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5話

 はい、夜中です。皆さんは寝てます。私は現在、鹿の皮と対峙しております。

 肉は食う。食いきれない分は燻製にする。骨は何かに加工できそうなので取っとく。角も然り。モツは食えるのは食って、食えないのは土に埋めて還す。そして!……皮です。

『解体』スキルの恩恵は計り知れず、なんと鹿の皮を丸っと綺麗に外すことに成功。

 その後『お掃除』で皮に付いた余分な脂肪とか肉とかを綺麗さっぱり落として、現在、ミョウバン・食塩水溶液に漬けている所であります。

 私の記憶が正しければ、これで皮を革にできるはず。


 そして、骨には……実験台になってもらう。

 ええとね、私の『お掃除』スキルは、『要らないと思った物を取り除く』スキルなんだと思うんだよね。

 ただし、肉の筋取りがうまくいかなかったように、境目が曖昧だったりすると、成功しない、らしい。

 逆に、境目を明確に頭の中で意識して行ったら。

 ……どうなるかは試してみないと分からない!それいけ!『お掃除』!




 結論。二次元的加工しかできませんでした。

 ええとね。つまり、板状にして、それを円形にする、とかはできるんだけど、複雑な立体物にできない、という。

 でも、板状にするにも厚さを変えたりはできてるわけだし。……練習次第、かなあ。

 しゃーない。そろそろ日付が変わりそうなので寝よう。おやすみ~。




 おはようございます。遭難三日目。楽しくすごしましょう。

 という訳で、例の如く私が一番早起きだ。皆疲れてるんだろうなあ。

 朝っぱらから肉も無いよなあと思いつつ、他に食べる物が芋と果物しかないので、しょうがない。

 細かく刻んだ鹿肉とジャガイモのスープ仕立てと果物で朝ごはんです。

 米が恋しいぜ。




 ご飯を作っている最中に鈴本が起きてきた。

 とりあえずあいさつ代わりにハタキでお掃除だ。ぽふぽふ。

「怪我の具合、どう?」

「ああ、治った」

 ……ダウト!んなわけあるか!と思ったら、見せてくれました。

 マジで治ってた。痕は残ってたけど、マジで治ってるよ、コレ。

 異世界万歳。


 他の人も起きてきた順にハタキではたいて綺麗にしていく。

 角三君は大層驚いてた。はっはっは、まさか武器がハタキなんていう理不尽があるなんて思いもしなかったろう!はっはっはっは……。




 そして朝食。朝から肉はしんどくないか聞いてみた所、この程度なら大丈夫との事だったので、明日からものんびり出していこう。

 それにしてもあれだ、ビタミン類が欲しい。果物があるから大丈夫かもしれないけど、野菜も欲しい。

 取ってくるのは私じゃないので言わないけど。




 そしてまたしても皆さんはお出かけになりました。

 角三君も即戦力らしい。まあ戦士だしね。

 そういえば昨日火傷してる人がいたけど、ついに火を吹くトカゲみたいなのと遭遇してしまったらしい。

 精々ライターの火が十数個っていうレベルらしいから重傷にはなりにくいみたいだけど、あくまでも気を付けていただきたいものだ。

 くれぐれも無茶しないように、という旨を伝えて(どうせ守っちゃくれないが)見送った。

 ……さて、私は私にできることをやろう。とりあえず鹿肉の処理だ。




 とりあえず切って吊るして燻煙かけて、というだけの簡単なお仕事ですので、まあ歌いながらサクサク済ませましょう。

 残念ながら燻製器のサイズの都合上、何回かに分けないといけないけどしょうがないね。

 それから、『祈りの歌』を25分おきぐらいに掛けなおすのも忘れずに。


 またしても煙くなったので窓を開ける。

 いやー、風が気持ちいいです。周りは森って言っても、背の低い木も多いし、立木型のローズマリーとか、そういう腰のあたりまでの茂みとかも多く、割と見通しが効く。

 ……あれ。ちょっとまて。あれは……あれは、ローズマリー、だよな、たぶん。

 青紫の花も見覚えがあるぞ。うん。多分そうだね。

 ……ただの塩漬け肉に燻煙かけるよりも、いいんじゃないかな。

 ……ちょっと行って、取ってくるだけ!ちょっとだけ!ちょっとだから!




 念の為、包丁を持つ。現在私の装備の中で最も攻撃力が高い。しかしリーチは短い!

 これが届く距離って、多分私が死ぬ距離だな。

 ……ふ、不安だ。不安だがしかし、見える位置にあるのだ、ローズマリー。

 虎穴に入らずんば虎子を得ず。外に出ずんばローズマリーを得ず。

 よし。窓から出て、走って、一枝二枝取って、走って帰ってくれば大丈夫だろう。いける。多分いける。

 よし。

 レッツトラーイ!


 窓枠に足を掛けて、飛び出す。うお、ロングスカートが邪魔だ!慌てて裾を片手で持ち上げつつ、走る走る。

 ローズマリーの木まで付いたら、包丁で一閃。一気に一束ローズマリーを入手。

 そして辺りを警戒しつつ、走って戻る!窓枠へジャンプ!そしてそのまま室内へ!

 ……ゴオオオオオオオオオル!

 やった。やったぞ。私はやった。

 これで少しばかり、肉料理の幅が広がるんじゃないだろうか!

 早速塩漬け中の肉に使ってみよう。それで、これはもう少し漬けておいてから燻製にしよう。うふふふふ。やー、ようござんした。うれしいなー。うれしいなー。

 これであと、月桂樹とか胡椒とか、見つかればいいんだけどな。窓から見た感じそんなのは無いし、そうはいかないよなあ。

 ……諦めきれずに、ちらっと、ドアを開けてみることにした。

 大丈夫、大丈夫、だって私、この世界に吹っ飛んでから真っ先にドア開けたもの!

 という事でドアの外を見ていると、あまりの都合の良さにびっくりした。月桂樹と思しき樹が見えた。……距離にしておよそ10m。走れば、行ける。ちょっと葉っぱ毟って帰ってきてから調べればいいのだ!そうと決まれば全力前進だッ!

 行ってとって帰ってきました。窓枠超えなくていい分楽でした。

 香りとかは月桂樹……ローリエなんだけど、これはローズマリーほど自信が無い。

 月桂樹の仲間には有毒なものもあるらしいしなぁ。

 社長に『鑑定』してもらった方が良さそうだね。皆さんの帰りを待とう。




 いい加減肉と芋と果物だけってしんどいなあ、と思いつつ、それしかないのでしょうがない。

 炙った鹿肉と焼いたジャガイモでお昼にしようと思い、準備をしていたら皆さんが帰ってきた。

「お帰りなさいませご主人様方。お怪我は」

「それ、どうしてもやりたいのか?」

 鈴本が微妙な顔をしている。

 うん、ごめんよ。だって私、メイドだもの。

「で、お怪我は」

「ちょっと切ったぐらいだな。あ、あと社長が捻挫したか」

 ね、捻挫!?社長を見ると、確かに左足を庇って歩いているようだ。

 ええと、どうしようね。ああそうだ、化学実験室にはアホみたいにでかくなってしまったアロエの鉢植えがある。それを使おう。

 包丁でアロエの葉を切り取って、皮を削いて、透明な部分を患部に貼って、ビニール袋シートで縛って固定。これで少し良くなるんじゃないかな。というか、良くなれ。

 ワセリンよりも効くかもしれないので、実験がてら皆さんの切り傷にもアロエで対応させてもらう。これでもしワセリンよりも効きがいいようだったら、このアロエを株分けして増やしてくれようぞ。




 ということで手当ても無事終わり、ご飯ですよ。

 皆さんよく食べるなあ。毎日芋と肉なのに飽きないんだろうか。いや、飽きてるよな。ごめん。

 あ、そうだ。今のうちに月桂樹とローズマリーを鑑定しておいてもらおう。

「社長、社長、コレ鑑定して」

 ローズマリーの束と月桂樹の束を持ってくると、急に空気が固まった。

「……これ、どうしたんですか」

 社長が迫ってくる。

「窓から見えたんで採ってきた」

 やめろ、目が怖い。

「外に出たんですか」

 やめろ、目が怖い。

「5秒位なものです」

 やめろ、目が怖い!

「外に出たんですね?」

 やめてください!目が怖いです!お願いです!やめてください!




 怒られました。

 り、理不尽だー!じゃあ私はどうしろっていうんだ!ご飯を美味しくするのもメイドの役目だぞ!多分!

 ……というのも、まあ、うん。彼らの考えも分かるけどさ。分かるけど。私だけ何もしてないっていうのは、ちょっと。

 っていうのも結局は自分勝手なんだよな!能力が無いんだから何もできない訳なんですけれどもでもグワーっ!




 ひとしきり悶えていたら、なんと、お昼の後、ちょっとだけ外に出してもらえることになりました!

 角三君が増えたから、警戒要員に余裕が出たし、皆強くなったのでそっちでも余裕ができてきたんだそうだ。

 わーい!籠持っていくぞーっ!


 ちなみに鑑定の結果、月桂樹は月桂樹、ローズマリーはローズマリーでした。

 ただし、月桂樹はMP回復速度上昇、ローズマリーはMP回復の効果があることが判明。

 ……もしや、これは『ポーション』の出番かもね?


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― 新着の感想 ―
[一言] 塩を豪快に使いまくってるけど補充できるだろうか。
[良い点] 目が怖い!(嫌がる人もいなくはない) [気になる点] この時点では弓矢とか無いけど、暇な時間に投石とかしてたら生えたかも。 [一言] 他にはハタキの素振りか……(笑)
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