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――――恭介くん、写真興味ない?
――――バンド忙しいんですけど。
これが僕と千咲先輩の初めて交わした会話だった。
千咲先輩は小柄でかわいくて割と校内でも有名なタイプで、僕は一つ下だが見かけたことはあった。
そして、写真部の部員として部員を集めていた。
僕はバンドを組んでおり、ギターの練習で放課後は忙しかった。
千咲先輩は僕を見ると、よく話しかけてきた。
高校生のときは金髪でピアスもあけていたため、ある意味、僕も目立っていたというのが理由だろう。
僕は根負けして、バンド優先の条件で写真部に入部をした。
―――ありがとう!
屈託なく笑う千咲先輩の表情は子供みたいにかわいくて、僕が彼女のことを好きになるのに時間はさほどかからなかった。
写真部の活動は一週間に三回。
そのうち二回は校外に出て各自気になった写真を撮り、週の最後で持ち寄り部員全員でお互いが撮った写真を評価し合うものだった。
僕は千咲先輩と校外に二人で写真を撮りに行くことが多かった。
もちろん、どちらから言い出したわけではなくそれが自然の流れだった。
そして、部員は年に一回開催する全国高校生写真コンクールの入賞を目指していた。
―――恭介くんって構図うまいよね。今年こそはあたし二回戦突破したいんだよね。
僕が写真部へ入部して半年が過ぎ、コンクールの応募締め切りまであと三ヶ月を切ったある夏の日のことだった。
千咲先輩は去年一回戦で敗退していた。
――――ねぇ、恭介くん、今度ギター弾いてよ。
前触れもなく千咲先輩は言った。
――――嫌ですよ、そんな上手くないですし。
――――そうだ!今日、部活終わったら家に行ってもいい?
――――え、なんで今日なんですか。今度って言ったじゃないですか。
――――だって、今日あたし誕生日なんだもん。誰も祝ってくれないんだもん。
ねぇ、いいでしょ?
僕は今日、誕生日なんだ、と心の中で思った。
淋しそうな表情をする千咲先輩を放っておけるはずがなかった。
その日、僕は家で千咲先輩にギターを弾いた。
彼女は僕の弾いているギターを嬉しそうに聴いていた。
これ弾けるかな、とゆずやL'Arc-en-Cielを言ってきた。
僕は弾けないのは断ったが、できる限りリクエストに応えようと弾いた。
千咲先輩の嬉しそうな表情、
そして、僕たちはキスをした。
僕は幸せだった。