77話
そして寝て起きて朝です。おはようございます。
因みにまだメイドさん人形達は寝ている。
私もメイドからメイド長に昇格したわけだけど、別に今までと何か変えたりするつもりもないし、のんびりやっていこうと思います。
朝ごはんはパン食。しかしそろそろパンのストックも無くなってくるのでパンを焼く所からです。
こういう時に一気に大量に作っておけば後々楽なので、これでもかという量を生産しますよ。
これにはメイドさん人形達が居た方が楽なので、おねむの所悪いけど起きてもらって手伝ってもらおう。
……パン生地捏ねる作業がメイドさん人形達の場合全身運動になるので……パン生地と戯れているようにしか見えない。本人っていうか本人形達はいたって真面目なんだけども。
パンが焼けた頃丁度よく皆さん起きてきたので朝ごはんですよ。
焼きたてパンとベーコンとオムレツと野菜サラダで朝ごはん!いやー、やっぱり卵があるっていいよなあ、としみじみ思うね!
……いやね?元々朝がっつり食べるのって私だけだったのですよ。
皆さん夜更かし型生活してたらしく、朝はそんなに食べられなかったのです。
しかし異世界生活になってからは早寝早起きになってしまい、必然的に朝食べないと昼まで持たなくなり、更には皆さん連日肉体労働な訳で、その分消費カロリーがえらい事になり……。
うん。健康的でいいよね!
「昨日はなんだかんだ有耶無耶になっちゃいましたけど、多目的ホールはどうしますか?」
吹奏楽部が占拠してるアレな。うん、確かに、多目的ホールが無いと私達帰れなさそうだしなあ。吹奏楽部との和解は諦めるにしろ、ホールは欲しい。しかし、向こうはホールを渡す気はないという。
「ええと、一応帰る方法は説明したんでしょ?」
「した。したが、聞く耳持たず、ってところだな」
ぬう、生きるのに必死で周り見る余裕が無いって事なんだろうか?少しでも状況が変わったら団結できなくなる位、彼らはギリギリの生活をしているのかもしれない。
「単純に攻め入ってぶんどるだけならできるが、それをやったら彼らは死ぬだろうな」
まあ、そうだよね。拠点っつうか、住居いきなりなくなって生きていける方がおかしい。
「やっぱり吹奏楽部の人たちを移住させたらいいと思う」
ね。どう考えてもホールって、居住空間としては性能良くなさそうだよね。
「けど、あいつらに移住しろとか言ったら、というか、土壁の向こう側行ったらまた攻撃してくるでしょ、あいつら」
ですよねー。移住しろって交渉しに行っても、聞く耳持たずなのは目に見えてるんだよね。
「じゃあ、自発的に移り住んでもらえばいいんじゃないですかね」
……ほー?
社長曰く。如何にも偶然あった天然の要塞が偶然すごく居心地良くて、で、移住することにしました、みたいな事になったら非常にありがたい、との事。
つまり、私たちが住居を用意したとばれないように用意して、で、そこに移住してもらおう!という。
「やっぱり彼らのネックは戦闘力が低いのに食料を狩りに頼らざるを得ないということだと思います」
社長は地図上に色々書きつつ説明を続けていく。
「この多目的ホールを中心としたこの円の内側には実のついた木が殆ど無くて、で、ここから外側にはまだ実のついた木が残っています。だから、彼らの行動範囲はここから内側ということになります。だから、住居を用意するならここから外側ですね。元々あったのか新しくできたのか判別がつきにくいはずです」
流石の社長である。
もうここら辺の地理、把握してるらしい。こわい。
「成程な。で、どうやってそこに誘導するんだ」
「簡単ですよ。このラインから外側の果樹を全て伐採するんです。それから、誘導したい方向に向かって果樹を舞戸さんが生やせば、彼らはそっちに進むしかなくなりますから」
お、おうっ、私!?
……あ、そういえばできるわ。花村さんから『萌芽』と『生長』のスキルを貰ってるからね。
只、私の場合は無尽蔵に植物を生やせるわけじゃなくて、種とか苗とか、増やす植物の一部が必要になるけど……そんなもの、幾らでも手に入るね、ラインから外側の果樹全部伐採したら、さ。
「或いは、川を誘導してきて彼らの行動範囲を狭めるのも手ですね」
「できるのか?」
「羽ヶ崎君、どうですか?」
「やってみればできるんじゃないの?僕もそこそこ魔法とやらに慣れてきたし」
そ、そうなの!?もう君達治水工事できちゃうの!?なにそれ怖い!
「それからここら一帯のモンスターを掃討すれば彼らも行動しやすくなります。……これは彼らの食料を減らす事にもなりかねないんで、諸刃の剣ですが。他にも、地形変えてモンスターが入りにくいエリアを作るのも手ですかね」
……うん。思った。私、思ったよ。
……社長が味方で良かったよ!
ということで、全員で大体住居を作る場所を決めて、そこに移動。その間私はひたすらケトラミさんの背中の上でメイドさん人形達の視界を全部『共有』して、監視カメラ統制室みたいなことをやって、索敵に努めた。
それぐらいしかできる事が無いのよね!でもこれで私は自分の背後も見えるからな。不覚は取らんぞ、多分。
「大体この辺りか。じゃあ社長、よろしく頼む」
「はい。『アースウォール』!」
そして社長が直径1㎞程の、少し歪んだ円状に……つまり、天然っぽく岩石の壁を展開して、とりあえずこの内部にモンスターが入れないようにした。
「じゃあ、俺達はこの内部に残ったモンスターを掃討してくるから。社長と舞戸はこの辺りの住居化を進めてくれ」
そして他の皆さんが出かけちゃうと、社長は『アースウォール』の応用で家を作り始めた。土壁というか、レンガというか、そんなかんじだね。
私はというと、そこら辺からもいできた果物から種を出してひたすらメイドさん人形達と一緒に間隔開けて地面に埋めて……。
『萌芽』!ぽんぽん、と種が芽吹く。
そして次に『生長』で次々とその芽を育てて、大きな木にしていく!
このまま育って某大楠みたいになっちゃうとちょっと果物の採集が難しくなるので、某となりのアレみたいな育て方は流石にしなかったけども。
しなかったけども、メイドさん人形達と一頻り木を育てたら、皆でそこら辺を走り回ってこう叫ぶのである!
「夢だけどーっ!夢じゃなかったーっ!」
メイドさん人形達もこういうのに付き合ってくれるあたり、ノリがいいなあ。
家が大体できた頃、他の皆さんも帰還。お昼ご飯はちゃっちゃと済ませて、住宅地化を再開。
ということで、まずは相談。
「ええと、床は畳の方がいいかな?土の床は流石にきついよね?」
「いえ、絶対に日本家屋はアウトですよ。面倒でもフローリングにしてベッドにしないと、この世界の世界観にそぐわなくなって怪しいですから」
ということで、針生は『木材加工』で床をフローリングにしたり、椅子とか机とか作ったり。
鳥海と加鳥はひたすら『金属加工』でやっぱり家具とか道具とかを作っている。
私はというと、やっぱりというか、お布団縫ったり椅子に張る布作ったり、と言った事をやっている。
その脇でメイドさん人形達もひたすら布織って布裁って、といった事や、家具作りのお手伝いをしている。いやー、びっくりしたんだけど、メイドさん人形達の中には木工が多少できる子もいたんだよね。
パーツ磨くとか、組み立てるとかはかなりメイドさん人形達が頑張ってくれた。
君達、どんどんできる事増えてるんじゃないかね?
家の完成は明日明後日に持越しって事にして、晩御飯にしました。今日は親子丼です。なんか鶏肉久しぶりだなあ。
そして起きて朝ごはんはパン食、そしてまたしても建築再開っ!
今日はもう仕事が無い人ができてしまった。鳥海と加鳥である。金属部品って限られる上、2人もいるもんだからもう終わってしまったらしい。
「じゃあ、今日は針生と舞戸が建築で、他は治水と果樹の伐採だな」
「治水は僕と社長と……ヤバくなった時用に刈谷、来てよ」
「あ、了解でーす」
う、うわあ……まじで治水とかやっちゃうのか。
私はそこら辺に明るくないんでそういうのに詳しいらしい社長と羽ヶ崎君が頑張ってどうにかしてくれるんだろうなぁ、って事しか分からん。
「俺と角三君と鳥海と加鳥で果樹の伐採か」
「あ、君達。果樹伐採にメイドさん人形を連れて行って。この子達が果実の採集すると思うから」
うっかり果実が放置されたら勿体ないことこの上ないので、メイドさん人形部隊をそっちに派遣することにした。
「あ、もしかして木材もまだいる?」
「薪もあった方がいいでしょうね」
「あ、だったらケトラミさんに運んでもらうといいよ」
そして、木材も勿体ないのでケトラミさんを派遣することにした。
「……ところでさー、舞戸さん」
「はいな」
ひたすら木材を凄まじい勢いで加工しつつ、針生が話しかけてきた。このスピード、恐ろしいけど、私のお裁縫もこんな感じなんだろうなあ、傍から見たら。
「こんなに至れり尽くせりな家立てて、吹奏楽部の人たち警戒しないかな」
……。
「するね、多分」
「まずくね?」
「まずいね」
「住居じゃなくて居心地のいい洞穴とか用意した方が良かったんじゃないかなー、って思った、んだけど……」
……。うん、そうね。社長、折角岩石動かせるんだから、そのまんまそれ使えばいいんだよね。
といっても、ここまで作っちゃったんだから、とりあえずは完成させよう、ということで作業続行。
警戒されない方法については後で考えればいいよね、うん。
皆さんが帰ってきたらなんか凄く泥まみれなのが居た。
うん、つまり、川の治水してた人たちだね……。
「川が一旦氾濫したりしたけど何とかなりました」
何とかなっちゃったんだ。とりあえずは『お掃除』して綺麗にしました。ぽふぽふ。
「これで吹奏楽部の人たちは東には動かないと思います。南には岩山作ってきましたんで、南にも動けないはずです。西はどうせ進んでいっても断崖絶壁ですし、そもそも果樹が西には無いんで、西に行くメリットがありません。そうなると吹奏楽部の人たちがここを見つけるのは時間の問題、ということになります」
怖いよ、怖いよ君。何だね、岩山作ってきた、って!
「いや、それなんだけどさ。俺さっき舞戸さんと話してたんだけど、こんなに至れり尽くせりな家がぽんとあったら吹奏楽部の人たち流石に警戒しない?」
針生がそう言ったら、皆さん沈黙。
「……するな」
「するでしょうねえ」
さて、どうするかなあ。
……人って、1つ問題を看過すると、次にある問題に気づきにくいんだよね。
1つ解決しただけでなんか満足しちゃうというか、まあ、なんていうのか、そういうのがあると思うんだよ。
……だから、吹奏楽部の人たちにも、1つ問題を解決してもらえばいいのだ。そうすれば彼らはこの住居を勝ち得たものとして、安心して使ってくれると思う。
……というわけで、またローズマリーさんだなあ、多分。




