64話
と、なんだか色々と話し込んじゃったけども、ここらで私たちもひとまず行動しなければならない。
「じゃあ、『交信』には私が出るんで。時々縫った服持ってくるから」
「ああ、よろしく頼むよ」
ということで出発します。
色々と協議した結果、『交信』の腕輪は私が持つことになった。
何故かっつーと、うっかり戦闘中とかに『交信』が来ちゃうと他の人の場合出られなかったり、戦闘の方に支障が出たりしそうだからである。
その点、私は滅多なことで戦う事にならないし、こういう時に一番便利だよね、っていう事になった。
もし私と他の皆さんが離れてる時に『交信』が来た時の為に、化学部内では薄緑色の石の腕輪を9人全員が付けている。これでまあ……うん、私がまたうっかり攫われたりした時にも便利ですな。装備没収されなければの話だけども。
それから、時々縫った服をこっちに届けに『転移』してくることになりそうであるけども、こっちに来るときはお店の中に直接来ればいいんだから、まあ気楽なもんですな。
さて。これから私たちはまた探索の日々が始まる。
3Fは情報室・新聞部組に任せておくにしても、1Fは私たちが集めないといけない。
で、どうせ集めるんだったら北より南の方が近くていい。
ということで、このまま南西の教室を集めていくことになった。具体的には校長室とか、保健室とか。
あるいは、もっと南西に行っちゃえば体育館とかがあるんだけども……南西って、海だから……地続きになってればいいなあ。
……というか、その前に……校長室って、職員玄関の隣の事務室の隣あたりにあったんだけども……ええと、海の中、じゃ、ない、よね?……じゃないと、思いたい。
思いたいけど、マジで海の中だった時が嫌なので、海沿いの海岸を進む。
勿論、ケトラミさんが。……ケトラミライディングしているのは加鳥である。じゃんけんで負けた模様。
そして残った人たちは絶賛素潜り中。
海の中に教室があった時が面倒なので、一応海の中を覗きながら行こうという事になったのだ。
私以外の人たちは水中でも恐ろしくよく動けるようです。まあ、補正のお蔭なんだろうけども……。
勿論私に補正は無いので、メイドさん人形たちとお留守番である。
別に、泳ぐのが苦手だからじゃないぞ。補正が無いからだからな。
そして、お留守番には大事な仕事があるのだ。
そう。服作りだね。
これは大事な大事な、相良君達、そして、奴隷にされて地下オークションで出回る生徒たちのの生命線になるからね。きっちり作っていかねばならぬ。
それからしばらくしたら、ケトラミさんに乗った加鳥が『校長室』を見つけたので、全員に海から上がってもらい、『転移』。
波打ち際に校長室と、波と戯れるケトラミさん、そしてグロッキー状態の加鳥。お疲れ様です。
ま、まあ、これでまた教室が1つ集まったわけだし、中々好調なんじゃないでしょうかね?
そこからまたじゃんけんが行われ、今度は鈴本がケトラミライディングして走っていき、残りの人はまた素潜り、私は服職人、加鳥はぐったりしながらメイドさん人形と戯れる係。
なにやら加鳥、メイドさん人形の内の1体に矢鱈と懐かれてしまっているのだ。
特に何をするでもないんだけども、このメイドさん人形は加鳥を見つけると、つつかれにわざわざ出向いて行って、加鳥の側でまったりし始める。
そして、手持無沙汰になった加鳥がつつきだすと、満足げにつつかれているという。
……なんでしょね、これ。月森さんの所に置いてきた子たちもなんつーか、非常に個性的な……メイドさん人形の中では珍しくぐうたらしたかんじの子たちだったけども……うん、やっぱり、個性が出てるよなあ、初めのころに比べて。
なんだろなー、最近メイドさん人形さん達、矢鱈と、なんというか……まるで自我が芽生えたような……。
「……ねえ、もしかして自我が芽生えてたりする?」
念の為聞いてみたら、一斉に皆してこっち向いて、ぶんぶん首と手を左右に振りながら、『芽生えてない!芽生えてないよ!』みたいな顔をした。
……ある気がするけど、無いって言ってるんだから無いって事にしておこう……。
それからしばらくしたら、薄緑の腕輪が光ったので、受信。
『もう無理だ……合流してくれ』
何やら鈴本、グロッキーなご様子である。お疲れ様です。
ということで、同じく受信していた他の皆さんも海から魚持って出てきたので、魚は物理実験室に放り込んでおいてまた『転移』。
移動先は南国の海辺、といったかんじの場所でした。
ほうほう、木にマンゴーみたいのとかバナナみたいなのとか生ってるね。なんかライトグリーンとか蘇芳色とかしてるけどね!
そして、結構長距離を移動したらしい鈴本、相当酔ったらしく、吐いてたらしい。
『ったく、だらしねえな、どいつもこいつも』
ケトラミさんはあきれ顔であるが、うん、君の基準を人間に持ってきてはいけない。
鈴本が復活しないので、羽ヶ崎君がケトラミさんに乗って旅立った後、残りの人たちはここで休憩。そこら辺の食べ物を採集したりして過ごすことに。
私は外に居たらなんか鎧着たワニみたいなのが出てきたんで、早々に実験室に撤退して大人しく服縫ってます。
メイドさん人形たちの『どんまい!』みたいな空気と優しさが痛い……。
メイドさん人形たちはそれにしてもよく働くことです。
時々ミントに埋もれて昼寝しちゃう子も居たり、そこら辺飛び回って遊んでる子も居たりするけども、まあ、働け!ってなったら働いてくれるし。
現在も数体は鈴本に水を持っていったり、もふもふすりすりやって元気づけようとしてたりと、なんやかや甲斐甲斐しくお世話している。特に命令してないのに、である。
……ホントに、なんかここに来ていきなり働きまくるようになったよなあ。数回MPインターバル走を死ぬほど行った結果だったりするんだろうか?
考えられることとしては、『パス』とやらのつながりが強くなったとか、あるいはミント抽出液にそういう効果があるとか。
『パス』に関してはケトラミさんがなんか知ってそうだったんだよな、確か。
後で聞いておこう。
羽ヶ崎君が何やらまた教室を見つけたらしいので、全員でまた『転移』。
ケトラミライディング法を使うようになってから、教室発見速度が劇的に上昇したね。凄いなあ、半日で2つも見つけてるよ。
そう考えると、王都に出回っちゃうような教室の確保がいかに大変か分かるってなもんです。あっちは3つに10日とか平気でかかるからなあ。
……まあ、外に落ちてるやつは『職員玄関』みたく、海に沈んでるとかあるわけだから、一概には何とも言えないけど。
今回見つけた教室は、『会議室』。あれだ、この学校、会議室って結構無駄にあるから、会議室がいくつあったか、どこにあったかよく分からなくなるんだけども……この会議室は来賓とか来た時用の会議室だね。椅子とかがふっかふかしてるタイプ。しかも、無駄に広い。
……今度から皆さんの寝室か、ご飯食べる場所はここになるかもなあ。
まだ進めそうだという事で、角三君がケトラミライディングでまた西へ進んでいった。
他の皆さんはもう海に潜るのに飽きたようで、各自休憩している。
三半規管が弱いらしい鈴本は未だ復活せず。
戦闘時にはあんなに人間離れしたアクロバットしてるのになあ。
この先、1F南西エリアには多分、保健室とか相談室とか、私とはかなり縁遠かったもんで記憶があやふやな教室群があったはずなので、そこら辺を見つけることが目標だね。
その後は……うーん……このまま南下していって、地続きになって無さそうな気がする体育館とかの方に行くか、それとも先に1F北を集めに行くか……それは要相談だなあ。
今は一応リーダーっぽい位置にいる鈴本が復活してないし、角三君居ないし、何人か寝てるしでとてもじゃないけど相談とかできなさそうなので、いいや、それは晩御飯の時にでも。
となると暇なので、角三君がグロッキーになるまでの間に晩御飯の仕込みを始めることにした。
今日は角生えたでかい鮪みたいなのを取ってきてもらったので、これを何とかしちゃいます。
……鮪、って、遠洋漁業でもしたのか気になったので聞いてみたら、「海底の石で擦り傷作ったまま海に居たら血の匂いに引き寄せられたらしく色々寄ってきた」とのことでした。
それ、鮪じゃなくて鮫じゃないかね?この世界の鮪ってそんなにアクティブなの?やだ怖い。
赤身はサクにしたらお醤油と味醂に漬けておいて、明日にでも漬け鮪として頂くことにして、今日の所はトロを食べよう。
全部お刺身にしちゃってもいいのかもしれないけども、それは明日漬け鮪と一緒がいい気がするので、お腹の大トロじゃなくて背中の中トロを調理します。
作るのは簡単、下味付けた中トロにパン粉で衣付けて、表面が色づく程度にサッと揚げる。カリッサクッ、ジュワーなおいしさのトロカツでございます。中心まで完全に火が通るぐらいまで加熱しちゃうと今度はトロが溶けて無くなっちゃうので、サッと揚げるのがコツ。
……いや、だってさあ、このでかい鮪、普通にお刺身とかで食べてたら飽きるぞ、きっと。
揚げるのは直前ってことにして先にお野菜類をグリルったりしてたら、角三君から『交信』が入ったので、またまた『転移』。
移動先にあったのは『保健室』。いやー、速い速い。本日3つ目の教室だね。
しかし今日はここまでという事にして、ご飯にしましょう。そのころには鈴本も何とか復活していたので、全員でご飯になりました。尚、トロカツは概ね好評。
そして、ご飯食べながらさっき考えてた話し合いだ。私たちはここから南下すべきか、北上すべきか。
「南には多分体育館がある気がするが……海に出ても体育館があるとは限らない。階段の遺跡みたいに、渡り廊下に相当する何かがあってもおかしくないよな」
なんと、『遠見』を使っても、海の向こうに体育館らしきものは見えないのである。つまり、体育館は海の先に無いかもしれないし、あったとしても滅茶苦茶遠い。私達、造船技術も航海術も持っちゃいないから、できれば遠慮したいところである。……そこらへんは割とすぐにスキルになるかもしれんけど!
「相談室まで手に入れたら、そのまま北に向かえば図書室があるでしょ?で、更に北に進んだら1F北西には美術室とかがある。その付近に階段もあると思う。折角だし2Fの様子も見てみたらいいんじゃないの?」
ということで、満場一致で北に向かう事に決定しました。
……図書室を手に入れられたら、『アライブ・グリモワール』さんも本仲間が増えて喜ぶかしら?……いや、ないな。あいつは『知性の無い本など只の本である』とか言いそうだ。




