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59話

 午後は休憩を挟んで、オークションへ出発である。

 念の為というか、私はやっぱりローズマリーさん状態で参加だね。

 一応全員仮面をつけての参加だ。何故か私も付けてる。

 顔が見えると色々厄介だから、とのことである。ふむ、まあそうかね。

「それではこれよりオークションを開催させていただきます」

 進行役の人の良く通る声が場を引き締める。

「それではまず最初の品。……なんと、『発掘品』のドレスにございます!この鮮やかな色、風変わりなデザイン、どこをとっても一級品!さあ始めは金貨100枚から!」

 あっ、あれ見たことあるぞ。うんうん、あれ、前に私が作った奴だ。

 早速買い値の倍の値段からスタートかあ、こりゃ、あのオッサンぼろ儲けしてるなあ。

「金貨150枚!」

「金貨180!」

「金貨200枚!」

 そして値段は吊り上がっていき、最終的には金貨380枚で落札された。

 白金貨5枚で仕入れて白金貨38枚で売れたら……成程、こりゃあ、あのオッサン儲かるわ。




 それからもよくわからん壺とか、やっぱり質屋のオッサンが出品したっぽい見たことのある服とか、そういうものがガンガン出てきては競り落とされていく。

 しかし、そういうの気になって一々『鑑定』してみるけど、実際に効果があるものは稀だ。

 特に壺とかすごかったな。『幸福を呼ぶ』という触れ込みで売ってて、実際についてる効果が『敏捷力上昇』。もう、どうしろと。幸福云々を抜きにしても、壺を装備しろってか?


 そしてそれは遂に訪れた。

「続きまして、今回のオークションの目玉でもあります、『異国の魔法の部屋』でございます。見た目は只の宝石ですが、地面に落とせばたちまちその姿を現すでしょう!さあ始めは金貨300枚から!」

「金貨310」

「金貨350!」

「金貨370で!」

 何やらみみっちい上がり方してるけども、それはこっちとしては助かるね。

 できればお金を使わないに越したことはないのだから。

「金1000」

 ……とか思ってたら、うん、いたよ、空気呼んでくれないのが。

 なんだよ、ケタがもう違うじゃん、500とかにしようよ、もっと慎ましやかに行こうよ。

「おおっと!ここでいきなり金貨1000枚にまで跳ね上がった!さあ、もう他にはいらっしゃいませんか!?」

「金貨1100枚で」

 ここで競り落とせないと意味が無いので、こっちも値を上げていく。

 あ、因みに値段を言ってるのは私の『魔声』のチョーカーを装備した鈴本である。

 私は奴隷なので入札権が無いからね、しょうがないからチョーカー貸した。

 まあ、単純にこいつは声が綺麗でよく通るし、『魔声』で『これ以上値段あげるんじゃねえ』という意思を乗せてくれれば、他の人たちにプレッシャーを与えやすいからね。

 ……うん、プレッシャー与える程度なんだよ、これ。

 あのですね、なんというか……『魔声』というスキル、効果を大きくしようとすると、それに伴って消費MPが二次関数的に上がっていくっていうか……。

 つまり、2倍の効果を出そうとした時に必要なMPは2倍どころじゃなく、4倍とか、9倍とか、16倍とかになるのです。

 大きな効果を出そうとしたら、消費MPが偉い事になってMP切れを起こすって訳ですね。

 それこそ、ケトラミをちょろんと呼ぶだけで、『転移』2回分ぐらいのMPが無くなる位には燃費が悪い。

 重ねて言えば、歌川さんが剣闘士大会ノナの部で8人を戦闘不能にしたアレ。

 ……歌川さんが復帰するまでに2時間ちょいかかってます。や、それでもこれ、私のMP切れダウンに比べたら相当速いんだけども。

 このオークションの会場にいらっしゃる方々に強制的に働きかける何かを、目に見える位の効果で発動させようとすると……多分鈴本だとダウンどころか、そもそも発動不可能じゃないかな。

 歌川さんは本職の『歌姫』だ。それでも、8人に強制力をもって『魔声』を使っただけでダウンしたわけで。

 この場に居る人が多分全員異国人では無く、スキルに対する耐性とかが全くなかったとして、更に、『入札するな』が『戦闘不能になれ』よりも数段レベルの低い命令だったとしても、それでも……多分、鈴本だと無理、だろうなあ。


 というわけで、まあ、効果があるのかないのか分からないけども、気休め程度に『魔声』効果も使って行こうという訳なのですよ。

「金1200」

「金貨1250枚」

「金1300!」

「金貨1350枚」

 鈴本の声は明らかに棘を増しているのに、相手の貴族達はこたえた風も無く、苛々とした様子で金額を吊り上げていくばかりである。

 ……後で歌川さんに聞いてみたら、「面の皮が厚い奴ほど効きにくいのよね、アレ」との事であった。という事はノナの部で揃ってぶっ倒れた化学部の皆さんは割と面の皮が薄いんだろうか?そして、貴族の皆さんは面の皮が……厚いな、絶対。

「金1500!これでどうだ!」

 遂に金貨1500枚かあ、ヤバいな、しかしここで落とせないと来た意味が無い。

「ここで金貨1500枚になりました!さあ、どうしますか?」

「金貨1800枚」

 吊りあげられたので吊り上げ返した模様。

 ……これは効果的だったらしい。貴族はぐぬぬ、ってかんじに黙ってしまった。

「1800枚!1800枚です!他にいらっしゃいませんか!」

 勿論、他の貴族たちも黙ったままである。

「では、1800枚で落札です!」

 ぬ、ぬー……しかし、落札したのはいいけども、白金貨にして180枚分使っちゃったってことだぞ、これ。

 教室の開始は白金貨30枚からだったのに180枚にまでなっちゃってるんだから、奴隷に至っては……どうなっちゃうんだろう。大丈夫か?

 まあ、とりあえずは教室を手に入れたって事だね。

 その場でお金を渡して、教室を手に入れた。これは『事務室』だね。これで1F南は半分揃ったと見ていいかな?




 ……しかし、オークションはここで終わらない。

 というか、ここで終わってくれるなら私は昨日あんなに服制作マシンにならんかったぞ。

「次は奴隷でございます。健康で丈夫、そしてなんと、風魔法の心得もある男の奴隷です!力仕事にも護衛にも使える一級品!それでは金貨100枚から開始!」

 これは現地住民の奴隷なので、可哀相だけどほっとかせてもらう。

 一々奴隷全員買って解放してあげて、とかやってたらちょっとお金が足りないどころじゃない。

「金貨110枚」

 ないんだけど、何故か入札しやがったぞ、こいつ。

「金貨120!」

「金貨125!」

 そしてそこに入札は上乗せされていく。

「金貨130枚」

 そして何故かまた入札。……あ、そっか、そういう事だ。

「金貨135!」

「金200でどうだ!」

「金貨230!」

 入札してできるだけ他の人に高く買わせるっていう作戦だね。

 ふむ、成程。あとは様子見に移行した模様。

 様子見しつつ、奴隷の相場とかを見ておこう。

 最初は金貨100枚だったけども、吊り上がって最終的には金貨350枚で落札になった。

 ……これ、女性の奴隷だともっと値上がりするって事かな、そして、異国人にもなったら、もっともっと上がるんかな、ちょっと勘弁してほしいんだけども。


 その後、現地住民の男性が1人と女性が3人出品されて、その後、遂に来たわけです。

「続きまして、これが今回のオークションの目玉の1つ!異国人の男の奴隷にございます!『失われた恩恵』をその手で行使する者!風を操り、空を操り、雨を降らせて雷すら落とす!天候を操る異国人の奴隷だ!さあさあこれは入札待ったなし!開始は……ええ、このお値段以上の価値は保証致します!……金貨1800から!」

 ええええええええええええ!最初からこれかよ!

 この世界の人たち、異国人に重き置きすぎだよ!というか、もっと教室の価値高くてもいいと思うのは私だけか?

 ……あ、そっか。この世界の人たちにとっては只の出し入れできるよく分からん部屋、でしかないのか。




 オークションは苛烈を極めた。

 最初からガンガン飛ばしていくもんだから、こっちはたまに『魔声』をダウンしない力いっぱい位で発動しながら刻んだお値段を言っていくしかない。

 これ、見ているこっちが辛くなってくるんだけども、鈴本は一回発声するごとに例のミント抽出液を服用している。

 つまり、MPインターバル走。多分、私の服製造マシンよりも回転速度が速い分しんどいに違いない。

 しかし、その効果は徐々に出てきたみたいで、貴族たちの吊り上げ方も慎ましやかになってきた。

「金貨3100!」

「金貨3150!」

「3155で!」

 そして、そこを狙って一気につり上げにかかる訳です。

「金貨3600枚」

「金貨3600枚!他にいらっしゃいませんか!」

 多分、3500だったらまだ居たんだと思う。けど、微妙にこの500じゃなくて600、っていうのが効いたんだな、多分。

 何とか落札できました。

 ……できたけど、ここで残金が白金貨330枚。

 ……やばくないですか、これ。




 お金もだけど、鈴本がやばかったので、首からチョーカー外しておそらく最もMPが多いであろう羽ヶ崎君に押し付ける。

 がんばってくれー。

「では次に参ります。さて、これが今回目当てでやってきた方も多かったのではないでしょうか!?この美貌をとくとご覧あれ!眩いばかりの艶やかな黒髪、白磁の肌!しかしこの奴隷の真価はこの容姿ではない!なんと、この奴隷はかくも美しくありながら、超一流の魔法使いだ!炎も風も、彼女にかかれば皆ひれ伏すでしょう!さあ、では参ります!開始は……金貨2000枚からだ!」

 ……おおう、これは……これは、ヤバいんじゃないか?




「……僕がぶっ倒れたら、次は刈谷ね」

 羽ヶ崎君が何とも不吉なことを言いつつ、声を張った。

「金貨2500枚!」

 その瞬間の、会場の空気の変わり様は凄かった。水を打ったように静まり返り、声を出すのに凄く勇気がいるような、そんな感じの空気になったのだ。

 強制力のある、体に直接働きかける所までは行ってないけども、心理的に十分働いてはいる模様。

 ……羽ヶ崎君はダウン直前まで行ったらしい。けどぎりぎりの所で持ちこたえてるあたり、こいつはどうも、自分のMPの限界をよく把握して、MPの消費の仕方にも手馴れているらしい。

 私はそういう細かい調節ができないんだろうなあ、これ。

 しかし、やっぱりというか、上手くいかない物です。

「金2800!」

 あああああ、やめてよー、やめてよー、この女の子も落札させてよ!

「金貨3000枚!」

 ミント抽出液を数ml飲んでMPを補充したらしい羽ヶ崎君、また声を張るけども、さっきよりも効果が薄そうである。

 本人も分かっているらしく、チョーカー毟って刈谷に放った。

 刈谷は慌ててチョーカーを装備する。

「金貨3100枚で!」

 また値段が上がっていってしまう。やばい、もうこっちは限界が見えてるぞ。

「金貨3300枚!」

 今度は刈谷が『魔声』を発動させた。こっちはMP調節が下手らしく、一発でダウンしたけど、大丈夫か?これ、私たちの限界額なんだが。


「さ、3300、3300枚です。他はいらっしゃいませんか?」

 何やら進行係も発言しにくそうなのはごめんとしか言いようがない。

 ……しかし、なんとか、やっとこさ、今度こそ、誰も入札しなかった。

「では、金貨3300枚にて落札!」

 ……うん、なんか、凄い苦労と犠牲の末、なんとか……この女の子も、落札できたのである。

 これにて我々、素寒貧。一文無しですいぇーい。

 貴族とは一体何だったのか。




 これで終われば、よかったね、っていう所だったのだが。だが。

「では、こちらが本日最後の出品となります!さあ、こちらがその商品!」

 ……ステージに上がってきたのは、すごーく、見覚えのある人であった。

「……よし、帰ろう」

「帰ろう帰ろう」

 皆さんの気持ちもよく分かるが、耐えて解決策を考えて欲しい。

 ……それにしても、福山君や、何故君はここに居る。


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― 新着の感想 ―
[良い点] よし、帰ろう。 [気になる点] 助けた人のケアをしなきゃ! [一言] 早く帰ろう。
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