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自殺の末  作者: jouken
3/3

知らない子

遅くなりました。

もう少し投稿ペースあげたいんですけどね。

「じゃあ、始めるぞ。」

そう言ってそいつはコンピュータを再びいじった。するとプロジェクターに映像が映し出された。


俺は東京で産まれた。親は共働きで、父親は一流企業と呼ばれる会社に勤めていたこともあって、何不自由なく暮らしていた。何不自由なく、というのは金銭的な面だけであり、両親と共にいる時間は1ヶ月に1時間あるかないか。1時間あったとしても口を開けば「勉強しろ。お前は俺と同じ様に社会にしっかりと貢献してもらわなくてはならない。遊びなんかやってる時間があったら勉強しろ。遊びは何の役にもならない。唯の自己満足だろう。」の繰り返し。何度こんなセリフを聞かされたことか。

しかしその頃、俺はそのセリフに洗脳されていった。純粋な心から、か。幼稚園にいる頃は同じ地区に住む母方の祖父母に面倒を見てもらっていたが、小学受験で見事受かり、登校が始まってからは「大人の事情」とやらで面倒を見てもらうことも無くなり、そして俺には次第に1人の時間が増えていった。朝、昼のご飯は夜中に親が買ってきたコンビニ弁当。夕飯は帰ると机の上に置いてあるお金でコンビニに行き買っていた。GPS付きの携帯を外出時には持つことを強制され、不用意に出掛ける事を禁じられた。至福の時間なんて強いて言えばコンビニでの買い物だがそれも時間と共に____。今思えば地獄だったと思う。



ん?

「一度休憩だ。休み抜きだったからな。俺が疲れた。」

なるほど、今まで無言だったあいつの唐突なセリフのお陰で映像が止まったことに対する疑問がすぐに解けた。

「やはり食欲は湧かないんですね。」

「そりゃあそうだろう。食っても意味ないからな。

それよりもこれを食べとけ。」

そう言って差し出されたのは見た目丸薬の様な。禍々しいオーラを放っている、黒い小指の爪サイズの粒5つだった。

「これは?」

「黄泉の国と呼ばれるのは地獄と天国だけだ。黄泉の国に行けば霊魂は安定する。が、ここは死んだ者の来る場所ではあるが天国でも地獄でもない。霊魂を安定する作用もないからここに霊魂を安定させるにはこの丸薬を飲めばいい。まあ、まだ消滅期じゃないから大丈夫ではあるけど、飲んで損はないからな。」

言われた通りに口にその粒を全て放り込んで噛んでみた。ガリッという音と共に口の中にレモンの様な酸っぱさが広がる。

「酸っぱ!」

「ふはははは、この前来たやつも叫んでたな。」

「まあ良いですよ、それよりもさっきの話ですが霊魂?消滅期?」

「生きてる頃に幽霊って呼んでたのは殆どこの霊魂ってやつだ。その霊魂を安定させないでこの空間に漂うとある一定期間で消滅する。その一定期間のことを消滅期って呼ぶ。これでいいか?説明は。」

「は、はい。あ、眠くなったりとかは?」

「ならないぞ。だから、まあ疲れはするけど少し休めば治る。」

「なるほど……、あ続きいいですか?」

「せっかちだな。じゃあ行くか。行っておくが俺には睡眠も食事も必要だからな。」

どういうことだろう……改めてこいつは何者なんだ?

「ほれ、始まるぞ。」

やっと酸っぱさが消えそうだ。

そして映像が再び始まった。



俺が家ですることと言えば勉強だけ。それでも元の才能からか、学年のトップクラスで1位を取ることは出来なかった。そして、1位を取れない俺を両親は蔑んだ目で見下した。「なんで、出来ないんだ。」幼さ故の純粋さによる謎の使命感から俺はもっと勉強した。が、それでも1位を取れるのは年に10回あるテストで2回あるかないか。そして、小学6年の時。俺は恐らく初めて親にお願いをした。

「今の学校を辞めさせて下さい。その代わり今度は隣区の有名な中高一貫校に受かるようにします。」

最初のうちは渋っていた親も珍しく自分から意見した俺を尊重してくれたのか、認めてくれた。

そして俺は以前よりも猛勉強し、無事次席合格で入学することができた。その結果を親に伝えた時も両親は特に喜ぶこともせず、ただ単に「一位を取れ。二位以下は価値が極端に落ちる。もっと勉強しろ。」

当時の俺は認めてほしかったのかもしれない。親に、そして愛に飢えていたのかもしれない。


入学してからも小学時代と特に人間関係などは変化することはない。友達はいなく、クラスでは読書か勉強。話し掛けてくるような物好きは居なく、その状況から変わることはない。しかし、学校行事などで班を組むときは地獄だった。会話には入れず、というよりもグループを組んでからすぐに「お前は勉強してるんだろ。」などと進行からは外された。まあ、元々意見なんて聞き入れてもらえるなどと思ってもいなかったが。

レベルの高い学校だからか、中々順位は上がらなかった。そしてその頃、両親の夫婦関係が劣悪になっていて、お互い家に居る時間が減った。仕事をしているのか、情事なのかその頃にも今でも分からない。しかし、哀しいという感情よりもテストの結果を見せる必要がないという安心が先行していた。既に家庭は崩壊していたのだろうか。


普通の学校なら卒業や受験で忙しい三年になっても変わることはなかっ___!

誰だ、こいつは。

今までプロジェクターに映し出された映像を見ながらならちゃんと記憶を思い出せていた。が、この子に関する記憶がない。

プロジェクターに映し出されている映像に映っているのはポニーテールで眼鏡を掛けている女の子。その映像では終始笑顔で友人と接している。正直、お世辞抜きで美人だ。

クラスに居たら確実にリア充組でカーストじゃあトップに君臨するレベルだな。

これは同じクラスなら覚えてるはずだ。

誰だろうこの子は。

この子が鍵を握ってるのか。

自殺の。

宜しくお願い致します。

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