表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
86/180

83話

 ええと、鈴本と針生が中庭に当たる湖の真ん中の浮島に行って帰ってこない。

 一応お昼には全員帰ってくるように言った訳だからそろそろ帰って着ていい頃なんだけども。ちょっと手間取ってるんかね。

「どうする?『交信』してみる?」

「いや、やめましょう。舞戸さん。みなもさんと会話できるんですよね」

「会話、っていうか……まあ、みなもが手に入れた情報は私にも分かるよ」

 みなも自体が何かを効率的に発信できるわけではないんだよね。

 あの子喋る訳じゃ無いし、やるとしてもボディランゲージぐらいなのだ。『共有』している私でも、なんとなくぼんやり考えてることが分かる、程度だし。

「構いません。それでちょっと鈴本達の様子を見てもらえませんか」

 そうね。『交信』は相手先の都合によっては迷惑になりかねない。

 その点、みなもがちょっと覗くだけなら鈴本達の邪魔になるとは考えにくい。

 よし。みなもー、みなもー、ちょっといいかーい。

 みなもと感覚を『共有』してみると、ポーチの中に入るらしく真っ暗なので、ポーチの蓋をそーっと開けてみた。が、真っ暗。

 ……どういうこっちゃ?

 きょろきょろしてみるけど、真っ暗。ええっと、みなも。これはどういう事なの。

 ……聞いてみたら、なんとなーく、針生がなんかやった、って事は分かった。ええと、うん。よし。ポーチの外に頭をだしてもらって、それで針生の腰のあたりをつんつんとつついてもらった。

『ん?……あ!そっか!みなもちゃんがいたんだ!』

 おお、針生の声が聞こえるぞ。よし、針生、今の状況を喋れ。

『えーと……もしかして、みなもちゃん、今舞戸さんに俺の声伝えられる?』

 みなもはもふもふ頷いて見せる。うん。この子、向こうからこっちへの一方通行の通信機としては使えないことも無いのよね。しかも割と高性能な。

『ん。じゃあ、舞戸さん、聞こえてたらみなもちゃんの右手動かして』

 ほいほい。みなもを直接操作して、右手を振ってみせた。

『おー、聞こえてるんだ。うん。じゃあ、えっと、今の俺の状況だけど、鈴本の影の中にいます』

 ……あー、はいはいはい。そういや針生はそういうスキル持ってたな。

『で、鈴本は今、神殿とエンカウントしてる』

 ……はいい?何故そうなった!というかそれ、大丈夫なのか!?

『真ん中の浮島に行こうとしたら急に落っこちちゃってさあ、見事に滝壺ダイブしちゃって。で、まあ、一応報告するとあの滝の下、神殿だったわー。あはは、それは分かってるかな』

 わ、笑い事じゃねえぞっ!

『それでさ、どうすればいいんだろ。とりあえず鈴本が今神殿の人に何も知らない振りして色々聞いてるけど、それは今までにあの変な本に舞戸さんが聞いた話の裏付け位かな。神殿は勇者を召喚してて、世界崩壊の元凶を倒してもらおうとしてる、ってさ。鈴本はちょっと召喚に失敗して離れた所に召喚しちゃったんだろう、とか言ってる。騙す気満々で笑える。あははは』

 うん、ホントに『アライブ・グリモワール』さんが居てよかったなあ。あの本ホントに良くできた本だから。

『で、俺達、神殿とどう接すればいいのか分からないから情報が欲しいんだよね。神殿に加担するふりしちゃっていいの?これ。鈴本には頑張って一人になれるように頑張ってもらってるけど。俺からは鈴本に情報伝達できるんだけど、そっちから俺には情報が伝達できないんだよね』

 ……さて、どうしたもんか。

 みなも他、メイドさん人形達は受信はできるけど発信ができないんだよなあ……。

『交信』は全員共通の回線しか無いから、針生にかけるともれなく鈴本にもかかっちゃって、今神殿と話してる時にそれはまずいだろ、っていう。……あ。うん。つまり、針生から鈴本に『交信』の腕輪を外してもらうように頼んでもらえばいいのか。

 みなもを動かして、針生の腕を探す。影の中だっていうだけあって真っ暗だ。(私が直接見てるんなら『暗視』が聞くんだけど、みなもの視界を見せてもらってるだけだからそういうのが効かないんだよなあ……。)

 そしてやっとこさ針生の腕を見つけて、その腕輪もやっと見つけた。

 あとはみなもにそれをぺしぺし叩いてもらって、気づいてもらえるように促す。

『あ、もしかして鈴本にこれ外せって?できるかなあ……。うん、一応言ってみる』

 それから暫く静かになった。針生が鈴本と何らかの手段で会話しているらしい。

『うん。外してもらったから、『交信』してもらってOK』

 お、そりゃ良かった。そしたら一旦離脱だ。あの真っ暗空間を見つめ続けるのは気が重い。


「針生が『交信』していいってさ。鈴本は今神殿の人とエンカウント中。鈴本へは鈴本の影に隠れてる針生が色々伝えてくれるってさ」

 離脱して心配そうに私を観察していた皆さんに言うと、それぞれ『交信』の腕輪を起動させた。

「針生さん、聞こえますか」

『うん、聞こえるよー』

「とりあえず、今ジョージさん相手に分かったことだけ伝えます。とりあえず、俺達は絶対に神殿に帰還の儀式をやらせちゃダメです」

『もしかして儀式やっても全員帰れる訳じゃ無いって事?』

「そう。だから僕たちは神殿もしくは勇者を妨害する必要すらあるってこと」

 勇者が元凶をなんとかして帰って来ちゃったら、神殿は儀式を行わざるを得ないからね。

『じゃあ、敵対する?』

「いや、馬鹿でしょ。分かりやすく敵対する必要なんてないでしょ?わざわざ警戒させる必要ないじゃん」

 ……。うん、まあ、正しいんだけど、羽ヶ崎君はもうちょっとなんつーか、オブラートにだな……。

『んー、じゃあ、一切契約とかせずに、でも特に悪い印象は受けさせないまま上手く離脱すればいいの?』

「それがベストでしょうね。羽ヶ崎さん何かありますか?」

「いや、できれば早く舞戸に『アライブ・グリモワール』から情報を貰ってほしい。まだ分からないことが多すぎるでしょ、今。分からないまま動くのはちょっと危険」

 ……。今は動かない、のが、ベスト、か。うん。それ、難しいよね。神殿側としてはなんかしか動かしたいだろうし。

「鈴本には無理難題言うけど、そういう事ってできる?」

『んー、一応言ってみる』

 そしてまた暫く静かになり、そして針生は戻ってきた。

『体調不良の振りして休む場所貰ったみたい。そしたら時間稼ぎにはなると思う。そしたら舞戸さんはできるだけ急いで本から色々聞いて、そっちで動き方の結論出して、伝えて。じゃ、一旦切るね。よろしく』

 ……うん。一応、一応……よくやった、というべきかな。




「そもそもなんで滝に落ちるとかいうヘマしたの、あいつら」

 さあ……。そうね、それがまず不思議だよね。あの2人が落ちた、って、つまりスキル発動するMPが切れたか、スキル妨害系の何かをくらったか、位しか考えられないんだけど。

「それはこっちで考えましょう。とりあえず舞戸さんは大至急あの本と話してきてください」

「それはいいんだけど、具体的には何聞けばいいの?」

 色々あって色々こんがらがってますよ、わたしゃー。

「まずは、元凶、っていうのが何なのか、ですね。次に、勇者とは何か、勇者は今何人いるか、現在の勇者の動き、とかももし分かるようなら。それからあとは、神殿の事をできるだけ多くお願いします」

「ん。了解。じゃあ皆さんはその間に英語科実験室の人たちをお願い。『共有』」

 英語科研究室の人たちの事は皆さんに任せて、アライブ・グリモワールに頭突き。またお話開始です。




『ふむ、何やら焦っているようだが』

 早速ですがお話開始だっ!

「ええと、とりあえず手短に言うと、答え、分かった。ジョージさんの事でしょ」

『うむ。正解だ。もっと早く分かるかと思ったのだが』

 メタ推理までしてこの様です。ごめん。

「で、色々聞いた。神殿の儀式じゃ全員帰れない、ってことも」

『あれはその儀式を行った時に居た異世界人と、汝らの言う教室とやらしか拾わぬからな。取り残されればそれきりよ』

「で、いきなりなんだけど、私の仲間が湖の真ん中に行ったら落ちちゃって、それで神殿に居るらしいの」

『ふむ、成程、あれに近づいたか』

 あれ、とは……うん、浮島の事かな。

『あれは魔力を際限なく吸うからな。仕方あるまい。あれに近づくのなら、汝が適任だろうて』

 ……。うん、えーと、それは……ええい、それはスルーだっ!後で聞く!後で聞くから!

「で、それで、勇者について私達全然知らないんだよね」

『ああ、勇者か。……ふむ。勇者とは、神殿が契約した異世界人だな』

「……契約」

『左様。勇者となる異世界人は、神殿と契約する。勇者はこの世界を救うために元凶を消す。そして、神殿は勇者に武具を、力を与え、元凶を消した暁には元の世界に帰るための手段を与える。そして……勇者の命を器ごと、担保とするのだ。無論、あいつらはそのような言い方はせぬがな。死なない為の措置、とでも言っているのだろうが。それは一部正しくはあるが、根本は結局、勇者に歯向かわれない為の措置に過ぎぬ』

 ……とんだ悪徳商法じゃねーかそれっ!!


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ