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23話

「……あれ、おはよ」

 気づくと、ケトラミさんに埋もれて寝てた。

 あ、そっか。MP切れてぶっ倒れたんだっけか。

 ……あれ?

「今何時ッ!?」

 慌てて実験室に入るも、時すでに遅し。

「……真夜中12時……」

 や、やっちまった……晩御飯とかどうしたんだろう、と思ったら、黒板に書置きがあった。

『起こしても起きなかったんで適当に飯食って寝ます。お疲れ』

 ……あー……メイドの仕事が……。

 ……しょうがない、寝なおすか。よし、ケトラミさんに埋まって寝よう。うん、そうしよう……。『あんま無理すんなよ』とケトラミが慰めてくれるのがかえって心にくる……。




 朝です。

 4時です。いっぱい寝たからね。早く目が覚めたよ。

 昨日の夕ご飯作り損ねた分、朝は頑張っていきましょう。

 っつっても、ご飯とスープと軽い肉料理と果物位なんだけどね。

 朝っぱらからそんなに食べないしなあ……。

 せめてもの抵抗でスープはきっちり出汁とって作った。


 皆さんが起きてくるまで暇なので、スープをことことやりながら新しいスキルを試してみることに。

 最初は『火魔法』。うはは、ついに私にも魔法が使えるようになったわけです!

 これでバンバン汚物は消毒だー!できるぞ!と思いきや……。

「……OH」

 あ、水酸基じゃないです。感嘆符です。

 いや、あまりのしょぼさに、つい。

 ……私に使える火魔法、それは……例えるならば、『コンロの強火』。

 いや、弱火にもできるけどさ、弱くなる分には攻撃力上がらないんだよ!下がる一方じゃん!なんだこれ!

 流石メイド職!私の期待を裏切らないぜ!勿論悪い意味でな!

 ……まあ、ご飯美味しく炊くのが楽になったから良しとしよう……。

 始めちょろちょろ中ぱっぱ、は案外嘘っぱちでさ、ご飯ってこう、割と最初から強めの火で沸騰させて、後は弱火でじっくり水分を飛ばしていく、っていうかんじなんだよね。

 今までその調整にああでもないこうでもないしながら頑張ってたんだけども、これからは意識の調製だけで済むのである。

 ……ちょっと試しに、ガスコンロの如く、3つぐらい火を出してみた。

 ……うん。3つ、出るね。

 じゃ、じゃあ、1つは強火で、もう1つは弱火で、残った奴は消火、ってのを一気に……。

 ……うん。できるね。

 あ、なんだ。これ、便利じゃん。

『火魔法』なんて言うから残念なかんじするけどさ、『MPコンロ』とかだと思えばさ、凄く便利じゃん!

 これは嬉しいなぁ。薪で頑張って火力上げなくても一気に強火にできるし、これでチャーハンとか作るのも自由自在だね!


 さて、次は『人形制作』だ。『人形化』とは違うみたいだけど、これは一体どういうスキルなのよ?と思い、とりあえず布を織って(峯原さん達が漁っていった服とか布とかはなんとなく嫌だったんで全部お焚き上げしました。)それで人形を作ってみよう。

『人形制作』を念じながら布を手に取ると、すいすい手が動く。

 ふんふん、あー、成程。これもスキル様様な感じですな。

 作り方を手が知ってるみたいに動いてくれる。

 そうしてできたのはケトラミ人形である。

 うん。中々いい出来であります。

 こう、生地が起毛してるのがいいね。これもスキル様様で、念じたら一発で加工できちゃいました。いやー、凄い。私が今まで織り方変えたりして試行錯誤して機織りしてたのが馬鹿みたいである。


 そして、『人形操作』だ。

 よし。動け、と念ずると、ケトラミ人形がぴく、と動く。

 歩け、と念ずると、まっすぐ歩く。

 あ、そうじゃない、右右、と思えば、右に行く。

 ……かなり、自由に動かせることが判明。

 そして人形動かすんだったら、是非とも自立思考させたい!と思うわけで。

「ドア開けてきて」

 と命ずると、ケトラミ人形はてくてくと歩いていき、ぴょんとジャンプして鍵を開け、またぴょんとジャンプして上手い具合にドアを開けて見せた。

 おー、すごいすごい。

 ただやっぱり、精度は自分で直接動かした方がいいね。

 当然だけど。

 あと、『人形操作』には割とMP食う事が判明。

 うーん、これ、人形自体に染色した布使ったら改善されないかな。後で実験してみよう。


 けど、こうやって自立思考してくれる人形が居れば、家事がはかどりそうな気がするんですよねえ……一緒にお掃除とかやっちゃったりして。

 っつっても、『お掃除』スキルの前にはお人形のアナログ掃除なんて無力同然なんだけどね。でもロマンだから。ロマン。




 早速メイドさん人形をこさえ始めた所で、皆さん起床。

「あ、舞戸、もう大丈夫なのか?」

「大丈夫、って、何が」

「いや、昨日はマジで心配になるぐらい動かなかったから」

 ……MP切れのときって、それはもう、『こいつ死んでるんじゃないの?』レベルで動かないらしい。寝返りはもちろん、寝息の音すらしないレベルで静かーにぶっ倒れてたらしい。

 そりゃご心配をおかけしまして。

「そりゃすまんかったね。ところで峯原さん達は?」

「あー、それは三枝達が一応連れて帰った。アイツらからの『お礼』はまだだしな、あっちはあっちでやるみたいだ。ただ、一回落ち着いたらこっちに来るかも、とは言っていた。あと、鳥海と刈谷にすごく謝ってた」

 うん、最後のを聞いて安心した。

 聞けば、鳥海と刈谷をモンスターの群れに向かって突き飛ばしたのは峯原さんの取り巻きだったらしい。鳥海と刈谷を置いて逃げた、ってのはアレだけど、聞いた状況じゃあ、うん、責められないしね。

 刈谷が『浄化』できると分からなかったわけだから、三枝君達の視点から行くと、あそこで鳥海と刈谷を見捨てて逃げないと彼ら自身も死ぬ羽目になったわけだし。

 元凶でもない三枝君達が謝る事でもなかろうに、それでも謝ってくれたんだからまあ、悪い人では無いんだろう。

 というか、元々情報室組は峯原さん達に手を焼いていたそうで、そしたら峯原さんの『人形化』スキルの会得の所為で、ますますえらいことになったそうで。

 私が『人形化』のスキルを『お掃除』したことについてもお礼を言っていたらしい。

 只、そのせいで、まあ、私が生きてんだか死んでんだか分からん状態になってしまって、それについても謝り倒しだったとかなんとか……。

 ……うん。峯原さん達はたっぷりお礼されるといいよ。




 そして朝食を摂った所で、今日は食料の貯蓄の日にすることになったので、皆さんとケトラミが出かけていきました。

 ケトラミは以前から皆さんが前から乗りたがっていたので貸しました。

 多分今頃順番に乗って遊んでると思う。


 なので、私は朝食前に気になってた実験を開始。

 布を『染色』で月桂樹染めとローズマリー染め、ミント+ローズマリー染めにして、それをそれぞれ人形のエプロンドレスに仕立てていく。

 それをメイドさん人形に着せて、実験スタート。

 メイドさん人形を机の上でそれぞれ自立思考と直接操作で躍らせてみて、それぞれのMP消費具合を確認する。


 結果。

 ……非常にややこしい事になりました。

 ええと、まず、直接操作中の人形は私の体の一部扱いらしく、最大MP増加、MP回復速度上昇、MP回復の全ての効果がそのまんま使えた。

 因みに、面白い事に……私の場合、ある一定の布面積まで行くとそこからは染色した布面積を増やしても、効果は増えない、という現象が起こったわけですが……。

 人形の分は、私のキャパシティと別換算らしい。

 つまり、私が限界まで月桂樹染めの布を装備し、更に最大MPを上げたくなったなら、月桂樹染めの布を装備した人形を操作すればよいのである。


 しかし、自立思考させてるときは、私の体の一部っていう扱いにはならないらしい。

 つまり、自立思考させてるときは、私からMP持っていきっぱなし。人形の方から私に対しての恩恵はナッシング。

 ただし、その分を人形が勝手に使っているようである。

 つまり、自立思考させる分には、最大MP増加では人形の最大MPが増え、MP回復速度上昇ではより私から持っていくMPが減り、MP回復では人形が適当に使ってMPを勝手に回復している。

 ……という風になりまして、さて、どうしたもんかな。


 例えば、操作する人形を超大量にして、それらの全てに月桂樹染めの布を限界まで装備させたとしたら、それは私の最大MPを大きく増加させるだろう。

 あるいは、操作する人形にミント+ローズマリー染めの布を装備させておいて、私のMP電池みたいに使うのもアリかもしれない。

 自立思考させるんだったら、ローズマリー染めが一番私への負担が少なくなるパターンになる。

 けど、こっちも月桂樹染めの布を装備させたら人形自体のMPが増加……つまり、人形にできる事が増えるみたいなのだ。

 さっきの『ドア開けて』も、月桂樹染めの布を装備した自立思考人形に指示すると、触りもせずにドアを開けてくれる。

 あれか、魔法か、魔法なのか。人形が魔法を使うのか。ファンタジーだな、おい。




 ……結局、当分は自立思考型の人形を二、三体出してご飯とかのお手伝いさせようという事にした。

 で、その分には私への負担が少ない方が望ましいので、メイドさん人形三体にはローズマリー染めのエプロンドレスを着せることにした。

「よし、ということでそろそろお昼の支度をするので、メイドさん達よ、私のお手伝いをするのだッ!」

 メイドさん人形三体は、一列に並んで敬礼してみせた。

 ……やばい、なんか可愛いぞ、これ。




 人形も形状によってできる事が違うらしい、という事がお昼ご飯の支度中に分かった。

 メイドさん人形達は鍋に水を汲んできてくれたり、鍋をかき混ぜておいてくれたりするが、ケトラミ人形にはそういったことはできないようだった。

 ……そりゃそうだね、ケトラミは四足歩行だしね。

 代わりにケトラミ人形は足が速い事が判明。ぱぱっと外に行って、ぱぱっと月桂樹の葉を三枚ほど持ってきてくれました。

 私の全力疾走と同等かそれ以上のスピードが出てる気がする。

 メイドさん人形は移動速度がそんなに早くないから、何かの時には使い分けが必要かもね。




 とかやってたら、皆さんが返ってきた。

「お帰りなさいませご主人様ー」

「メイドが増えた……だ、と……?」

 メイドさん人形三体と一緒にお出迎えしたらまあ、なんつーか、いいリアクションをいただきました。

「わー、何これ、可愛いね」

「ふわふわしてる!ふわふわ!」

「可愛いだろう、可愛いだろう。やらんぞ」

 加鳥と針生がメイドさん人形をつつくと、メイドさん人形はそれに反応して指から逃げようとしたり、大人しくつつかれるがままになってたり、指と戦闘を始めようとしたり、なんか色々な反応をした。

 ……人形にも個性があるらしいなあ。


 さて、皆さんが持って帰ってきてくれたのはお魚でした。

 7人が釣りをしながら1人がケトラミライディングを楽しんでいたらしい。

 お前ら楽しそうだなあ……。ケトラミは一応私のだぞ?

 あ、お魚は晩御飯に食べる事にしましょう。お昼の支度はできちゃってるので。


 それはともあれ、お昼ご飯です。

 今日のお昼はパスタです。ミートソースの。

 あれだなー、乳製品あったらクリームソースとかもできるのになー。

 乳製品欲しいなあ。牛、落ちてないかなぁ。


「で、さっき聞きそびれたが、これはあれか?『人形制作』とかか?」

「うん。折角だから『人形制作』と『人形操作』試してみたらこうなった」

 可愛かろ?と鈴本に自慢すると、それに合わせてメイドさん人形三体もそろって小首を傾げて見せる。それを見た鈴本は何とも言えない表情になったが。

「……峯原さんもこういう平和的な使い方すればよかったのに……」

 角三君のいう事もごもっともで、峯原さんだってこういうスキルの使い方ができたはずなのだ。はずなのに、(多分)『人形化』で人間を人形みたいな状態にして、それをわざわざ操作してたんだから、趣味というか、性格というか、頭というかが悪いというか、なんというか。

「でも確かに、只の人形より人間を人形にした物の方が性能が良さそうですよね、スキルとか使える、っていうのはそれ自体が大きなアドバンテージですよ」

 ま、社長のいう事にも一理ある。

 スキルが使える人形って、絶対使い勝手いいじゃん。

 それ自立思考させとけばいいじゃん。

 あ、絶対それいいわ。私もできるんだったらやってたかもなあ。

 ……いや、無いわ。『人形化』させなくてもいいじゃん、普通に人間として戦ってもらえばそれで。

 それを峯原さんがしなかったのは……人形にした彼らと信頼関係が、無かったから、なんだろうなぁ、多分。




「このメイドさん人形はメイドさんなのに『お掃除』とかはできないのかあ、そっか」

 加鳥はなんか気に入っちゃったらしく、大人しくつつかれっぱなしているメイドさん人形をつつき続けている。

 それ気に入ったんならあげようか?

「メイドさん人形は流石にスキルの『共有』できないのかー」

 ……ん?

 ……え?今、なんと?


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― 新着の感想 ―
[良い点] ともだちはいいね! [気になる点] ともだちを『人形にする』とどうなるかしりたい。 [一言] 『人形のモデルに』すると? だがなー。 ……手芸も手芸スキルもなかったのだろなー……。
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