表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ギルドマスターにはロクな仕事が来ない  作者: 非公開
日常業務編2
33/113

033 幕間 オマールの夢


ダンジョンギルドの酒場。

いつものように依頼を達成した後の打ち上げで。

オマールと一緒に酒を飲んでいる。


「結構、最近は真剣に悩んでるんだよな。冒険者止めて騎士団入るか」

「はあ?」


お前、騎士団なんか嫌だって以前の会話では言ってなかったか。

いや、確かにそう言っていた。

金と自由が欲しいから、騎士団入りなんてウンザリだと。


「言っておくけど、今すぐ――アルバート王の時代にじゃないぜ。ギルマスの時代になったら、だよ」

「ああ」


やっとオマールの言っていることを理解する。

要は、ギルマスが王になったら、今の生活を捨て騎士団入りもやぶさかではないと言いたいのか。

コイツ、何かギルマスの事好きだよな。

私自身、ギルマスの性格は好ましいものと思っているが。


「騎士団長まで割とすぐだと思うんだよなあ、実力的にも親密的にも」

「最近の騎士団長候補は有望株だと聞いたが……ギルマスに絞められてからだが」


なんで騎士団長候補がギルマスに殺されかけた話が、市井まで伝わっているのだろうか。

貴族――王宮のお喋り雀たち、うるさすぎやしないか。

まるで、もっと酷い何かを隠しているかのようだ。


「別に騎士団は一つじゃないぞ、当国は。そいつ無視しても騎士団長にはなれる」

「騎士団長になりたいのか」

「ガキの頃の――三男坊で鬱屈してた頃の夢だったんだよ。忠誠を誓った男に――王に認められて、騎士団長にまで引き上げられるのが」

「……」


初めから市井の出で、医者の長男だった私には、よく分からん話だ。

思えば――親の仕事も継がず、錬金術に傾倒して冒険者となり、親不孝をしているものだ。

ふと田舎の故郷を思い出す。


「おい、聞いてんのかアルデール」

「聞いてますよ、オマール」


大分酔ってるな、オマール。

そこまで胸襟を開いてくれるのは嬉しいが、絡み酒は好きじゃないぞ。

私は眉をしかめる。


「お前はどうするんだよ」

「私? お前には言ってなかったか? 次のギルマスになるよ」


確か、一度オマールだけには酒飲んでる最中に言ったはずだぞ。

ギルマスに指名されて、次のギルマスになると。


「それは知ってるよ。その後だよ、その後」

「ギルマス辞めてその後か? その後は――そりゃ錬金術に没頭するさ」


すまん、親父。

何、長男は親不孝してるが、次男が後を継いでくれるからいいだろう。

私は勝手な事を想いながら、オマールに答える。


「王宮錬金術師にならねえの?」

「王宮錬金術師?」


想像もしてなかったオマールの言葉に、疑問符をつけて答える。


「ほらさあ、国家で秘匿されてる錬金術の類にも触れられるから、お前向きじゃないかと思って」

「そりゃ、確かに興味はあるが……」


考えもしなかった選択肢に、心が揺らぐ。


「俺、お前と同僚なら上手くやっていけそうな気がするんだよなあ」

「今も上手くやっているだろう」

「そりゃそうだ」


オマールは笑いながら酒を飲む。

……王宮錬金術師か。

それもアリだな、ただ……オマールの奴、ギルマスが王家を継ぐ前提で話してるよな。

ギルマスが国から逃げる可能性を考えていないのだろうか。

そこだけを気にしつつ、アルデールは同じように酒を飲んだ。

出来れば、オマールの夢が叶うように祈りながら。




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ