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48話

 本日は私たちも情報室と社会科講義室でお世話になることになりました。

 私は社会科講義室、つまり女子部屋の方にご厄介になります。


 そして、寝ようと思いました。

 しかし!

 布団がありません。

 ……布団どころかケトラミさんのあの極上のふっかふかに慣れた私としては、床で雑魚寝とか許しがたい!

 私の分は化学実験室展開させて中から出せばいいんだけども、他の女の子たちの分が無い。

 よろしい、ならば作ろうではないか!

 ということで、またしてもメイドさん人形たち20体と一緒にMPインターバル走を半時間ほど続けて、なんとか女の子たち全員のお布団を作成することに成功。

 男子は……いいや、うん、一晩位我慢してくれ。

 私はもう眠い。

 よし、お休み。


「おい舞戸、今から布団作れるか?……って、ああ、すまん、寝てたか」

 ただし、10分で起こされたが。




 ということで、それからまた半時間ほどMPのインターバル走を続けて男子たちのお布団も作成すると、今度こそ満を持して寝ることにした。

 あああ、本当に今日は疲れた!

 お休みなさい!




 おはようございます。

 起きたら何故か、部屋に月森さん以外いませんでした。

「おはよ、よく寝てたね、ま、当然か」

「今何時!?」

「朝9時」

 ……うへえ、大寝坊です。

「朝ごはん貰って来たから食べな、ほら」

 朝ごはんはご飯とうす塩味の野菜スープ。

 全体的に調味料が足りないんだな、この集団。

 それもそうか、普通は塩とか醤油とかが置いてある部室ってないもんね。

 しかし……人が作ってくれたご飯って美味しいなあ、もぐもぐ。




 さて、今日は、食料を集める日になりました。

 具体的にはまず、鳥海がバレッタのコピーを加工してバレッタ以外の何かにできるらしいので、それで『転移』して、王都で調味料の類や保存食を買いこむ。鳥海単体ならば髪と目の色も分からないし、いざとなったら『転移』できるので安全、という事だ。

 ちなみに買ってくる調味料とかは、私たちの分っていうよりは、情報室・新聞部組の皆さんの為だ。

 僅かに見つけた岩塩だけで今まで生活してた、っていうんだから、もうこちらとしてはたまらない。優雅に味のあるご飯今まで食べててごめんなさい。

 そして、その間に他のメンバーは狩りに出て、肉類、果物、野菜などを集めておく。

 どうも、情報室・新聞部組の皆さんは食料採集が苦手な模様。

 植物の見分け方とかがよく分からないらしい。これは……私にはちょっと分からない感覚だな。

 化学部補正、とか、そういうものもあったりするんだろうか?

 なので、これから3Fをガンガン探索していく人たちの為に、今のうちに食料をたんまりため込んでおこう、という事になったのだ。


 そして、その間私は暇人になってしまうので、まずは王都に行く鳥海にメイドさん人形たちをくっつけて『転移』してもらって、鳥海の買い物中に空色の百合を回収してきてもらう事にした。

 ついでにケトラミの回収も頼む。帰ってくるときにはケトラミと空色の百合分の容量が増えて『転移』のMPが足りなくなるといけないので、鳥海にはきっちり、MP回復茶を進呈しておいた。

 染色は服を作った後でもいいよね、という事で、先に無地無染色の服を作っておいて、それを『染色』することにする。

 そう、空を飛ぶ、とまではいかなくとも、せめて滞空時間を長くする、位にはなる服をこさえておかないと私、剣闘士大会の第一回戦で詰むのです。


 皆さんがそれぞれ出発したのを見届けてから、久しぶりに自分で紡績して、自分で布を織った。ここら辺はメイドさん人形に任せちゃってたからなあ。

 そしてできた布をできる限り面積を増やすようにして、振袖みたいな物体を作る。

 ……ほら、袖を和服っぽくすると、さ。おはしょりする分丈を長く作るから布面積増えるじゃん。更に、袖の分でまた増えるじゃん。

 しかも、重ね着が容易じゃん。

 ……ということで振袖にしてしまいましたが、これ着てたら異世界人だとばれるんではないだろうか?

 ……よし、これは最後の手段として、全円スカート、袖はたっぷりな感じのワンピースを作っておこう。

 こっちで布面積が足りるようなら、こっち着ればいいんだし。




 鳥海がメイドさん人形たちとケトラミと一緒に帰ってきてくれたので、早速『染色』。

 まずはワンピースの方を着てみる。

 さて、これに刺繍を入れれば宙に浮く『飛空』になり、入れなければ『飛翔』なわけです。

 とりあえずまずは『飛翔』でどのぐらい持つかを見てみましょう。


 ケトラミさんにいざとなったらよろしく、と頼んでおいてから、上空に『転移』。

 ……あ、大分ゆっくりだな。

 数えてみた所、上空100mから着地までにかかる時間は大体10秒。

 ふむ、かなりゆっくりしたね。それでも十分早いけど。秒速5mちょい。うーん、もうちょっと欲しいかな。

 ケトラミさんが『ウィンドウォール』で緩衝してくれたので事なきを得たけど、これ、一人だったら着地と同時に足首を挫……いや、それで済めばいいよな。絶対大腿骨骨折ぐらいはいくよな。うん。

 ……ああ、ところで、ケトラミさんの『ウィンドウォール』。これ、割と最近覚えたらしい。

 何でも、私をナイスキャッチした時が初めての使用だったとか。

 ……ケトラミさんだから安心しきってたけど、あの時実はかなりやばかったのね?


 ということで、次は刺繍無しの振袖で挑戦。

 も、滞空時間、変わらず。

 ……どうも、布面積当たりの効果上昇の限界にぶち当たったらしい。

 くそー、やっぱりだめか。

 しかし、これで振袖着なくてもいいという事が分かったので、一安心。


 次はワンピースに刺繍を入れて実験。

 またしてもケトラミ先生に頼んでから、『転移』。

 ……すると、なんか急に体が、服じゃなくて体が、浮こうと働くのが分かった。

 そしてふかふか落ちていって、約31秒後に着地。今度はケトラミ先生の助けなしで着地できた。

 ふむ、これで31秒は稼げるな。31秒あれば十分歌えるでしょう。よし、ではこれで実験は成功、ということですな。良かった良かった。

 大会の時は、これの下にロングパニエ履いたり、刺繍足したりしてMPの補強したりすればいいかな。




 そして皆さんが大量の食料と共に帰還。

 それでお昼ご飯、という事になりました。

 お昼ご飯は人数が多いという事で、またしてもバーベキュー形式。

 タレは女性向けに柑橘類を生かした醤油だれと、なんとなく甘味噌だれを追加。

 肉も野菜も凄く豊富です。

 あ、なんか凄く長いナスと凄くでかいピーマンが新たに発見された。個人的にはナスがすごく嬉しい。

 それに加えて現在、芋と人参と肉を焼きまくっております。

 それとでっかい土鍋で炊いているご飯が今日のお昼ご飯です。

 うん、好評。




 ひたすら鉄板で色々焼きまくっていても手が足りなかったので、月森さん他数人の女子がお手伝いしてくれました。

 あ、こういう時にメイドさん人形たちはあんまり使いたくない。

 何が悲しくてMP消費しながらご飯しなければならんのだ。

「そういえば舞戸、人のスキル分けてもらえるんだって?」

 月森さんは食料集めに出ていたから、その時に誰かから聞いたっぽい。

「うん。尤も、色々条件とかあるらしくて、何でも分けてもらえるわけじゃないけど」

「そう、じゃあ、片っ端から試してみなよ。ほら、肉はやっとくから、さっさと試しちゃいなさい」

 そういうと、月森さんはドッグタグを差し出してきた。

「……いいの?」

「こっちが減る訳じゃ無いんでしょ?だったら分けてあげるわよ。こっちも服だの布団だのバレッタだのもらってるんだから」

 ほら、と言うので、では遠慮なく。

「で、では遠慮なく……『複製』」

 言いながらドッグタグをぶつけてみるけど、反応なし。

 ま、まあ、あんなチートスキルが貰えるとは思ってないよ。うん。


 そして片っ端から試してみたら、1つだけもらえたスキルがありました。

『調合士』というスキルでした。どうも、インクとか作る為のスキルらしいんだな、これが。

 ……何に使えるかなあ。あ、染料とかかに使えるかな?


 というわけで、適当に引っこ抜いてきた草で『染色』をしてみる。

 も、特に何も変わらず。

 これは他のスキルに被るスキルではないのかな?

 例えば、『器用』とかは、他の殆どすべてのスキルに効果を及ぼす。

『裁縫』の速度が上がる、とか、『解体』の精度が上がる、とか。

 しかし、この『調合士』、特にそういうスキルではないらしい。

 ふむ、だったら、草を『調合』してみよう。

 ……あれ、なんか頭の中に本のページみたいなのが出てきた。

 あれだ、『アライブ・グリモワール』開いた感じだ。

 ふむふむ、ページをめくって……うおっ!?何これ、滅茶苦茶ページめくりにくい!

 ぴったり張り付いたスーパーのレジ袋を乾いた手で開くときの感覚に似てるなあ。

 もう四苦八苦しながらページをめくって読んでみると、なんと、『何と何を調合すると何になる』という一覧だった。

 ほうほう。これは便利。

 ……しっかし、何故か、出てくるのは衣食住に関わるものばかり。

 月森さんが作ったというインクとか、どこにも載ってないぞ。

「ねーねー月森さーん」

「何よ」

「インクのつくり方って、月森さん、分かった?なんか私、衣食住に関係するものしか作り方が分からんのですが」

「え、というか私、インクとか紙とか、あるいは魔法の道具とか、そういうのしか分からないんだけど」

 ……これも、『人形操作』みたいに、その人の職業とか性格とかで、できる事が違う、っていうこと、なんだろうなあ。


 尚、他の女の子たちも私にスキルを分け与えようとしてくれたのですが、なんと、収穫ゼロ。

 驚異のゼロ。

 話を聞いてやってきた男子たちも試させてくれたけど、そっちもゼロ。

 ……ご協力いただいておいてこの様ですみません。




 そろそろ日も沈む、という頃、ここらで私たちは分かれることになった。

 私たちは剣闘士大会に向けての特訓、情報室・新聞部組の皆さんは3Fの探索です。

「じゃあ、舞戸、頑張ってね」

「そっちもねー」

「服ありがとうー!」

「布団ありがとうー!」

 なにやら凄く感謝されながらのお別れとなりました。むふふ、少し気分がいいぞ。

 しかし……なんか、やっと心穏やかな人との交流ができた気がして、気分が安らいだ2日間でしたなあ。


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