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授賞式の会場は独特の雰囲気だった。
会場に着くと浅見は打ち合わせがあると言い、関係者以外立ち入り禁止の場所へと行った。
僕の周りには高校生の子たちがたくさんいて、会場の壁一面には応募された写真と過去の受賞作が飾ってある。
受賞した子の両親や関係者が写真をみて楽しそうに話しをしていた。
懐かしい、と感じた。
あの日、僕は審査員特別賞の受賞でこの会場にいた。
だけど、他の人の写真はもちろんだが自分の撮った写真を見た記憶はない。
見たくなかったし、賞なんでほしくもなかった。
僕が撮った写真は、水たまりの中に虹が写っているものだった。
あれ。
僕は立ち止まった。
僕の写真を見ている女性がいた。
その後ろ姿には見覚えがある。
見覚えはあるが、違う、と頭では理解をしている。
背格好は似ていたが、服装は清楚な膝丈ぐらいのスカートを履いていた。
髪の毛の長さも、違う。
その女性は僕の視線に気がついたのか振り向いた。
大学生くらいだろうか、髪の毛は茶髪にしていてストレート。
はっきりした目鼻立ちに涙袋。
僕はその女性に面影を感じた。
「ごめんなさい、邪魔でしたか?」
女性は申し訳なさそうに言った。
声が、似ていると思った。
ーーねぇ、もう一回。いいでしょ?
僕は心の中で、いいよ、と呟いた。
「…あの、どうかしましたか?」
「いえ…、なんでもないです」
僕はなんとか声を振り絞った。
「綺麗な写真ですね、この虹。貴方ですよね、片桐恭介さん」
彼女が僕の名前を呟く。
やっぱり似ている、と思った。
聞いていたい声だが、身体が聞くことを望んでいなかった。
僕は何も言えずに下を向いていると彼女は会釈をして、別の写真に目を向けた。
そんな彼女の後ろ姿を僕は見ていた。
似ている。
だけど、違う。
別人だ。
僕は心の中で必死に違うを繰り返した。