●第二部最終話● それから
あれから三か月が経った頃……。
「私、アイドルを辞めることにしたの。
前からやってみたかった音楽の世界で生きるわ」
埼玉のとある駅前で、サングラスとマスクで顔を覆ったミウがタイソーに告げる。
「本当に!?」
タイソーは驚く。
「うん。
シンガーソングライターに私はなるよ。
今まで書き溜めていた曲もあるしね」
タイソーは思い出す。
二年前、テレビで歌うミウの姿とその歌唱力に一目ぼれした時のことを。
ミウの歌声は、可愛らしく、また、圧倒的な熱量をもって胸に響いた。
「それに、アイドルを辞めれば、タイソーと付き合えるから」
そう言ってミウは頬を赤らめた。
「えっ?」
ミウの言葉に驚くタイソーの頬に、ミウはそっと接吻した。
☆
あの後、内紛を収めた宇宙警察からユウト達は感謝された。
お礼に、3年B組の生徒達は、自分の好きな夢を見られるという錠剤を10錠ずつもらった。
ユウトはその錠剤を使い、思い思いの夢を見た。
サッカーのプロ選手になっている夢を見たり、大道芸人としてステージに立っている夢を見たり……。
錠剤はあと一錠残っている。
どんな夢を見ようか。
宇宙警察の改ざんにより、刃物を振り回す事件を起こしたアイドルは、アクマによる恐喝で事件を起こしたことになった。
逮捕されるアクマ。
余罪でネット上においてアイドル達に脅迫めいたメッセージを送り続けていたことも明らかになった。
(俺は、生き生きと楽しそうに歌い踊るアイドルが許せなかった。
あまりにも、自分のいる世界と違いすぎて…….。)
アクマは留置所で歯ぎしりした。
「アクマ戦もユウトは大活躍だったな」
教室の休み時間、ダイゴが笑顔で言う。
「スーパーマリオがクッパを三万回倒したくらいの功績だな。
シマダも嬉しすぎてウレシマダ」
シマダはいつでも冗談が好きだ。
「睡眠学習も結局二週間くらいしか出来なかったから、あまり効果は無かったね。
これからは夏。
受験も天王山だ。
勉強しような、ユウト」
秀才のチャゲが現実に引き戻す。
「俺は高卒でもいいかなー」
ダイゴがぼそり。
「がたいがいいダイゴなら、建設業とか向いてるかもね」とチャゲ。
「しかし、また魔法が使えない生活だな。
魔法が使えた方が何倍も楽しいよ」
寂しそうに言うユウト。
しかし、ユウト達は知らなかった。
あと数ヶ月もすると魔法が身近になり、モンスターが生息している摩訶不思議な世界に地球がなることを。
☆
「ユウト君、今日の夢は二人で世界各地を旅している夢を見ない?」
放課後、学校近くの公園のベンチに座りながら、ユカはユウトに聞いた。
「いいね。
良かった、丁度あと一錠残っているんだ」
「じゃあ、また夜に夢の中で会いましょう」
ユウトは周りに誰もいないことを確認すると、そっと口づけを交わした。
その晩の夢の中、ユウトとユカは二人で色々なところを旅した。
ギリシャ、イタリア、オーストラリア、中国、インド、ブラジル、アメリカ!
二人は弾けるような笑顔で旅を楽しんだ。
「生まれ変わっても二人でいようね」
ユウトとユカは夢の中でもキスをした。
リアルな世界と変わらない、甘く切ないキスだった。




