●第五話● アクマのたくらみ
土曜日、ユウト達8人はダイゴの家に集まった。
クロマとアカマを捕まえるための作戦会議だ。
「クロマとアカマの写真を見せてご近所中を回って聞いて回るってのはどう?」とモエコ。
「そうだね。
シャノさんとミント先生も埼玉のこの市周辺にいるはずだって言ってたからね。
クロマとアカマの魔力をこの市周辺で感知しているんだって。
ただ、魔力感知器の精度はそこまでじゃなくて、正確な場所は分からないらしいけど」
チャゲは人の話をよく聞いている。
ユウトはというと、そんな話すっかり聞き逃していたのだ。
「でも、なんでこの辺りからその猫達は動かないんだ」
ダイゴが不自然に思って聞く。
「それは、この二匹は力がまだ弱いってシャノさんが言っていたでしょ?
推測するに、力が弱いうちは遠くに行くことができないんじゃないかな」
チャゲが理路整然に説く。
「よしっ、この二匹の写真を持ってこの辺り中を聞き込むぞ!」
威勢よくダイゴが言う。
その後、二人一組で住宅地図をチェックしながら、一軒一軒聞いて回った。
ユウトはシマダとペアだった。
「そんな猫、知らないわ。
尻尾が3本あるなんて、あなた達、ふざけているんじゃないの?」
「すみません、そう思うのもごもっともです」
「マダム、まだ無意味だと言う」
「シマダ、ダジャレはいいから!
失礼しました〜」
シマダと一軒ずつ聞いて回ったが、インターホンに出てくれるのなら良い方で、大抵はインターホンを押しても留守か居留守だった。
体育館に帰ってみると、他のチームも収穫はなかったようだ。
「なんか、一日を棒に振った気分だな」とユウト。
「効率良く見つける方法はないのかな?
防犯カメラをハックするとか」とダイゴ。
「そんなこと、多分、シャノさんとミント先生が真っ先に試しているよ。
多分、電気機器やカメラには映らない、特別な魔法でもかけているんじゃないかな。
二匹が遠くへ行けないのは、その特別な魔法で魔力を消耗するためかもね」
学年一の秀才のチャゲの推理が光る。
「明日もこうやって一軒ずつ回って行こうよ。
今のところ、それしか方法がないよ」
とモエコが言うと、「ほうほう」とシマダが冗談で相槌を打つ。
翌日の日曜日も同じことをしたが成果はゼロだった。
ダンス部の文化祭へ向けたレッスンがあるため、ユカはこの日は参加しなかった。
この日の夜、「ごめんね、ユウト君。今日は参加できなくて」との通信が自宅にいるユウトのもとに来た。
「大丈夫だよ。
それより、今日家に帰ってからニュースを見ていたら、ライブ中に女子アイドルがいきなり刃物で自分の腕や周りのアイドルを切りつけはじめたんだって。
幸いにも死者はいなかったみたいだけど、恐ろしかったよ」
「ねえ、ユウト君、それってもしかしてクロマやアカマの仕業かも」
「そっか!
人を操る魔法が使えるってシャノさんが言っていたもんな」
「明日の学校でシャノさんとミント先生に相談してみようよ」
「おう!」
☆
「アカマ、これがSaitama48のメンバーの実名と写真だよ」
「よし、呪いがかからないようにプロテクトの魔法をかけよう」
タイソーとアカマはアイドルが刃物で切りつけるニュースを観た後、これはもう一匹のルーシュであるクロマの仕業であると特定し、アイドルの実名と顔写真を片っ端から集め、それぞれのアイドルにプロテクトの魔法をかけていく作業を行っていた。
アカマやクロマが呪いやプロテクトの魔法をかけるには、実名と顔が分からないといけないのである。
徹夜で作業を行い、学校に行く時間になる頃には表立ってアイドルと名乗る活動をしている女性のうち、実名を公表しているほぼ全員にプロテクトの魔法をかけることができた。
「やったな。
アカマ、ありがとう。
今日の学校の授業は爆睡決定だな」
タイソーがパソコンとのにらめっこで赤くした目で言う。
「これくらい、どうってことない。
お前の熱い気持ちが私のエネルギーになる。
私が地球に来たのはね、クロマの横暴を止めるためだったんだよ。
クロマは邪悪な感情が好物だ。
地球全体を邪悪な感情で埋め尽くして、どんな魔法や武器にも負けないエネルギーを手に入れることがクロマの野望なんだ」
「それは防がなきゃね。
前から思っていたけど、アカマは熱い奴だな」
「いや、クロマを憎んでいるだけさ」
言い終わるとアカマは丸くなり、タイソーがパソコンの電源を切る頃にはアカマは眠っていた。
☆
「どういうことだ、クロマ?
お前の呪いが効かなくなったぞ。
俺の嫌いなあのアイドルが刃物を振り回して回りのアイドルを傷つけたニュースは愉快だったのだがな」
アクマというハンドルネームを持つその男はクロマをにらみつけて言った。
「うーん。
僕に敵対する奴らの仕業だと思うよ」
クロマの声は能天気にも聞こえるような明るい声だ。
「それより、これを見てよ」
クロマがそう言うと、目前のディスプレイに高校生の男女が映し出された。
「こいつら、僕らを追っているみたいなんだ。
それでね、こいつらの学校に忍び込んだら、こんなのがあったんだよ」
腕時計がディスプレイに映し出される。
「一つくすねてきたんだ。
アクマにあげるよ」
そうクロマが言うと、頭上から男物の腕時計が床に落ちてきた。
「なんだぁ?
ただの腕時計じゃないか」
「まぁまぁ、その腕時計をつけてごらん。
そして、僕が君のおかげで蓄えた力の一部も君にあげるよ。
さぁ、外に出て、誰もいないところで激・邪波撃と叫んでごらん」
アクマは重たそうに腰を上げ、クロマと共に外に出た。
30分ほどすると、アクマ達は帰ってきた。
「すごいな、これは」
興奮冷めやらぬといった表情でアクマが言う。
(この男は魔法の才能が抜群にある。
そして、この男の凄まじい邪気は、僕の力を蓄えるのに役立ってくれた。
アカマも僕らを追っている奴らも殺れる…!)
「時計を渡したお返しに、僕らを追っている奴らを一掃してほしいんだ」
「ほう?
俺にお願いか?」
「君もひと暴れできるチャンスだよ」
アクマはクロマの言葉に対しては無言でスマホを開き、ユウト達の学校名で検索した。
「文化祭が近々あるようだ。
これを惨劇の祭りにしよう」
アクマは邪悪にほくそ笑んだ。




