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67話

多少痛い表現があります。苦手な方はご注意ください。

 社長が教室に足生やすらしいので、まずは実験がてら、そこら辺でやって頂く。

「『ロックポール』!」

 ほう、成程、地面から岩石の柱が生えた。

「これで溶岩の下の地面から岩の柱を生やして、それで教室があるかどうか調べます」

 つまり、普通に柱が出てきたら教室がそこに無かった、って事で、教室があったら出てこないか、教室が持ち上げられて足生えて出てきたみたいになる、とな。

「問題はどこまで溶岩に耐久できるかなんですけど」

「そればっかりはやってみないと」

 そもそも、出てくる前に岩石の柱が溶けるとかいう事態もあり得るしなあ。


 という事で、羽ヶ崎君の復活を待ってまたしても挑戦。ホントにお疲れ様です。

「っとー、俺が居たのがあの辺でー、あっち向いててー、だから自習室はあの辺かなーって」

 穂村君の分かりにくいようで分かりやすい変な説明の元、大体ここら辺を持ち上げればいいんじゃないかという見当を付け直す。

 さっきまではもっと広範囲をやろうとしてたんだけども、流石にMPが足りないので、場所を絞ってやる事にしたのだ。

 ……うん、溶岩相手に何かする、って、びっくりするぐらいMP使うらしいんだよね。

 私の『お掃除』したかんじはそんなに木とかゴミとかと変わらなかったんだけども。

「じゃあここら辺から行きます。一応、教室が持ち上がったりすると溶岩が溢れてくる可能性もあるので、各自警戒してください」

 社長の警告を聞いて、羽ヶ崎君の後ろに隠れておく。逃げることができそうにない私は始めから遠くにいるか、こういう風に溶岩に対処できる人の後ろに隠れてるしかないのよね……。

「『ロックポール』!」

 溶岩流を見ていると、そこから岩石の柱が突き出し、数秒後には溶けて折れて、溶岩流に沈んでいった。

「一応成功ですか、これは」

「だな。この調子でいこう。MP大丈夫か?」

「大丈夫です。さっきまで何もやってなかったんで」

 言うや否や、社長は次々と溶岩の底から柱を生やし、教室を探し始めた。頑張れー。




 柱十数本目で変化があった。

「あれ、出てこない」

 柱を出現させる予定の位置に、柱が出てこなかった模様。

「……出てこないねえ」

 眺めて待ってみても、数回やってみても結果は同じ。柱は出てくる様子が無い。

「ねえ、これって、教室があるってこと?」

「いや、単に何かに引っかかってるだけかもしれないし」

 言いつつ、全員期待を抑えられずにわくわく見ていると、社長が一度に8本の柱を出現させて、一気にそれを持ち上げた。

 そして、遂にそれは姿を現した。溶岩の中に在ったにもかかわらず、全く焦げても溶けてもいない外観。それはなんとなーく、見覚えがある自習室であった。

 ……いや、私、なんか勉強しようと思ったら自宅のお茶の間か図書室の隅っこ派なので、自習室とか使ったことなかったのよね……。

 しかし、それに留まらない。教室が出てくるとき、勢い余って溢れ出た溶岩がこちらに向かって流れてくるのである。私は羽ヶ崎君が『アイスシールド』で溶岩を防いでくれた為無傷。他の人たちも避けるなりなんなりした模様。やっぱりこいつら人間か怪しいよなあ……。

 そして、そうこうしている間に溶岩で溶けた柱が耐え切れなくなり、ぽっきりと折れ、教室は溶岩の中にまたしても戻り……そしてまた溶岩が跳ね、全員回避なりなんなりし……。

 うーん、この方法、教室を見つける所までは行ったんだけども……柱が溶けるまでの数秒の間に、どうにか教室を溶岩の上から引っ張り上げなきゃいけないんだよなあ……。

 しかも、跳ねたり溢れたりする溶岩避けつつ。


「ええっと……僕が風魔法で教室浮かせられるかやってみる?」

「溶岩跳ねそうだから却下」

 教室を浮かべられる程の風だったら、まず間違いなく溶岩を跳ね飛ばしてくれるので、加鳥の風魔法案は却下。逆に、こっちに来る溶岩を跳ね返してもらう事は可能だよね。

「やっぱり僕が溶岩固める?」

「のが一番ですかね、今の所」

 という訳で、社長が教室を持ち上げておいて、その間に羽ヶ崎君がその下の溶岩を固める、ということで落ち着いた。

「じゃあ行きます『ロックポール』!」

「『アイスシールド』!」

「『イレイズビーム』」

 最後だけなんか打ち合わせと違ったけど、まあ、一応社長が教室を持ち上げておいて、羽ヶ崎君がその間に溶岩を何とか固めて、飛んできた溶岩は加鳥が消してくれた。うん、消滅させてた。

 という訳でなんとか、教室を溶岩流の上に持ってくることに成功!いえーい!


「ちょっと、早くその教室移動させてよ。僕のMP無尽蔵じゃないんだけど」

 そ、そうでした。今現在も羽ヶ崎君は氷魔法を使い続けて、溶岩が溶けださないようにしてくれてるんでした。

 この間にさっさと教室の中を探して、宝石を見つけて外に出てこなければなりません。

 という事で、全員で捜索開始。自習室の中に入っていく。と。……凄く変な光景がありました。

 人が、寝てる。




「うわー、なにこれ」

 針生が寝てる人をつんつんつつくけれど、彼らは一向に起きない模様。

「ええと、何かのスキルかなぁ?」

「……起きろ……駄目っぽい」

 皆が皆、つんつんげしげしやっても起きないので、もう起こすのは諦めることになった。

 今はとにかく、教室を移動させなきゃいけない。

 ……けど、教室を宝石にしちゃうと、中に居た人たちはそのまま外に出されてしまう。そして、そのままにしておいたら、溶岩の中に沈むことになってしまうのだ。

 しょうがないので、私以外の人たちが何とか、眠っている人たちを外に運び出す間に、私が教室の宝石を探すことになった。

 ……なんでって、私は人を持ち上げて運ぶだけの筋力も補正もないからだよっ!


 他の人たちが慌ただしく寝ている人たちの運搬をしている間、私は宝石を探しまくる。うーん、無いな、どこにあるんだろう。棚とかあればそこにあったりするんだけども……。

 探しまくっていると、一番奥の机の裏側に張り付いてた。何故こんな所に。中々見つからんわけである。

 よし、後はこれを持って外に出ればいい。人の運搬も終わったらしいし、他の皆さんはもう外に出てるみたいだ。

 私が最後かあ、いっつもこんなんだな。

 ……と思って、ドアを開けようとしたんですよ。

 はい。開きませんでした。

 ……WHY?




 と、とりあえず落ち着け!こういう時は窓から出てみよう!

 教室の窓にはカーテンがかかっていたので、シャッとカーテンを開けて窓の外を見てみたら溶岩でした。

 ……溶岩でした。

 赤く輝く溶岩です。めっちゃ溶岩です。何故だ。何故だ!

 あ、あれか、羽ヶ崎君のMPが尽きたのか。それでこの教室沈んじゃったのかな?うん、そんな気がする。

 けども、ここで困る私ではありません!ふっふっふ、私には『転移』があるのだ!ここから宝石を持ったまま外に『転移』すればいいって話よ!ふふふふふ!

 ……っていうのは置いておいて、まずはあれだ、情報確認からだね。何のための『交信』の腕輪だ、っていう。あー、いかんね、人間慌てるとすぐ色々と頭から吹っ飛ぶ。

「もしもーし、誰かー、この状況を説明してくれー」

『舞戸!お前、暫くそこに居られるか!?』

 しかし、なにやら鈴本からの返答は酷く焦ったような声だった。

「それはいいけど、どしたの」

『溶岩からでかいトカゲみたいなのが出てきた!現在、教室の天井を足場にして交戦中だ!』

 ……な、なんと。




 教室の天井を足場に、って事は、教室の天井が溶岩の上に出る位には底上げがされてるって事だろうなあ。羽ヶ崎君か、社長か。安定してるから羽ヶ崎君かな?だとしたら、MP節約の為に教室の天井だけ上に出る位に留めてるのかな?

 何にせよ、ここで私が『転移』なんてした日には、皆さんを溶岩に叩きこむことになっちゃうわけです。あー、よかった。先に聞いておいて。うっかり外に出てたらやばかったよ。危ない危ない。

 ……とりあえず『祈りの歌』と『願いの歌』を発動させておいた。……けど、羽ヶ崎君の『水鏡の歌』はいつまでたっても出てこない。あれが一番今回有効だと思うんだけどなあ。

 しょうがないので、私が頑張るしかないね。

 何となく、涼しげな曲を歌ってみると、案外すんなりと空色の模様が足元に浮かんだ。ふむ、目的やイメージがはっきりしてるからうまくいったのかな?

 ……で、この時点で私、やる事無くなってしまった。後は待つだけである。

 今回は教室のことも有るからしょうがないとはいえ、やっぱりなんというか、申し訳ないね。




 それから暫く待っていたら、やっと腕輪が光った。

「もしもし?」

『もしもし、舞戸さん、すぐに外に出てきて。回復役が足りない』

 ……えっ?


 急いで『転移』して外に出ると、教室が消え、私の手元にある宝石の姿になったけど、それはいいんだ。

 問題は、目の前にいる重傷人達だろう。

 全員火傷だの怪我だのが酷いけど、中でも酷かったのは羽ヶ崎君だった。焦げてる。つか、体が一部無い。

 それを必死に加鳥が『清風』で治してるみたいだけども。

 刈谷はどうしてるかっていうと、一番酷かったらしい鈴本を治して、そのままMP切れでぶっ倒れてしまったらしい。なんてこった。

「舞戸さん、『手当』で何とかなるかなぁ?」

 唯一の回復役となってしまった加鳥も消耗が激しいらしく、顔色が悪い。こいつもそろそろ限界か。

「切り傷とかならまだしも、とてもじゃないけど治せるようには思えない」

 生きてるかすら怪しいレベルなのだから、『手当』とかしている場合では無い。もっともっと、大掛かりなものが必要だと思う。

 そう、なんとなく、『鑑定』もせずにほったらかしておいたアレ、とか。

 ……この世界、薬事法とか、無いよね?というか、緊急回避が適用されるよね?

「針生!剣闘士大会の商品だった薬持ってきて!実験室の棚にあるから!」

「わ、分かった!」

 宝石を投げて実験室を展開させると、針生に霊薬を探してきてもらう。

 あれが何の薬なのかもわからんけども、賞品になるぐらいなんだから効いてもらわなきゃ困る。

「加鳥、薬来たら適当に何とかしてね。『共有』」

 そして私は私にできる事をします。多分、多分だけど、『共有』って、いろんな使い方ができると思うんだよね。『共有』できるのが意識とか記憶とか視覚とかだけじゃなくてもいいと思うんだよね。

 例えば、命、とか?


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