●第四話● ユウトVSシャノ
「行くぞ、ユウト! 小・風撃!」
小・風撃? なぜ、シャノはそんな弱い魔法を…?
小・風撃のダメージは微々たるものだった。
「神・雷げ…」
「氷撃!」
ユウトが神・雷撃を詠唱し終えるよりも前に、シャノの氷撃の氷のつぶてがユウトに次々と突き刺さる。
「くっ。ならば、この一発でケリをつける! 核心烈撃!!」
ユウトの特殊魔法である核心烈撃だ。
しかし、通常なら大威力でどんな相手でも一発で倒してしまう核心烈撃を喰らってもシャノはビクともしない。
「な、なぜなんだ!?」
「スキあり! 大炎撃!」
シャノの魔法が炸裂する。ユウトのアーマーの残りHPは三分の一以下になってしまった。
「くそっ!」ユウトがうめく。
ユウトがよろめいている間に、シャノが大・雷破撃をお見舞いする。
「うう…」
ユウトはその場に倒れた。
シャノの勝ちだった勝負を終えて、シャノはほっとしていた。
(ユウトは自分の能力に慢心しているところがあるから、勝っておきたかった。これでまた訓練をしっかりやってくれるだろう。)
「俺が最初に小・風撃を使った理由が分かるか」
ユウトは首を横に振った。
「ユウト、お前の魔法は強く、しかも詠唱時間も短い。
その短い詠唱時間よりも短い詠唱時間で魔法を使い、ユウトに隙を作るために小・風撃を使ったんだ。
等級が「小」なら詠唱時間は最短だし、数ある属性と形状の中でも、風撃は詠唱時間の短さが一、二を争う。
こんなふうに、一対一の闘いでは、強い等級の魔法ばかりを使うのではなく、弱い等級も織り交ぜながら闘うんだ」
そう言って、シャノは倒れているユウトが起き上れるように手を貸した。
「それと、お前の道化の臨終には一つ弱点がある。
あれは特殊魔法しか無効にできないから、通常の攻撃魔法の前ではなすすべがない。
だが、強力な魔法であることには変わりはないが…」
「シャノさん、俺の核心烈撃が効かなかった理由は何なんですか?」
起き上がったユウトが聞いてみる。
「んー、それは企業秘密だな」
シャノははぐらかした。
「しかし、訓練もしばらくしていないのに、模擬戦でここまで立ち回れるのは大したもんだ。
みんな、ユウトに拍手を!」
温かな拍手の音がユウトを包んだ。
「俺、一発もシャノさんにダメージを与えていないじゃないですか」
「いや、バトルスーツなしで動きや身のこなしが機敏だった上に、核心烈撃を詠唱し終わるのはすごいよ。
まあ、企業秘密でダメージ0だったんだけど」
「うーん、俺もその企業秘密を知りたいな」
「じきに分かるよ」
今日一番の笑顔を見せるシャノ。といっても、ちょっとニッコリしただけだったが。
いつも無愛想なシャノが微笑むところを見て喜ぶ女子生徒のファンがいることをシャノは知らない。
☆
その後もユウト達の訓練は続き、今日の訓練はお開きになった。
そこに現れたのはロリッ子美少女のミント先生だ。
「みんなー、遅れてごめんね。クロマたちの情報を調べていて遅くなったわ。
一つのメルヘン!」
辺りが花の甘い良い匂いで満たされる。
生徒たちの体力や傷痕が回復していく。
「体力が回復した生徒から帰っていいよ。
休日の間は、部活動や休養に励んでくれ。
クロマ達の奇襲には気をつけること。
腕時計を肌身離さずな。
防水だからお風呂でも大丈夫だぞ。
また来週からよろしく」
金髪の頭をポリポリ掻きながら、ぶっきらぼうにシャノが言う。
今日の訓練はためになったな。
次からの訓練でも色々試してみよう。
ユウトに闘志が湧いてくる。
「疲れた、クタクタだよ」
チャゲがそう言うと、
「疲れた、クワガタだよ」
とシマダが言う。
「俺さ、ルーシュの二匹を一番最初に見つけようって目論んでるんだ。
ユウト、チャゲ、シマダ、土日は俺の家に来ないか。
あ、ユカも一緒にな」
肉体派で体力はあり余ってるダイゴから提案があった。
「ちょっとー、私のユカが行くなら、私も行く!」
モエコが傍から話に入る。
「なら、私も」とマリ。
「決まったな。この8人でルーシュの二匹を追おう!」
ダイゴが意気込む。
「エイ、ヒラメ、オー!」
シマダが気勢を上げ、謎の発破をかけた。
「エイ、ヒラメ、オー!」
8人で円陣を組みながら叫ぶ。
「そこ、気合入れるのは良いけれど、気をつけるんだぞ」とシャノ。
「大丈夫でーす」とモエコが元気良く返す。
(まあ、今のところ、ルーシュの二匹は力もつけていないから、遭遇してもそこまでの危害はないだろう。頑張れよ!)
シャノは胸の内で彼らに期待していた。




