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33話

 元の世界に帰る方法が分かったにもかかわらず、意味が分かりませんでした。

 ということで皆で推理しましょう。

「世界の欠片って何よ」

「さあー……なんか見たらぱっと分かるもの、だといい、ね……」

 ……目に見えない、とかは勘弁してくれよ?とか思うんだけども、うーん、実際、そうなってる可能性もあるし、あー、分からん。やっぱり『アライブ・グリモワール』にちゃんと聞いとけばよかった!


 しかし、意外とさっさと、しっくりくる答えが見つかってしまいました。

「世界の欠片、って、教室か生徒、って考えるのが妥当じゃない?あるいはその両方か」

 流石、羽ヶ崎君は私と頭の出来が違う模様。

 まあ、普通に考えればそうか。うっかりしてた。

 私たちの世界のものは、今や私達生徒と、教室しかないのだから。

「じゃあ、教室を集めて、学校の形に戻せばいいって事?」

「って考えるのが妥当じゃないの?分かんないけど、とりあえず今後はその方針で行けばいいんじゃないの」

 そうかー。学校を元の形に、ね。

 教室がばらっばらだもんね。これを集めて、合体させればいいんだよね。

 ……あれ、なんかのど元まで出かかってるんだけど、なんだっけ、なんか、大事なことがあったような……。

 あ。

「校歌って、その為にあるんじゃないかな?」


「あー」

「あーはいはい、それだ、多分」

 以前校歌を合唱してみたら、教室が浮いた。

 あれは、化学実験室が2Fにある教室だったからじゃないのか。

 多分、全ての教室に人が入って、校歌歌ったら、全部浮いたりなんだりして元に戻りそうな気がする。

 うん、そう考えると色々しっくりくるんだよね。

 とりあえず、今後の方針も決まった所で、すっかり夜も更けた事なので就寝。

 いやはや、思いのほか『アライブ・グリモワール』さんは手こずらせてくれましたなあ。

 ……あ、一応行っておくか。

 皆さんが就寝したのを見てから、もっかい本に頭突き。そして『共有』。


「やっほー」

『本当に来た!』

 本の中でまた本を見つけた瞬間、これだよ!

 なんだよなんだよ、信用無かったのか。

「いや、一応、ちゃんと約束は守るよ、って挨拶に来ただけ。もう帰ります。つか、寝ます」

 いい加減MPも消耗したし、眠いのです。

 本との『共有』は疲れない方だけど、それでもやっぱり消耗は大きいのです。

『もう少し話していかぬか?何分暇で』

「うるせー、帰るったら帰るの!睡眠不足はお肌と頭の天敵なの!」

 生憎私は暇じゃないのだ。これから寝るのに忙しいのだ。

 という事で帰してくれるように言うと、今度はすんなり謎発光させてくれた。

『そういうなら仕方ない、また来るのだぞ』

「うん。今度は挨拶だけじゃなくて少しお話ししていけるように時間工面するから」

『無理はしなくていいからな』

「うん。じゃあまたねー」

 なんかますます『アライブ・グリモワール』が可愛くなってきたなあ。




 はい、朝です。

 ちょっと寝過ごし気味です。やばいやばい、朝ごはん作らねば。

 ご飯は昨日大目に作っておいた野菜スープにトマトを投入して味を変えて出すことにしよう。

 それから肉の薄切りをしっかり焼いた奴と野菜サラダとパンとジャムでいいや。

 ご飯を炊く時間はちょっとなさそうだ。ご飯派の皆さんごめんなさい。


 ご飯ができたら皆さんが起きてくる、っていうのが最早定番だ。

 なんだ?こいつらはご飯ができるタイミングに目が覚めるスキルでももってるのか?ん?




 ご飯も終わって、本日の予定の確認。

「今日は1Fに入る準備をする。『アライブ・グリモワール』の情報によれば、1Fには人間が住んでいるらしい。しかも奴隷制度があって、かつ、舞戸は盗まれる可能性がある。そこら辺の対策の為、今日一日は準備日に充てる。各自さっき話してた通り、作るもの作って、習得するもの習得してくれ。午後までに終わらなかったら続行。午後までに終わるようなら、午後は作戦会議にしようと思う。じゃ、解散」

「ちょっと待てい!なんだなんだ、『さっき話してた通り』って!私知らんぞ!そんなの!」

 あっさり流されそうだったので慌てて突っ込みを入れると、何とも言えない顔をされた。

「あー……そりゃ、な?寝る前とか起きて着替えたりしてる間とかに講義室で話してたことだからお前は知らなくて当然だ」

「何を話していたとな?」

「じゃ、各自作業開始」

 逃げるが勝ち、とでも言うように、さかさか皆さん、散っていってしまった。

 ……なにやら、非常にぼっち感。




 皆さん、何やらそれぞれやっているようなので、私は私で『刺繍』に勤しみます。

 ロングパニエの裾の方に、月桂樹で染めた糸で月桂樹の葉みたいな模様を刺繍していく。

 ……自分で手動かしといてなんだけど、早すぎるよ、これ。

 なんか頭が手に追いついてないという不思議感覚。


 さて、できました。

 できたので、さっそく装備。

 さてさて、どのぐらい性能が変わったかな?


 性能実験の為、人形をまとめて操作してみることに。

 全部自立思考で起動させてみる。あ、もちろん一体ずつ増やしていく感じに。

 一体二体……とやっていって、なんと、20体まで動かすことに成功。

 つまり、大体性能1.5倍!2体多いのは多分、前回『人形操作』の限界に挑んだ時よりも私自身のMPか操作の技量が上がってる、って事だと思う。

 一応『鑑定』してみると(こっちを先にやれよ、と思わんでもないけど、やっぱり試してみたくなるのよね、だって私、化学部なんだもの)、『最大MP増加』『最大MP1.5倍』という、二つの効果が付いていた!

『最大MP1.5倍』の方が刺繍の効果なんだろうなあ。刺繍すごい。

 ……しかしこれ、月桂樹染めの布に月桂樹染めの糸で刺繍したけど、別のだとどうなるんだろう。

 というか、刺繍糸自体に効果のある染色がなくても効果があったりしないだろうか?




 はい、気になったら実験です。

 実験。幅5㎝、長さ50cm位の長い布を用意。これを6枚用意して、そのうちの3枚を月桂樹で染色。

 そして糸を3種類用意。月桂樹染めと、ローズマリー染めと、無染色。

 そして月桂樹の布に月桂樹の糸で刺繍した物、無染色の布に月桂樹の糸、月桂樹の布に無染色の糸、月桂樹の布にローズマリーの糸、月桂樹の布に月桂樹とローズマリーの糸、無染色の布に無染色の糸、というかんじに5パターン作る。

 そしてそれらを一本ずつ鑑定。また、適当に鉢巻にでもして装備してみて、『人形操作』への影響も調べる。これは効果が分かりやすいように無地のワンピース一枚に鉢巻で行う。




 結果。

 ええと……えらく、ややこしい事になりました。

 まず、一番分かりやすい月桂樹×月桂樹。

 これはさっきと同じ、『最大MP増加』と、『最大MP1.5倍』の二つの効果。

 一度に操作できる人形の数は9体。

 鉢巻はロングパニエよりよっぽど面積少ないから、まあこんなもんだ。


 次に、まあ分かりやすい月桂樹×無染色。

 これは、『最大MP増加』のみ。

 ただし、操作できる人形は10体。

 ……つまり、MP増加の幅が大きい、って事だ。

 これは布の効果を糸が補強した、って事だろう。


 そしてよく分からん無染色×月桂樹。

 なんと、『魔法防御上昇』という効果になってしまった。

 操作できる人形は3体。


 そして更にわからん月桂樹×ローズマリー。

 こちらはなんとなんと、『消費MP減少』。

 操作できる人形は9体。


 そして、一番すごい月桂樹×(月桂樹+ローズマリー)。

 これは、『最大MP増加』『消費MP減少』『最大MP1.5倍』。

 操作できる人形、なんと14体。


 そしてなんとなく、分かるような無染色×無染色。

『防御力上昇』だった。

 操作できる人形、3体。つまり、私の装備に頼らない人形操作の限界です。




 ……ええと、なんか分かったような分からないような、微妙な感じだけど……刺繍するとその布の効果を刺繍糸の効果内で引き出す、ってかんじだろうか。

 ……うん、またその内もうちょっと調べてみよう。

 今は昼ご飯の準備だ。うん。




 昼ご飯は熊肉の焼き物とご飯と味噌汁と煮物です。

 朝がパンだった反動で和食気味。

 味噌汁はインスタント故郷ですからなあ。ちょくちょく摂取せねば。


「そっちは終わったか?」

「あ、うん。一応できた。けど……マジでこれ使うの?」

「それが一番安全だろ、っていう事、なんだが……」

 ご飯中ですが、皆さんの表情が微妙です。

 自己嫌悪と面白さとやっちまった感と安心がせめぎ合ってるような、そういう超・微妙な顔です。大丈夫かお前ら。

「鈴本たちの方は?」

「ああ、まあ、なんとか。……本当にやるのか?」

「何を今さら」

 ……あのー、私だけぼっちなのは仕様ですか?




 ぼっち感の中、寂しくご飯を終え、片づけた後、作戦会議とやらに入りました。

 私ぼっちだからのけ者かと思ったけどそんなことは無かった。あーよかった。

「明日から1Fに入る事になると思う。フロア移動の問題点だったケトラミについては、舞戸が『転移』できるようになったからフロア移動しても連れていけそうだよな。よってこれは問題なし」

 そうなのだ。『転移』は私以外のものも運べるので(その分MP食うけど)遺跡に入れないケトラミも、遺跡を通らずに『転移』で別のフロアに運べちゃうのである。

 いやはや、これで私の戦闘力の低下を防げますなあ。よかったよかった。


「で、問題はどちらかというとこっちだな。この世界の住民について」

『アライブ・グリモワール』によれば、この世界には身分制度がきっちりあって、しかも奴隷制度があるときた。

『アライブ・グリモワール』の話が本当なら、私というメイドを従えている時点で皆さんの身分は市民以上になってしかるべきなんだけども、まあ、そこんとこも不明瞭ではあるし。

 そして何より、私、盗まれる恐れがあるそうな。

 召使いという低い身分かつ異世界人かつ女、と、価値が上がる条件が揃いまくってるという事らしい。

 迷惑な話である。

「一番心配なのは、メイドだな。舞戸は盗まれる可能性すらあるらしい。それで、だ。……非常に、言いにくいんだが、舞戸」

「お留守番は嫌でござる」

「ああ、うん、それでもいいんだが……そうじゃなくて、これ」

 これ=首輪にリード。かなりデザインが装飾品めいているせいで、只の小洒落たチョーカーみたいな感じですらあるけど。午前中作ってたのはこれか。

「……OH」

「こうするのが一番確実に盗難防止になるんじゃないか、っていう話になって。これ、使うのは……流石に嫌だよな、うん、すまん、何でもない。忘れろ」

「君の趣味が垣間見えた」

「おい待て、決して俺の趣味とかそういう話じゃない断じて!」

 ……うん、まあ、つまり、私が盗まれないようにしておくために、物理的に繋いでおこう、っていう、至極簡単な話なんだけどさ。

 なんだけど、さ。

「流石に遠慮したいけれどそうも言ってられない状況になったら使うわ」

「ああ、うん……すまん」

「いいよいいよ、元はと言えば私がメイドなのがいかんのだし」

「しかしメイドが居ることで俺達全員奴隷身分、という事にはならなさそうだしな。むしろお前がメイドで良かったと思う」

 あー、それもそうか。うん、たまにはメイドも役に立つね。

「まあ、いざとなったらそれのお世話になりますわ」

「ああうん……本当にすまん」

 なんか先行きが不安になってきたなあ。使わなくて済むことを祈りますよ。




「それから、二つ目。俺達が住民たちと接触するとなると、言語が同一じゃなかった場合、色々やばい」

 あー、それ考えてなかった!

 まさかこの世界の人も日本語……喋ってるよね?ケトラミさんもハントルも『アライブ・グリモワール』も。

 ……あ、『共有』してるからそう変換されてるってだけだったりする?

「なので、俺と羽ヶ崎君と社長が『翻訳』なるスキルを入手した。入手方法も大体分かったんで、お前らも今日中に取得しておくように」

『翻訳』スキル。取り方は簡単。

 ひたすら日本語以外の文を読んだり、聞いたりするだけ!

 ……はい。つまり、科学研究室にあった英語の本を読む、と。そういうことです。

 尚、取得にあたって分かったんだけども、英語が苦手な人の方がスキル取得が早かった。

 あれか。英語は異世界語です、ってことかな?

 ……因みに、私はスキル取得が3番目位に早かったです。わーい!英語なんてくそくらえだーい!

 でもスキルのお蔭でこれから英語だって理解できるようになってしまった。素晴らしきかな、スキル。




「で、これは今後の方針を定めておきたい、って事なんだが」

 はい、作戦会議に戻ります。

「もし、奴隷身分にされている生徒がいたら、どうする?」

 ……おおう、ヘビィだ。


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― 新着の感想 ―
[良い点] やつの趣味が知れた。 [気になる点] 男装とか『スゴイ服』の方が効きそう。(あとハタキ掛け) [一言] ……等身大奴隷人形でも良さそうだなぁ……
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