●第六話● 文化祭スタート!
刃物を振り回したニュースのアイドルはクロマかアカマに操られているのではないかと、ユウトがシャノに話したところ、目下調査中とのことだった。
多分クロマの仕業で、おそらくは邪悪な感情を持った人間がそばにいて頼んだのだろう。
クロマはその人間の感情を吸ってエネルギーを蓄えているだろうから、彼らと戦う時のために訓練に精を出してくれと、そんな話をシャノからされた。
学校がある日の放課後は訓練に明け暮れる日々。
チームの模擬戦だけではなく、タイマンでの模擬戦も何度かあったが、ユウトは負けたことがなかった。
シャノのアドバイスを活かして戦い、ほぼ無傷で連勝することができた。
タイマンの模擬戦で印象深かったのは、木口君とナカムラの戦いだ。
木口君にとっては昔、自分をいじめていた相手との因縁の戦いだ。
「炎鞭!」
ナカムラの炎鞭が木口君の身体に絡みつく。
「木口、お前をいじめていたことは悪かったよ。
だが、勝負はその話とは別だ。
大・炎舞撃!」
木口君を炎が包み込む!
ゴオゴオと燃え盛る炎……!
炎はやがて消えたが、木口君はまだ立っていた。
「そっちのターンは終わったね。
大・雷波撃!」
空気を裂くような雷鳴の鋭い音がする。
「うぐっ……!」
雷の強力な一撃でナカムラは倒れた。
ナカムラのいじめを受け続けていたが負けなかった木口君はメンタルのタフネスが成長していた。
そのタフネスが魔法への耐久力に繋がっていた。
見事な勝利だった。
☆
そして、また土曜日になった。アカマとクロマを見かけなかったか、聞き込みを開始した。
聞き込みを始めてから3時間ほど経って他のチームに疲れが見え始めても、マリとモエコのチームは精力的に活動していた。
「尻尾が三本ある猫を見ませんでしたか?」
マリがマンションのインターホン越しに住人に聞く。
「いや、見てないよ」
若い男性の声がする。
「ありがとうございます」
そのマンションを離れ、モエコはため息をつく。
「なかなか見つからないなぁ。
でも、言い出しっぺの私が頑張らないとな」
「モエコちゃん、あそこにある一軒家にも聞いてみようよ。
まだ聞いてないはずだよ」
マリが一軒家のインターホンを押す。中から出てきたのは40代くらいに見える女性だった。
「尻尾が三本で真っ赤な猫?
うちの息子が一週間前に拾ってきたわよ」
「ビンゴ!」
高声を上げたモエコ。
「それ、ウチで飼っていた猫なんです。
ちょっと待っていてくださいね。
また来ます!」とマリが伝えると、女性は「ええ…」と言ってうなずいた。
☆
「もうそろそろ、アカマの飼い主がうちに来るってよ。
お前のこと、返さなきゃいけないな……」
タイソーがうなだれて言う。
「宇宙警察の追っ手か、クロマの操っている人間か……。
いずれにせよ、クロマの野望を阻止するまでは私はここを離れるつもりはない」
「本当かい?
それなら嬉しいけど……」
「しかし、タイソー達を危険に晒す訳にはいかない。
危険な場合には、私はここを出て行く」
「俺と俺の家族のことを考えてくれてありがとな、アカマ」
それから10分後、インターホンが鳴らされ、ユウトとモエコとマリが来た。
シャノと相談し、万一の時のために魔力が最も高いユウトも一緒に来ることにしたのだ。
二階のタイソーの部屋に三人も上がりこむ。
「……という訳で、僕らと一緒に来てもらえませんか?」とユウトが聞くと、
「断る。
私はクロマを止めるまでは、ここを離れない」とアカマが強い口調で答える。
「では、クロマを捕まえるまで、私たちと行動を共にするのはどうでしょう?
それまでは、宇宙警察のもとにあなたを返さないことをお約束します」
地頭の良いマリが機転を利かせて提案した。
「……。
確かに、お前達と一緒にいれば、クロマも捕らえやすくなるかもしれない。
よし、お前達と行こう。
いいな? タイソー」
アカマが尋ねる。
「……ああ。
一週間だけだったけど、アカマと一緒にいれて良かったよ」
「世話になったな」
しんみりとアカマが言う。
「最後に一つだけ、また願いがあるんだ」とタイソー。
「何だ?」
「『俺を好きになる』というミウさんにかけた魔法を解いてほしいんだ」
「いいのか?」
「知り合うきっかけをもらっただけでも十分だよ。
連絡先も交換できたしね。
俺の力だけで振り向かせてみたいんだ」
「分かった。
お前の気持ち、受け取った」
しめやかにアカマが言う。
タイソーはにっこりとほほ笑んで見せた。
☆
今日は学校の文化祭!
午前中はクラスメイトの佐藤愛、佐々木篤史、工藤遊人、後藤ゆかりによるバンド演奏のイベントがあった。
ユウトにとってはよく分からない音楽だったが、髪で目まで覆い尽くしたフロントウーマンのサトウのボーカルは鬼気迫るものがあり、バンド演奏も迫力があった。
「すごい良かったよ!
最高のオルタナティブロックだよ!」
熱い男であると同時に、3年B組きっての音楽フリークであるクロサワがその演奏を褒めちぎる。
いいな。
俺も良さが分かる人間になりたかったよ。
ユウトは思った。
在日韓国人のクラスメイトであるハン・ソンイと彼女の親友である水谷奈央、K-POPのファンである虹村洋子と砂田美樹によるチーズタッカルビの屋台も出店されていた。
「初めて食べたけど、旨いな、これ」
口をホクホクさせながらユウトが言う。
「とろけそうなチーズがトレビアーン!」
一緒にいたシマダも破顔一笑しながら、食べるのに夢中だ。
「こんにちは、ユウト君。
これからユカのダンス部の催しに行くんだね」
ユカのイベントに行く途中で、エレーヌに偶然出会った。
澄んだ青い目がユウトを見つめる。
「そうだよ」
「私、ユウト君のこと、諦めた訳じゃないからね」
見つめられてユウトはドギマギした。
肩まで伸びた金髪がまぶしい。
「ふとんが吹っ飛んだ!」
沈黙の後、突然エレーヌがダジャレを言い出す。
さすが、ダジャレ好きのエレーヌ。いつダジャレを言うか分からない。
ユウトは思わず笑ってしまった。
「じゃあね!」
エレーヌは明るく手を振って去っていった。
午後の二時からユカ達ダンス部のイベントが始まった。
ユウトはこのイベントをとても楽しみにしていた。
ユカがアップテンポの音楽に合わせて、大きな胸を揺らしながら踊る。
衣装もお腹を出すセクシーな衣装で、ユウトはその色気に参ってしまった。
そして、二曲目が始まった……!
そこへ、ドーン!と凄まじい爆発音が耳を突いた。
身体が焼けるように熱い。
突然の爆風だ!
校舎は破壊され、焼けただれた柱がそびえ立っている。
「ユカ、大丈夫か1?」
ユウトが叫んだ。




