行していくものなんだよ。


 僕は週末に恋人と会った。

 僕は言った。


「俺、もうそろそろ死のうかと思っている。

 一応、君には言っておこうかと思って。」


 恋人は言った。


「死んじゃだめ。私が悲しむ。」


 彼女はそう言ってぽろぽろと涙をこぼして泣き始めた。

 僕はひどくびっくりした。

 自分がここまで彼女に思われているとは知らなかったからだ。


「分かった。死なないよ。」


 僕はそれからも生と死の境目で何となく生きていた。

 生きる意味も見出せず、孤独なままで。



(……はっ。)


 目が覚めた。嫌な夢だった。

 隣ではキャミソール姿のリンゴがすやすや眠っている。


 昼間は魔王軍征伐のための作戦会議をしながら、リンゴと毎晩を共に明かした。

 リナとはまた違って、恥じらいのあるリンゴが愛おしい。


 この世界は本当に夢のようだ。

 ここのところ、毎夜リナやリンゴと共にいるが、そのことによって僕の孤独が消えていく。



 ある日、シマダ達と話していた時のこと。


「なぁ、シマダ達はなぜ地球からこの世界に来たんだい?」

 気になっていることをそれとなく聞いてみた。


「ああ、俺たちは友達のユカがブークモールの世界にさらわれてしまったから来たんだよ。

 ユウトから俺たちへのラインにブークモールへと繋がるサイトのURLが載っていて、『俺は一足先にユカを救いに行く』って添えて書いてあってね」

 シマダが答える。


「その後、ユウトとユカは魔王軍に捕まったらしい。

 二人はサトルと負けないくらい魔法の力があって、それで魔王軍に目をつけられてしまったんだ」

 チャゲが続ける。


「スミスの話では、今頃、二人とも魔王軍に洗脳されて、手先として戦っているという話だぜ」

 ダイゴがため息混じりに言う。

 スミスはこのエリアの魔王征伐軍のリーダーだ。


「そうなのか……」と僕は言って沈黙した。


「いや、俺たちはそこまで暗くなってはいないんだよ。

 魔法がまた使えるのは、嬉しいしな。

 嬉しすぎて、ウレシマダ」

 シマダがおどけて言う。


「また使える?」と僕が聞くと、

「ああ、僕達は惑星ババロアという、ブークモールとは違う異世界で魔法を使って戦っていたんだ。

 その後は地球でもちょっと使う機会があったけど」とチャゲが答えた。



「お前ら、村の近くにドラゴンが現れた!

 被害が出る前に狩りに行くぞ!」

 突然、部屋のドアを開けてスミスが現れ、声を張り上げた。

 村中に響き渡るような大きな声だった。


「うっひょう!

 今日はドラゴンのステーキだな。

 素敵なステーキでウレシマダ」とシマダ。



 ドラゴンは10メートルはあろうかという巨体だった。

 獰猛な目つきで眼光鋭くサトル達を視界に捉える。


「ゴォォ…!」

 ドラゴンが火を吐き、草原だった辺り一面は火の海と化した。

 メラメラと燃え盛る炎。

 身体のあちこちが燃えるように熱い…!


 皆、臨戦態勢に入り、魔法を唱えるために集中を始めた。



路上の格闘者(ストリートファイター)!」

 ダイゴが格闘ゲームのキャラクターを召喚して攻撃する。

 3Dポリゴンのキャラクターが殴りかかるが、ドラゴンの厚い皮に阻まれ、ダメージを与えられない。


魔法集積弾マジックザギャザリング!」

 シマダとチャゲの合体魔法だ。

 エネルギーの弾が高速でドラゴンに襲いかかり、傷を負ったドラゴンは呻き声を上げた。


「ていっ!」

 そこに、スミスが大剣で攻撃する。

 バスターソードの切れ味は鋭く、ドラゴンの傷を更にえぐる。


雷帝の紅き咆哮(サンダーラッシュ)!」

 ドラゴンがひるんだ隙に僕が魔法を唱えると、雷撃がドラゴンを貫いた。

 ドラゴンはその場で突っ伏して動かなくなった。


 ドラゴンから一撃も受けない、僕たちの完全勝利だった。


「やっぱ、サトルの魔法はすげーな」

 ダイゴが意気揚々と言う。


「あの威力の魔法をあの速さで出せるのは天才だよ!」

 感嘆しながらチャゲが言った。


 仲間から頼られるって、こんなに嬉しいことだったんだ…!



 リナが産前のための専用の部屋に入ってから1か月が経ち、リナとサトルの間に子どもが産まれた。子どもは村で責任を持って育てると言う。


「これから、また毎日そばにいようね」とリナ。

「そうだね」と僕。


「サトルはリンゴと二人で寝ていたんでしょ?

 3人で寝るのも面白いかもね」とリナが楽しそうに言う。


 ブークモールの倫理観に驚きながら、僕は「それは楽しそうだね」と返した。



 子どもが産まれた次の日、スミスが村の魔王軍征伐隊の全メンバーを召集した。


「魔王軍が占領している城塞都市イミンドゥンが、現在、警備が手薄との情報を得た。

 1週間後にイミンドゥンに攻め込む。

 産後のリナも回復魔法によって、1週間後には戦える。

 征伐軍を20のチームに分けよう。

 俺のチームは、俺、リナ、リンゴ、レーン、シマダ、チャゲ、ダイゴ、サトル!

 他のチームのメンバーは…」

 スミスがメンバーの名前を次々に言っていく。


 レーンは金髪の髪と青い眼、小ぶりな胸が特徴の20歳の女の子だ。「小ぶりな胸が特徴」って、俺の目もヤラシイな。リンゴと毎晩相手しているうちに、自然と女性の胸に目が行くようになってしまった。


「よろしくね!」

 レーンが挨拶する。


「こちらこそ!」と応えておいた。

 こんな風に爽やかに挨拶するのは、小学生時以来かもしれない。



 イミンドゥン攻めは、モンスターとの戦いを除けば僕にとって初戦となる。

 少し緊張してきた。


「緊張しているんだね。

 今夜、仲良ししようね」

 リンゴが小声で誘ってくる。


 それを聞きつけたリナが「ずるーい。私が休まなきゃいけない間に。でも、仲良しするなら、楽しんでね」とリンゴと僕の前で笑顔を見せながら話した。


 ブークモールでは、じめじめした嫉妬のような感情はないらしい。さすが、多夫多妻の世界!


 レーンが僕達を見ながら、羨ましそうにしていることに僕はその時気付いていなかった。



 一方、僕達から200kmは離れているスルドサガ城にいる"ユウト"は、サトル達がイミンドゥンに向かうことを伝令から聞くと、重い腰を上げた。

(イミンドゥンに俺も行こう…! 殺れるな、俺? 彼らは想像上の人間なのだから…!)

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