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47話

 皆さんが凄まじい量のから揚げを食べ終わり、夜がやってきました。

 いや、びっくりした。皆さんの胃にはブラックホールがあるんだね、きっと。

 そうでもなきゃ納得できません。


 さてさて、私はと言うと、メイドさん人形たち全員にお揃いの空色エプロンドレスをこさえています。なんとか布がぎりぎり足りる計算になったので、材料の補給は無くても平気そうです。

 ただし、私の分を何とかしないといけないから、やっぱり明日には補給に行きますがな。


 空色エプロンドレスは、ワンピース部分が空色の百合由来の空色。『飛空』のスキル付き。

 エプロンや頭装備はこだわりの純白。『防御力上昇』でメイドさん人形の耐久性をアップ。そしてメイドさん人形にもパニエを装備させまして、こちらがローズマリー染めです。私のMP消費を抑えられるね。

 よしよし、これで明日からはメイドさん人形たちが全員空を飛ぶわけですよ。

 ふふふふふ、楽しみですなあ。




 ケトラミさんが居ないので、寂しく布団で就寝、そして起床。

 おはようございます。今日も一日楽しくメイドしましょう。

 さて、早速ですが、朝ごはんの支度をメイドさん人形たちが手伝ってくれております。

 空、飛ぶからね。なんか移動効率が滅茶苦茶に上がってるからね。すごく便利。

 しかも可愛い。これは素晴らしい!


「おはよ……うわ、ついに空飛び出したんだ。可愛いねえ」

「おはよー、うん、可愛いだろう、可愛いだろう。やらんぞ」

 メイドさん人形たちは現在進行形で3体ほど飛び回って高い所の物の整頓をしたりしている。

 空を飛べるようになったら嬉しくなってつい、今まで手が届かなかったところの整頓なぞをやってみたくなっちゃったんだろう。気持ちは分かる。

 尚、ほかに10体ほどのメイドさん人形たちが籠を持って外に出て、草花の採集をしている。

 まだあんまり、2F北の植物は染料として試してないからね。色々やってみますよ。




 皆さんが集まって味噌汁とご飯と蒸し鶏の和え物の朝食を食べていた時、草花の採集に向かわせていたメイドさん人形たちが帰ってきた。

 しかし、只帰ってきたにしては何やら慌てているのである。籠放り出して、必死に私の服をつまんで引っ張る。

「舞戸、そいつらは何て言ってるんだ」

「いや、残念ながらケトラミとかハントルとは違ってこの子達は喋らないから」

「……てっきり、そいつらも喋ってるんだと」

 うん、残念ながらこの子達の言語はボディランゲージだけだよ。

「引っ張ってる、っていう以上、どこかに連れて行きたいのかなー」

 まあ、だろうね。

 しかし現在ご飯中。ご飯を食べ終わるまで待ってもらって、それから全員でメイドさん人形たちが引っ張っていく方向についていくことにした。




「おい、まだ進むのか、これ」

「そろそろ舞戸が死ぬんじゃないの?これ」

 ごめんよー、ごめんよー、ケトラミさん無しでついていこうとしたのが間違いだったよ……。

 現在へばってます。ごめん。

 空飛ぶようになって機動力が上がっちゃったメイドさん人形たちは、凄く遠くの方まで探索に行ってしまっていたらしい。しかも人形だから疲れ知らずだし。

 まだ進むの?とメイドさん人形に聞いてみるともふもふ頷くので、しょうがないからついていく。


 そしてついていくこと30分。

 そこには非常に懐かしい教室がありました。

 そう。情報室です!

 あー、成程。情報室の三枝君達が2Fに引っ越してきたんだね。

 そしてその隣には、社会科講義室が設置されていました。

 ふむ、確か社会科講義室は2F北棟の一番東端にあったな。新聞部が使ってたはずだから、あの中にいるのは新聞部かな?

 だとしたら私の知り合いが何人かいるはず。ちょっと楽しみ。


 とりあえず情報室の方をノック。

 ……返事が無いのでバンバン叩くと、やっと室内が騒がしくなって、そして、用心深げに、ドアが開いて、三枝君が顔をのぞかせた。

「久しぶり」

「あ、なんだ、君らかー。久しぶり」

 以前よりよっぽど顔色も良くなってるね。うん、いいことです。

「とりあえず中入る?」

「ああ、そうさせてもらうかな」

 外で立ち話も何なので、室内に入れてもらう。

 室内には、情報室に居た男子諸君他数名の男子がいた。

 多分新聞部の男子だろう。

 そして女子がいない所を見ると、女子は新聞部の部室、社会科講義室の方で寝泊まりしてるのかな。

「あれから峯原さんどうなった?」

「大人しくなったよ。今は人形作って平和に操作してるだけかな。戦力としても頼もしいから、まあ、助かってるかも。恨みは忘れてないけど」

 そうかね、そうかね。それはようござんした。

「ところで三枝達って、もしかして普段まだ起床してないの?」

 尚、現在朝の8時。

「あー、今頃起床、かな。女子はもうちょっと早いらしいけど」

「女子は社会科講義室の方か?」

「そうだね。2Fに来てから割とすぐに新聞部と合流できて。その付近の教室拾いながら、化学実験室の方面目指してたところ。この近くだよね?」

 あー……。そうなんだけど、さあ。

「それなんだが……今、俺達は定住していないもんでな」

 とりあえず三枝君にざざっと、『アライブ・グリモワール』から聞いたあれこれを説明する。

「そっか、じゃあ僕たちは教室を集めなきゃいけなさそう、ってことなのかな?」

「そうだな、多分」

 そういう意味では、2F北棟東階段よりも東の教室を全部集めてきてくれたらしい三枝君達の働きは称賛ものである。

「そうかー、だったら、こっちの方の教室集めは僕らに任せておいてよ。その代わり、1Fは任せる。その剣闘士大会とやらも、そっちに任せなきゃいけないみたいだし」

「そう言ってくれると助かる。あ、社長、地図」

「はいどうぞ」

 社長が持ってきた地図を広げて、モンスターが強くなる地点とか、そういうのを説明していく。

「あー……でも、こういう地図とか、女子に任せた方がいいな。新聞部の月森さんが、人力コピー機みたいな感じだから」

 月森さん、というのは、私の知り合いである。

 一応中学校から一緒なのだ。その割にはドライな間柄というか……。

 まあ、微妙な位地にしても、一応親しき仲ではあると思う。

 というか、それを差っ引いても、人力コピー機、ってのが気になりすぎる。

 なんだ、人力コピー機って。


 早速社会科講義室に行ってみると、女子の皆さんは既に全員起床して駄弁ってらした。

 ただ一人を除いて。

「……月森さーん」

 揺すってみると、うめく。

「あと五時間……」

「分ならぎりぎり許さんでもないが、時間、とな?」

「うん……」

 そしてそのまままた眠りの海に没入してしまうのである。

 しょうがない。

「『共有』!」

 月森さんとおでここつんして、叩き起こす。もうすっかり慣れたものです。

「うわ何今の……あれ、舞戸?」

「おそよう、月森さん」

「早い方だよ、これ」

 そ、そうかね……メイド的には大寝坊だぞ、これ。

「久しぶりだね、なんか」

「そーね」

 ……会話が微妙に続かないけど、これがデフォルトです。


「舞戸はどしたの、それ。メイド?」

 あ、やっぱり聞かれた。うん、大丈夫。もう私、開き直ってるぜ!

「メイド。職業がメイド。月森さんは?」

「職業?コピーウィッチ」

 ……なんぞ、それ。

「新聞部の一部は、新聞関連の職業になったっぽいんだよね。私は印刷関連の職業っぽくて。大抵のものはコピーして増やせる。例えば……これでいいか。『印刷』『増刷』」

 月森さんの手が急に輝き、手にとったハンカチが、増えた。

 質量保存の法則に真っ向からケンカ売ってるな、これ。

「増えるって言っても、もちろん永久に、じゃないからね。気力にも限界があるし、そもそも増やした物だって時間が経ったら消えちゃう。別のスキル使えば縛りは多いけども永久保存できるけどね」

 そういう間に、ハンカチはきらきら光って消えて、最初の一枚だけになってしまった。

 ほー、面白いですなあ。

「これって、戦闘職じゃないよね」

 もしやこれは、私と同じ悩みを抱える人発見か!?と思いきや。

「モンスターに与えた傷を増やして出血多量でやったりとか、そもそもモンスターの血液倍にして血管破裂させるとか、そういう戦い方してる」

 ひ、ひええええええ!めっちゃ強いですやん!それ!しかもめっちゃエグいですやん!

 なんかこう、月森さんから微妙に社長と同じ雰囲気を感じたぞ……。


 ……ちなみに、諦めきれずに探したけども、残念ながら私よりもよわっちい人は居ませんでした。こんだけ人いっぱいいるのにっ!一人も非・戦闘員いないとかっ!




 そして情報室・社会科講義室の方々の朝食と相成りました。

 朝食の材料は、峯原さんがとってきた。

 なんか余りにも普通に仕事してるから二度見したよ。

 うん、まあ、なんとかやってけてるようで良かったです。


 そしてその朝食ですが。

 何故か私が作ってる。

 何故かっていうと、本日の食事当番だったらしい男子の余りの手際の悪さにむかついたからです。

「早え……」

「流石メイドだね」

 何やらいろんな人が見学に来ましたが、見世物じゃねえぞ!




「いただきまーす」

「あがれめしー」

 ご飯を食べるのは、社会科講義室の向かいにあった教室、多目的講義室です。

 中々綺麗な教室で、かつ、収容人数も多めなので、こういうのにはぴったりだね。

 そして何故か化学部の皆さんも席について食べてるあたりが突っ込みどころです。

 お前らもう飯食ったろうが。

「美味しい!舞戸さん料理上手いのねー」

「わー、美味しい、どうやって作ったの?」

 男子諸君は食うだけだが、女子諸君は作り方の方に興味が向くらしい。

 なんやかや教えつつ、とりあえず朝食終了。

 そしたら、ここでそのまんま会議に入ります。




「僕ら情報室・新聞部組は、かなり戦力が大きいと思う。人数が多いから。だから、このまま西に向かっていって、英語科研究室とか、音楽室とかの方に向かう、っていう手も、あるんだけど……そっちの方って、吹奏楽部がいたじゃん」

 忘れちゃいけない、吹奏楽部。

 吹奏楽部は……西棟のホールを練習場所にしてたんじゃないかな、だとしたら、かなり2F北西エリアには近いはず。

 で、人数が人数だ。

 吹奏楽コンクールに出場するにしても、全員出場できないから部内オーディションがあるっていうのだ。

 つまり、部員が60人超えてる。

 つか、多分2,3年生だけで60人超えてる。

 もはや軍隊の域。

 その軍隊がいるんだったら、早めにコンタクトを取る、っていうのも一つあるけど……そっちは任せちゃう、っていうのも、手だね。

「だから、僕らは3Fに一旦戻ろうと思う。それで、3F北の教室の回収をしようと思うんだ」

 ふむ、成程。中々効率的。最終的に吹奏楽部と合流して、教室を回収すればいいわけだし、だったら、三枝君達には3Fを回収して回ってもらった方がいいね。

「で、さ。お願いがあるんだけど……」

「なんだ?」

「舞戸さん、服縫えるんだよね?」

「おうともよ」

「じゃあ、さ、女子の分だけでいいから、着替え、作ってあげてくれないかな、お礼はなんか考えるから」

 ……ああ。そっか。

 私には『お掃除』があるから、風呂要らず、着替えいらず生活が可能だったわけだけど、彼彼女らはそうじゃない。

 特に、女子なんて、着替え無しで今までどうしてたんだろう。

 ……うわ、なんか凄く不憫だ。年若い女の子たちが着替えもお風呂も無しに生活するなんて。

 これは、私が役に立つ珍しいシーンですね!




 一応皆さんにも許可は取った。むしろ応援してくれているので、遠慮なく、木材の伐採に向かってもらう。

 これには情報室・新聞部組の男子と一部女子も動員させてもらった。

 それから、非力な後衛女子たちには、花とかを摘んできてもらう。つまり、染料ですね。


 そして私はと言うと、メイドさん人形たちをフル動員しながら、繊維作って紡績してもらって、布織ってもらって、染色して、裁断してもらいながら縫う、みたいなことを凄まじい速度でやる事になった。

 うへえ、すげえ大変です。

 何てったって、情報室・新聞部組は合わせて18+22で40人もいるのです。

 女子だけ、ってのもかわいそうだから、男子の分も作ろう、とか考えると、一人三着としても、120着の服が必要なわけです。

 MP回復茶がガンガン無くなっていく。それはそれは、凄まじい速度で無くなっていく。

 しかしここでやめるわけにはいかないのです。生活の質が悪すぎる女の子たちの為にも。




 お昼ご飯は抜きました。

 とてもじゃないけど、食ってる余裕が時間的にも精神的にも無かった。

 皆さんは適当に作って適当に食ってた模様。

 そして、夕日が沈むころ、ついに服ができました。

 全部『染色』の効果付きです。あ、なので、一応この服が現地住民の手に渡ったりすることの無いようにちゃんと言ってからプレゼントした。

 女の子たち、中には泣き出す子もいるぐらい、喜んでくれた。

 お風呂無しで着替え無しは辛いよね。

 もっと早く気づいてあげられればよかったのに、ごめん。

 ……しかし、こんなに喜んでもらえると、メイド冥利につきるね。




「舞戸、舞戸、ちょっときて」

 そして月森さんに呼ばれたので、晩御飯の席を抜けてきました。

 あ、晩御飯はこちらでごちそうになりました。美味しかったです。薬も入ってないしな!

「舞戸、そのバレッタちょっと貸してみ」

「へいよ」

『転移』のバレッタを外して月森さんに渡す。

「よし。『複製』『複製』『複製』」

 そして、月森さんの手が輝いたかと思うと、バレッタが4つになってた。

「よし。2つはこっちで貰う。で、元の1つともう一つはあげる。一応、コピーの方もオリジナルの99%の性能はもってるから、安心して使いなさいね」

 ……な、なんじゃそりゃ!そんなチートスキルがあっていいのか!?アイテム増やし放題じゃん!

「あー、疲れた。寝る。お休み」

 ……ああ、でもやっぱりこれ、消費MP凄いんだろうなあ。

 だから月森さん、いっぱい寝てるのか。

 ……いや、それだけじゃない気もするけども。


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