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44話

 まあ、私がもっと奴隷っぽくならねばならんという事は置いておいて、現在もっと切実な問題が二つ。

「ところで、この人たち、どうするの?」

「魚のエサにする」

 ……うんまあ、ここまでやっちゃったら生かして帰すわけにもいかない……の、かな?

 いや、でも、『あの奴隷攫ったら地獄絵図の一環にされたでござる』みたいな口コミが広がってくれたら、抑止力にならないか?

 少なくとも、それだけ面倒な痛い事に巻き込まれるリスクをおしてまで皆さんに手を出そうとするアホはあんまり居ないと思うんだけど……。

 あ、でもでも、この人たちを生かしておくと、逆恨みの果てに復讐とかされそうで嫌だな。

 うーん、でもでも、この人たちをここで魚のエサにしてしまうと、口コミが広がりにくいぞ。

 間違いなくこの人たちの同業者っているんだろうし、そういうのに毎日攫われてたら私が脱出ゲームマスターになってしまう。それはできればやめてほしい。

 口コミの力で是非そういうのは抑止したい所。

 であるからして、この人たちを消してしまうのは望ましくない。かといって、自由に動かれるのも望ましくない。

 ……。よし、すっごくすばらしい事を思いついた。

「ちょっとそこの人とお話ししてもいいかしら?」

 そこの人、というのは、さっきまで鈴本によって血だまり生成機と化していた人である。

「ああ、いいけど」

 許可も得たので、早速お話を聞いてみましょう。

「ねえ、あなた達の仲間って、まだ居るの?」

「い、いう訳ねえだろ」

「貴方、また血だまり生成機になりたいの?」

 鞄から短剣を出すと、その人の表情が凍り付いた。よっぽど鈴本にやられたことはトラウマになってるらしい。可哀想に。

「本部に下っ端2人と上役1人が居る!」

「それは知ってるわ。他には?」

「ほ、他は居ない!喋った、喋ったから助けてくれ!」

 ふーむ、よし、つまり、私が誘拐された先に居たオッサン達がそれだな。

 うん。あの3人ならば、多分歯向かってきても何とかなるでしょう。

 そしてあとはこいつらだ。

「氷と水の魔導士さん」

 羽ヶ崎君を呼ぶと、こっちに来てくれた。

「こいつ、氷漬けにして暫く出てこられないようにできたりする?」

「できるけど?」

「じゃあお願い。できるだけ派手によろしくね」

「『アイスコフィン』」

 言うや否や、さっきまで血だまり生成機と化していた人は、あっという間に高さ3mほどの氷柱に閉じ込められてしまった。

 おおう、中々ド派手。

「これ、どのくらい持つかしら?」

「さあ……2週間は持つんじゃない?全力でいったから」

 そ、そうかね。2週間かあ……思ったより長かったけど、長い分には問題ない。

「じゃあ、他のもよろしく」

 そうして、私を攫った一味の方を片っ端から氷柱に閉じ込めていき、手錠の順番待ちをしていた人たちの番になりました。

 と、その中に真っ赤な髪の美人さん……ダリアさんを発見。

 その隣には宿屋のお爺さんもいる。

 あー、やっぱりグルだったかー。

 そしてダリアさん、自分も氷漬けにされそうだと分かると、なんか言い出した。

「アンタ達!私が居なくなったら困るでしょ!?剣闘士大会に出られなくなるわよ!」

 ……あ。

 そうでした。私達、剣闘士大会の登録を、ダリアさん含めてやっちゃってるのである。

「あれって今から登録の変更とか……」

「できないわよ!できるんだったらわざわざアンタ達のパーティとして登録してから、なんてめんどくさい事してないわよ!」

 あーあーあー、成程。ダリアさんはこの時点で一つ、私たちを強請れるネタを仕込んだ、ってわけかあ。

 ふーむ。

 しかし、仮にそうでも、こんなのをメンバーに入れて大会に出る、とか、裏切られそうで嫌だよね。というか、絶対マイナス方向にしか働かないよね、こいつ。

 ……うん、よし。

「ダリア、起立」

「は?アンタ誰よ、ていうか」

「起立」

 短剣を出してやれば、大人しく起立してくれました。

 ……ふむ、身長は私よりも高いようだけれど、それは靴のヒールの分かな。

 髪の長さは……おお、大体一緒だ。

 肌の色は……健康的な小麦色、って所。よし、目はオレンジ。

 胸の質量は……ふ、ふははははははは!勝った!

「やーい貧乳!」

「う、うっさいわね!何よ、アンタだって大したサイズじゃないでしょ!?」

 うむ。これならいけるね。胸はまあ、目立たない服着れば大丈夫でしょう。

「こいつもやっちゃっていいわよ」

「は、はあ!?だから、アンタ達大会が」

「『アイスコフィン』」

 そしてダリアさんも氷柱の住民となってしまいました。


 ダリアさんと話してる間になんか既に全員凍らせ終えていたらしく、これで全員が氷漬けの置物になってしまった。

 一瞬で凍ってる訳だし、溶けたら戻るかもね。ね。

 死体じゃないし、まあ、発見する側の精神にもよさげ。

 探しに来たこいつらの仲間が発見して、口コミでばら撒いてくれれば更によさげ。

 その前に別の誰かに発見されれば尚よし。

 この量の氷を溶かすのには相当時間も労力もかかりそうだしなあ。

 ということで、私たちは南西の寂れた港を後にしたのでありました。




「……で、大会、どうしよう」

 現在、私の『転移』分のMPが回復していない為、例の宿屋に来ています。

 家主氷漬けだし、ちょっと借りておくぐらいいいよね。

「あ、それについては、一応出場するだけならできるよ。私が『変装』でダリアさんっぽくなればいいから」

 因みに、今はローズマリーさんに戻ってます。勿論メイドにも戻ってます。

「……ちょっとなってみろ」

「おーけい。『変装』」

 鏡を見ながら謎発光を起こし、紅い髪、小麦色の肌、オレンジの瞳になってみましたよ。

「……顔が」

「悪いと!?ご無体な!?」

 それはどうしようもありませぬ。

「悪いとは言ってないが……顔見たらばれるだろ、これ」

「色が変わるだけだもんねー……。印象はかなり変わってるんだけどさー」

 この『変装』、残念ながら目と髪と肌の色を変えるに留まるスキルの模様。

 どうりで質量が変わらない訳である。

「最悪の場合は仮面でなんとでもなる!」

「ああ、まあ、そうか。……で、お前は戦えるのか?」

 そこが一番の問題なんだよねー。




「というか、ダリアはモノの部でも登録してたから、お前がダリアに成りすますとしたらモノの部にも出ないといけないんだが」

「一瞬で場外退場してくれるわ」

 退場する分には一瞬でできるぞ。『転移』でステージアウトしてやればいいだけだからな!

「お前、『勝者は敗者に要求できる』っていうの、忘れてるでしょ。馬鹿なの?」

 胸張って言ったら、羽ヶ崎君に馬鹿にされた。

 ああうん、忘れてた。忘れてたとも。

 そうだー、負けるのもリスクなんだよね。

 うーん、どうしたもんか。

「でも、他にダリアに似てる人を探してきて雇いなおすにしても、口止めがめんどくさいし、何よりまた裏切りが勃発しそうだよねえ……」

 そうなのだ。だから、だから……一番手っ取り早いのは、だな。

「私が戦えればいいんだよなあ」

「そうだな」

 ……うん、いいや、ちょっとこれは保留。保留にさせてください。

 ちょっと無理ゲーすぎてとっかかりすら見つからない。




「そういえば、この世界の人って、『スキル』を持っていないらしいな」

 あ、うん。それ私も思った。

『スキル』と『魔法』は別物で、かつ、『スキル』は異世界人が使うか、『失われた恩恵』として、遺跡とかからの『発掘品』に残るのみ。

『失われた恩恵』とか、そこら辺の認識も皆さんとすり合わせしたら、うん、大体皆そんなかんじの認識だった。

「でも、『封印手錠』付けたら、僕は殆どスキル使えなくなったんだよね」

 おや、羽ヶ崎君は『スキル』じゃなくて『魔法』を使ってる、ってことなのか?

「俺も……殆どの技が駄目だった」

 おや、角三君も!?角三君は魔法っぽいスキルは持ってなかったはずなんだけども……。

 ……。あ。

「よし、ここらで皆さん、ちょっとまた、スキルの整理をしませんか?」

 もしかしたら、もしかするかもしれないので。




 という事で、まとめるとこんな感じになりました。




 鈴本『浪人』

『斬撃』『片手剣術』『飛翔』『曲芸』『剣舞』『毒耐性』『回復速度上昇』『魔法剣』『居合』『温冷耐性』『冷静』『虚勢』『鬼神』

『疾風斬』『燕』『翡翠』『揚羽』『百舌鳥』『鷹』『桜花』『菊花』『六花』『影斬』『旋風』

【誘惑】【攻撃力上昇】【守備力上昇】【敏捷力上昇】


 羽ヶ崎『魔導士』

『水魔法』『氷魔法』『風魔法』『詠唱省略』『毒耐性』『温冷耐性』『光魔法』『天候魔法』『歌謡い』『微調整』

『アイスビュレット』『アイスコフィン』『ウォーターカッター』『清流』『ウィンドカッター』『テンペスト』『レンズ』『アイスシールド』『アイスエッジ』『ウォーターウォール』『ブリザード』『ハリケーン』『ライトニング』『スプラッシュ』『ソーラーショット』『水鏡の歌』

【魔鏡】【守備力上昇】


 柘植『科学者』

『鑑定』『土魔法』『マッピング』『土木魔法』『緊急回避』『毒物辞典』『探索』『遠見』『温冷耐性』『探究』『薬物辞典』『観察』『実験』

『アースウォール』『アースビュレット』『耕作』『泥沼』『ポイズンレイン』『ポイズンアロー』『毒沼』『砂城』『塔』『岩石雨』

『毒物辞典』=『毒物制作』+『毒耐性』+『毒物鑑定』+『毒攻撃』

『薬物辞典』=『薬物制作』+『薬耐性』+『薬物鑑定』+『薬攻撃』

【暗視】


 角三『騎士』

『剣術』『勇敢』『斬撃』『盾術』『空腹耐性』『毒耐性』『炎耐性』『魔法剣』『温冷耐性』『跳躍』『耐久』『光魔法』

『クリーンヒット』『シールドガード』『エアスラッシュ』『フォースブレイド』『ファイアガード』『エネルギーソード』『エクスプロード』『ライトニング』『ブラストアタック』『グロリアスブレイド』

【跳躍】【攻撃力上昇】【敏捷力上昇】


 加鳥『銃士』

『弓術』『狙撃』『風魔法』『機構制作』『改造』『毒耐性』『連射速度上昇』『金属加工』『熟練』『光学機構』『変態技巧』『スナイプ』『温冷耐性』『出力増加』『機動』『出力調節』

『ニードルショット』『ウィンドアロー』『清風』『ウィンドカッター』『レーザーショット』『破壊光線』『抹殺光線』『イレイズビーム』『滅光』

【必中】【守備力上昇】


 針生『アサシン』

『短剣術』『二刀流』『目利き』『木材加工』『アクロバット』『毒耐性』『飛翔』『暗視』『隠密』『闇魔法』『温冷耐性』『立体把握』『隠形』

『クロスカッター』『二段斬』『隼』『鷲』『梟』『シャドウエッジ』『影渡り』『死神の刃』『シャドウウォール』『シャドウビュレット』『帳』

【エネルギーソード】【攻撃力上昇】【守備力上昇】【敏捷力上昇】


 鳥海『ガーディアン』

『剣術』『盾術』『堅牢』『金属加工』『解体』『器用』『感知』『斧術』『槍術』『温冷耐性』『耐久』『重装備耐性』『炎耐性』『回復速度上昇』『話術』

『クリーンヒット』『シールドガード』『大防御』『大切断』『フロートシールド』『城壁』『要塞』『クラッシュ』

【地獄耳】【ファイアエッジ】【敏捷力上昇】


 刈谷『神官』

『杖術』『光魔法』『聖魔法』『石材加工』『鑑定』『温冷耐性』『宝石加工』『器用』『付与』『連続詠唱』『自然回復』

『浄化』『聖光』『レーザーショット』『光球』『ヒール』『キュア』『シャインストーム』『箱舟』『祈り』『流星雨』『オートヒール』

【光の揺籃】【守備力上昇】


 舞戸『メイド』

『お掃除』『熟成』『歌謡い』『解体』『手当』『回復速度上昇』『水撒き』『被服職人』『番犬の躾』『発酵』『皮鞣し』『変装』『人形制作』『人形操作』『火魔法』『暗視』『遠見』『器用』『鑑定』『温冷耐性』『毒耐性』『強酸耐性』『痛感耐性』『子守り』

『祈りの歌』『願いの歌』『着火』『火力調節』『火消し』

『被服職人』=繊維錬金+糸紡ぎ+機織り+裁縫+染色+刺繍

【転移】【魔声】

【防御力上昇】【落下ダメージ軽減】【最大MP増加】【最大MP1.5倍】【移動系魔法消費MP減少】【操作系魔法消費MP減少】【家事系スキル効果上昇】




 と、まあ、こんな感じだったのですが。

「おい、なんだこれは。何故お前のスキルがこんなに増えている」

 あ、それは刺繍と染色の賜物ですな。

 あと火魔法関連があったり、ああ、あと、アレだ。ヘビに食べられて一気に3つも耐性付いたから、それだ。

「『強酸耐性』……」

「『痛感耐性』……」

 なんか、刈谷と加鳥がそこら辺見て悲しそうな顔した。なんか申し訳ない。

「皆、結構変わってるね」

「お前と違って僕らは戦ってる訳だし」

 そりゃそうだね。

「舞戸さんは……台所で戦ってるんですよね!女性の戦場ですよね!」

 刈谷のフォローが妙に悲しいぜ。

 しかし、あれだ。

 私はあんまり皆さんの戦闘を見ないので、それぞれどんな技なんだかよく分からんけど、とりあえず凄そうだという事は分かったぞ。

 逆に言うとそれだけだ!


「で、だね。これこれ、見てよ。羽ヶ崎君のスキルと角三君のスキルって、殆どカタカナ」

 ドッグタグと頭付き合わせながら皆で確認するけど、やっぱり羽ヶ崎君と角三君のドッグタグのカタカナ率が異様に高い。私なんて、カタカナ1つも無いしな!

「……それが何?」

「カタカナが『魔法』で、それ以外が『スキル』なんじゃないの?」


 実験。『封印手錠』を付けた羽ヶ崎君に片っ端から技を使って行ってもらいます。


 結果。『清流』と『水鏡の歌』は使えた。あと、水を特に何をするでもなくだばーっと出す、とか、ちょっとそこにあるもの凍らせてみる、とか、そういう事は出来ていました。

 うん、これは私とも一致するんじゃないかな。私も『封印手錠』つけながら『火魔法』使えたし。

 ……つまり、『火魔法』『水魔法』とか、そういうのは『魔法』ではなくて『スキル』!よって『封印手錠』では封じられない!

 そしてその基準はカタカナかそれ以外か!

 ……なんかアホみたいだけど、これはマジなのではないでしょーか?


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