17話
おはようございます。今日も一日元気に過ごしましょう。
いやー、もっふもふに包まれての目覚めですよ、気分いいね!
「ケトラミ、おはよ」
『起きたならさっさと退け』みたいな顔をされたのでさっさと退くと、ケトラミは朝ごはんを探しにどこかへ行ってしまった。
ホントは夜の間にご飯するのが一番いいみたいなんだけど、昨夜は私のお布団になってくれてたからね。思う存分食べてきてください。
さて、私も朝ごはんを作るとしますかな。
朝ごはんはご飯と野菜スープと肉と果物!
ご飯ですよ、ご飯。いやー、やっぱり米っていいね。
あとは贅沢言うと、味噌があれば味噌汁にするのになあ、とちょっと残念。
どこかに大豆落ちてないかしら。
あ、そういえば発酵食品って、スキルでつくれるかな。
……そういえば、葡萄あったな。ピンクの。
あれ、アルコール発酵させられないだろうか。
まあとりあえず、ご飯を食べよう。ごはんごはん。
全員起きたのでハタキではたいて、ごはんですよ。
やっぱり鳥海と刈谷に特に好評だねえ。ごはん。美味しそうに食べてくれると嬉しいね。
……所で、ちょっと気になったんだけど。福山君曰く、英語科研究室には6人の生徒がいて、鳥海と刈谷曰く、情報室には17人の生徒がいるわけだけど、そいつらって、ご飯、どうしてるんだろう……。
絶対碌なもの食べてないよね。そもそも火は使えるんだろうか。いや、無いよな。鳥海と刈谷は乾電池とスチールウールで着火して、その火を絶やさないように頑張ってたらしい。
……うん、でも福山君も、鳥海と刈谷を見殺しにしようとした情報室の連中も、ご飯面で助けてやる気にならないからいいや。あと一週間ぐらいしてからまた考えよう。
「あれ、今日は出かけないの?」
「長い探索から帰ったばっかだし、今日は休日」
あら。道理で何人か、布団に戻ったわけだよ。惰眠を貪ろうという訳ですな。
今日はお弁当の申請も無かったしね。
そうかそうか、休日かあ。
見れば、惰眠を貪りに行った人以外は、実験室でなんかしかやってるね。
針生はなんかよく分からん物を木で作ってるし、加鳥はやっぱりなんかよく分からん物を作っている。あれか?クロスボウか?
社長は何か……フラスコに色々入れて、毒々しい黒紫色の液体を作ってるけど……あれか。あれ、毒か。毒なんだな。
そして、刈谷と鳥海は庭の一角で素晴らしいものを作っていました。
窯です。
「それ、どしたの?」
「ん?ああ、なんかね、俺が覚えたスキルに『金属加工』っていうのがあってさ。金属を何やかやするのに要るから、窯作らせてもらってるんだけど、大丈夫?」
「ちなみに窯を作っているのは俺の『石材加工』のスキルでして!この後は加鳥の使うパーツを作らせてもらう予定なんですよ」
……ほう。金属と、石、とな?
「……ここに、モンスターの牙があります。何故か金属製っぽいです」
牙が刃物の謎猪の、小さくてナイフに加工できないような歯を出す。
結構量があるからね。できると思うんだよ。
「鍋、作らない?」
人数が増えたら、鍋が足りなくなりまして。
そして、もう一つ。
「あと、石臼、作らない?」
そろそろ小麦粉とか米粉が欲しいのです。
そしてお昼ご飯はパスタになりました。
トマトソースのフェットチーネです。いやー、なんか一気にご飯レベルが上がった感じだね!皆さんには「何これきし麺の亜種?」とか言われたけども。
まあ、割と好評でした。
発酵がうまくスキルでなんとかできるなら、是非パンとかにも挑戦したい。
あ、その場合は食品用のオーブンを作ってもらわないとなあ。
さて、ご飯も終わりまして、にやにやしながら毒を作り続けている社長と、延々と何か作ってる針生と加鳥と刈谷以外の皆さんは食後の昼寝と洒落込んでいるようです。
君たち、一体何時間寝るつもりだね?いや、いいけどさ。
そして私は発酵食品の製造に挑戦しますよ。
まずはアルコール発酵から行こうかな。
ピンクのブドウを木の桶に入れて潰して……ええと、どないしよ。
……と、とりあえず物は試しだ。アルコール発酵しなさい!と念じてみる。
瞬間、スキルの発動にお馴染みの謎発光が起こり……桶をのぞき込んだら酔っぱらいそうになった。うええ、これ、もうアルコールになってるよ!早いよ!
……ええっと、しかし、これ、マジでちゃんとアルコール発酵してるんだろうか。
有毒な何かとかできてないだろうか。
そしてこういう時の社長である。『鑑定』してもらった。
「あ、大丈夫みたいです。『ワイン(ロゼ)』って出てます。毒ではないみたいですね」
あー、ピンクのブドウで作ったからロゼなのかあ。
……赤って、どうやって作るんだろうね?
その後、イースト菌っぽいのの発酵でパンの制作に成功し、大根の塩漬けの乳酸発酵にも成功した。
そしてドッグタグを見てみると、『発酵』というスキルが追加されていた。
わーい。またスキル増えたぞー。
という事で、今日の晩御飯は鹿肉のシチューです。
小麦粉とワインの存在が効いてます。
あ、因みに主食はご飯です。日本人だもの。
やっぱり、穀類の幅が増えるっていうのは即ち、ご飯の幅の広がりになるんだよね。
使える食材が増えてきたから、単純な順列組合せでも、組み合わせの数が増えてきてるわけで。いやはや、料理のし甲斐がありますなあ。
「さて、そろそろまた俺達のスキルその他諸々を確認したいんだが」
ああ、うん。私もそろそろ自分のスキルを自慢したくなってきてたんだよね。
結構増えたし、何てったって、『番犬の躾』だからね。ケトラミ様様だね。
ということで、全員で全員のドッグタグを見ることになった。
大体こんな感じである。
鈴本『浪人』
『斬撃』『片手剣術』『飛翔』『曲芸』『剣舞』『毒耐性』『回復速度上昇』『魔法剣』『居合』
『疾風斬』『燕』『翡翠』『揚羽』『百舌鳥』『鷹』『桜花』
羽ヶ崎『魔導士』
『水魔法』『氷魔法』『風魔法』『詠唱省略』『毒耐性』『温冷耐性』『光魔法』
『アイスビュレット』『アイスコフィン』『ウォーターカッター』『清流』『ウィンドカッター』『テンペスト』『レンズ』『アイスシールド』『アイスエッジ』『ウォーターウォール』『ブリザード』『ハリケーン』『ライトニング』
柘植『科学者』
『鑑定』『土魔法』『マッピング』『土木魔法』『緊急回避』『毒物辞典』『探索』『遠見』
『アースウォール』『アースビュレット』『耕作』『泥沼』『ポイズンレイン』『ポイズンアロー』『毒沼』
『毒物辞典』=『毒物制作』+『毒耐性』+『毒物鑑定』+『毒攻撃』
角三『騎士』
『剣術』『勇敢』『斬撃』『盾術』『空腹耐性』『毒耐性』『炎耐性』『魔法剣』
『クリーンヒット』『シールドガード』『エアスラッシュ』『フォースブレイド』『ファイアガード』『エネルギーソード』『エクスプロード』
加鳥『銃士』
『弓術』『狙撃』『風魔法』『機構制作』『改造』『毒耐性』『連射速度上昇』『金属加工』『熟練』『光学機構』『変態技巧』『スナイプ』
『ニードルショット』『ウィンドアロー』『清風』『ウィンドカッター』『レーザーショット』
針生『アサシン』
『短剣術』『二刀流』『目利き』『木材加工』『アクロバット』『毒耐性』『飛翔』『暗視』『隠密』『闇魔法』
『クロスカッター』『二段斬』『隼』『鷲』『梟』『シャドウエッジ』『影渡り』
鳥海『ガーディアン』
『剣術』『盾術』『堅牢』『金属加工』『解体』『器用』『感知』
『クリーンヒット』『シールドガード』『大防御』『大切断』『フロートシールド』
刈谷『神官』
『杖術』『光魔法』『聖魔法』『石材加工』『鑑定』
『浄化』『聖光』『レーザーショット』『光球』
舞戸『メイド』
『お掃除』『熟成』『歌謡い』『手当』『回復速度上昇』『水撒き』『被服製作』『染色』『番犬の躾』『発酵』
『祈りの歌』『願いの歌』
『被服制作』=繊維錬金+糸紡ぎ+機織り+裁縫
……相変わらずの浮きっぷりだ。
そして、またしてもいくつかの疑問点が発生。
「ええと、僕も刈谷も『レーザーショット』を覚えてるけど……全然過程が違うよねぇ、これ」
「俺は『光魔法』で覚えたんですけど……あれ、加鳥は『光学機構』ですか、もしかして?」
「うん、そうみたいなんだよねぇ」
どうやら、ぜんっぜん違うスキルから、同じ技を手に入れる事があるようだ。
ふむ、スキル入手の過程も別々だったりするし、まあ納得はいくわな。
ただし、この二人の『レーザーショット』、発動過程も効果も、なんか違う。
加鳥の方は、『光学機構』で作ったというレーザー装置……うん、ほんと、ついこの間まで君、弓使ってたよね?うん……ええと、それは兎も角、レーザー装置からレーザーを出して攻撃する、っていうのが技の実態。
ところが、刈谷の方は、『光魔法』で手に光を集めて、それを一気に放出、みたいな感じの技らしいのだ。
……なんか、色々おかしくね?おかしくない?おかしくないのかなあ、まあ異世界クオリティという事で納得しよう。
それから、こちらはちょっと重要。
「ねえ君たち、私の記憶違いかもしれないけどさあ……職業、変わってないかい?」
角三君と私以外の人は、全員職業が変わっていました。
「……鳥海と刈谷って」
「ん?ああ、うん。元々は戦士と僧侶だったよ?けど気づいたらガーディアンと神官になってたっていう」
ああ、うん。そうか。えっとそれから、角三君だな。
「角三君は特に職業変わってないよね?」
「あ、うん」
「仲間だ!」
一人じゃないもん!職業変わってない人他にもいるもん!と小躍りしていたところ。
「あー、舞戸、非常に言いにくいんだが、多分、角三君は既に一回職業が変わった後なんだと思う」
……えっ?
そ、そんなバナナ!と思っていたら、説明がありました。
「まず、角三君のスタート時点の状況、覚えてるか?」
「トイレスタートぼっち」
「といれすたーとぼっち……」
なんとなく、角三君が不服そうだけどスルーさせてもらうからな。
「そう。つまり、この時点で角三君は俺達なんかよりずっと生き残るのに不利なんだよ」
そりゃそうだ。
戦力っていうのは人数の二乗。つまり、人数が1:2なら、その戦力差は1:4。
単純な数の暴力の前には、角三君、成す術が無いのだ。
しかもトイレって、中で休むには不向きだし、物資も無いし。
「だったら、最初からハンデが付いててもいいんじゃないかと思うだろ?」
「うん」
そうじゃなきゃ、ちょっとやってらんないよね。
「で、角三君は最初から『騎士』だったわけだが、これは多分、上位職なんじゃないかと思う。どう考えても『戦士』と『騎士』が並ぶのはなんとなくおかしい。それから、廊下にいて一人で川に落ちた状態から始まったっていう福山が『騎士』っぽかった、っていう情報とも一致する」
ふむ、一理あるね。成程。一人で過酷な条件から始まったら、最初から上級職。
うん。バランスとれていいんじゃないかな。
いやいやいやいやいやいや、良くない。すっごく良くない!
「して、何故に私はメイドのままなので?」
「……さあ……」
メイドだけどさあ、裁縫職人とか調教師とかに転職できてもいいんじゃないの?
なんなの?やっぱり私だけこの世界の法則的な何かからハブられてんの?
なんなの?これ、なんなの?
ケトラミが番犬にできたからついに私も戦力アップだ!とか思ったらこれだよ。
あれか?私が追い付いたらその分だけ皆さんが成長するっていうシステムなのか?これは?




