175話
……ちょっとコンパスの周りをぐるぐる回ってみたけれど、間違いなく私を指している。
たまに反復横跳びの要領でフェイントかけたりしても、間違いなく私を指してくる。
……うん。
ちょっと考えよう。
これ、どういう事だ?
まず、一つ目。
私が元凶である!っていう説。
これに関しては……全く、自覚が無い。そして、私自身が元凶なんだったら、私の周りに居る人たちの元気が無くなって然るべきだから、これは違う。
二つ目。
私が元凶と『共有』することで変化が起きた。
これは割とありそうなんだけれど、その場合も疑問はある。
私以外の人はそもそも、元凶と『共有』できなかったのだ。
つまり、それ以前に、もっと、なんというか……根本的な違いがある気がする。
三つ目。
私が元凶を今、持っている。
……これに関しては、つまり、私の自覚なしに、っていう事になる。
だって今、持ってない……というか、持っているという自覚は無い。
持ってないけれど、コンパスの針は私をストーキングするかの如く動く。
……これ、なんというか……そうじゃないかな、って思える証拠があるんだよね。
私にだけ補正が掛かっていない、という事。
それから、元凶は教室に収納できないという事。
これは、元凶を食料とか装備とかみたいに、教室の中にしまったまま教室を宝石にできない、っていうことだ。
元凶だけ外に出ちゃうから、元凶を収納することはできない。
そして……自分の中に何かがいる、という感覚。
時々夢に出てくる、顔の一部をガラスに代えた、4対の腕を持つ脚の無いマネキン。
あれは……多分、私の中に居るんだろう。多分。
となると、説明は……この疑問の回答に、ならないか。
『この世界に来た時に、教室が現れた位置にあったものは、どうなったんだろうか』
教室に押しつぶされたのか?いやー、ないない。それっぽい形跡は無かった。
となれば、消えたのか。
しかし、元凶がそこにあったら、どうなるんだ。ましてや、そこに人が丁度現れた場合。
……。
ちょっと考えた。
これ、私は皆さんに言うべき?黙っとくべき?
……うん。うん、そうだな。うん。
よし。今までの私なら確実に見なかった事にしたと思うけれど、今の私は残念ながら、色々と重いものを『共有』済みである。
「ちょっといいかーい」
化学講義室のドアをノックすると、鳥海の返事が返ってきたのでちょっと開ける。
あ、もう何人かは寝ちゃってたのか。申し訳ない。
「……何?」
既に布団に入っていた羽ヶ崎君に嫌そうな顔をされたけれど、ちょっとこっちも割と深刻なので許して欲しい。
「ちょっとお話がございまして」
コンパスをポケットから出す。
「これの針が、私を指すんだけど」
羽ヶ崎君が跳ね起きた。加鳥も起きた。針生は起きなかった。流石!
流石の針生も起こされた。
ごめん。折角気持ちよさそうに寝てたのにごめん。
「成程な。しかし、本当にそうかなんて確かめようがないだろ」
とりあえず一通り説明すると、皆さん一様に渋い顔をした。うん、不確定要素が増えてしまったものね。
「……ところでさ、君達ってどうやって元凶の残りの数を調べてたのさ」
神殿で0かそれ以外かは分かっても、1と2以上の違いは分からないはずだ。
「元凶さんが出てくるたびにね?こう、指で教えてくれたんだよね」
加鳥が人差し指を1本立てる。……元凶さん、っていうのは、あのマネキンの事らしい。
「で、最後に消した元凶は」
「2本」
……。その2の中に、その本人っていうか、本元凶が入ってるのかが問題だ。
「つまり何?舞戸とその元凶がカウントに入ってたとしたら、舞戸が帰ったらこの世界の魔力を僕たちの世界に送るパイプが無くなるって事?」
「確かめようは無いですが、そうでしょうね」
ああ、詰んだ予感。
「……おい、角三君、角三君、何やってるんだ。舞戸がびびってる。やめてやれ」
「解剖して、元凶、出す」
角三君が剣をもってふらふらこっちに来た。
お、おおおわああああ!?や、やめんか!解剖して出てくるぐらいならとっくに出とるわっ!
「いや、多分1個ぐらいはあるんじゃないかと思うけど。舞戸さん以外の方向指すことあるからさ」
角三君から逃げるべく、思わず鳥海の陰に隠れた所、鳥海がそういう事を言ってくれたのでほっとした。
「……そっか」
角三君も安心したのか、剣をしまってくれたので私もまた安心した。
「じゃあ、舞戸は特に心配しなくていいんじゃないか?」
鈴本がそう言ってくれたので、まあ、とりあえず心配しない事にしよう。
今まで知らなかった事とかも分かったし、やっぱり話してみて良かった気がする。
……起こしちゃって申し訳ないけれども。
「にしても、ちょっと俺、嬉しい」
何やら針生がにこにこしている。
「舞戸さんがこういうの話してくれることって今まで無かったからさー」
そしてくつくつ笑いながら布団を抱いてごろごろし始めた。
そのまま転がって行って、途中で刈谷に乗り上げて止まる。
「確かに、相談されるのは何気に初めてな気が」
……そうだっけ?
「言ってくれて助かりました。何かこれから支障が出ないとも限りませんし」
「うん」
なんにせよ、とりあえず言えることは、話してよかった、っていう事だ。
相談も終わって、外に出たらケトラミさんがすっかり待機してらっしゃった。
『遅え』
「ごめんごめん」
ぱたぱたハタキではたいて綺麗にしたら、ケトラミさんに埋もれる。はー、幸せ。
『お前、今度こそ帰るんだろうな?』
「そのつもりでいるけれど」
見ると、ケトラミさんがそっぽ向いていた。
『いつまでもうろちょろされてるとうっとおしくてしょうがねえ。さっさと帰れ』
お、おう。……ええと、じゃあ、あの、この尻尾は……。
……うん。お休みなさい。
起きたら朝ごはんを作るよ。
今日は和食の朝ごはんだ。
ご飯にお魚、ほうれん草の胡麻和え、筍の澄まし汁、漬物。
たまにはあっさりもいいよね。
お魚は煮つけと塩焼きと味噌漬けと味醂干しが選べます。
私のお勧めは味醂干し。甘くておいしい。ただし、焦げやすいから焼くときに注意が必要だ。
朝ごはんを食べたら、先輩に会いに行く。
「あら、遂にきたのね」
先輩は優雅にテーブルについてお茶を飲んでいた。
側では先輩の所に残してきたメイドさん人形達が甲斐甲斐しく給仕している。
「準備が整ったので、生徒全員に向けて説明をお願いします」
社長が言うと、先輩は不敵な笑みを浮かべてそれはそれはもう、嬉しそうにした。
「分かったわ。何を説明すればいいの?作戦とかがあるんでしょう?」
社長と先輩が話し始めたのをぼんやり眺めていたら、後ろから肩を叩かれた。
振り向くと、むにっ、と、頬に指がめりこんだ。
「せーんぱいっ!」
花村さんだった模様。まんまとしてやられてしまった。
「どしたの?」
「お礼を言いに来ました!私が生き返ったのは元を辿ると舞戸先輩のおかげだって聞いたので!どうもありがとうございました!」
おおう、なんというか、礼儀正しいというか、律儀というか。
いい子だなあ。
「実際に仕事したのは歌川さんだから、歌川さんにお礼」
「もう100回ぐらい言いました!」
成程、それで歌川さんは『元は舞戸さんだから』とか言ったんだろうなあ。南無。
「そうだ。多分、ご飯が終わったら糸魚川先輩から言われると思うけれど、そうなると混むだろうから、先に装備、取りにおいで」
面識のある人達の装備は、一応その人の事を考えて作っている。
ジョージさん達、デイチェモール組の装備にはそれなりに力を入れたつもりだ。
……これを不公平というなかれ。
最低限は全員にするけれど、それ以上となると平等にはできない。
ましてや、戦闘経験もろくに無かったのに戦うつもりでいるんだから、装備位は整えて然るべきでしょう。
「わあい、ありがとうございます!ご飯が終わったら先輩たちと伺いますね!」
そして花村さんはぴょこぴょこと戻って行った。
さて、じゃあ装備を取りに来る人の為に、私も戻っておくことにしますかね。
メイドさん人形達が片づけを始めた頃、花村さん達デイチェモール組がやってきた。
「悪いな、俺の装備も作ってくれたんだって?」
ジョージさんも照れ臭そうにやってきた。うん、なんというか、この人は色々と詐欺だったと思う。
最初から印象が二転三転しすぎだ!
……この人も、帰ったら男子高校生か……。微妙な気分だ!
「ジョージさんのはこれです。相良君はこっち。後でそっちで鎧も貰ってね」
そしてどんどん装備を配っていくと、花村さんから感嘆の声が上がった。
「うわー!細かい刺繍!これ、先輩が?」
「うん、まあ、『メイド長』だからね」
花村さんの装備には、花の刺繍が沢山入れてある。鈴本の鳳凰の時並には頑張った。
「鎧とか盾とかはこっちね」
戻って来てこっちを始めてくれた鳥海が、相良君に鎧とハンマーを渡す。こっちは結構『複製』でなんとかした部分が大きいらしい。
まあ、布製品と違って一個一個の手間が半端じゃないもんね。
どうせ1%しか性能も落ちないんだし、それでもいいと思うよ。
「まーいとっ!まーいとっ!」
デイチェモール組に装備を配っていたら、演劇部もやってきた。
「私のどれ?どれっ?」
明石が目をきらきらさせているので、明石の装備を渡す。
……あれだ。物の怪のお姫様みたいな格好だ。
露出は大きいけれど、その分きっちり『刺繍』してあるから、そこまで防御力も劣らないと思うよ。
演劇部の人達には予め『シナリオ』を聞いておいたから、それに合わせた衣装になっている。
演劇部はどっちかっていうと魔法使い系の人が多いから、布製品を作る身としては実に工夫のし甲斐があったよ。
明石がここで装備しようとし始めたので、とりあえず教室の中に押し込んでおいた。
金属性装備の方に演劇部の人達が行った辺りで、今度は穂村君達がやってきた。
「ちわーっす!元気してるーっ!?」
君ほどは元気じゃない。
というか、穂村君は割と最近まで死んでた人の1人なんだけど、その割には妙に元気である。
……あれか、リバウンドという奴か。反動か。
穂村君のソウルか何かが死んでいた時に発散できなかった元気を発散せよと囁いているのか。
「穂村達のはこれ一纏めにしておいたから」
何故かって言ったら、あんまりここに居られると私の元気を吸い取られるからだ。
「サンキュ!うわー、すげー!なにこれスゲー!」
「え!マジ!?」
「うわー、マジだ!スゲー!」
こいつら、殆ど『マジ』と『スゲー』だけで会話してるぞ!スゲー!
台風の様に穂村君達が通り過ぎていった頃、『拡声』か何かで放送が入った。
ぴーん、ぽーん、ぱーん、ぽーん。
『全校生徒に連絡です。全校生徒は、メイドさん食堂にお集まりください。全校生徒は、メイドさん食堂にお集まりください。……あ、岬さん、続きお願い。うん、分かったわ。三浦君。……繰り返します。全校生徒は、メイドさん食堂にお集まりください。全校生徒は、メイドさん食堂にお集まりください』
ぴーん、ぽーん、ぱーん、ぽーん。
……放送していたのは放送部のバカップル、三浦君と岬さんだろう。途中でちょっと会話が入ってたし。
しかし、メイドさん食堂って何だ。どこだ。
……もしかして、ここか。
ここだった。
慌てて準備する。机と椅子出して、朝礼台の代わりになるような高さのある台を急ごしらえで針生に作ってもらって。
……しかし、誰だ、勝手に名前付けたのは。
後で色んな人に聞いた所、誰からともなく、何時の間にかそういう呼称で定着していた、との事。
その分メイドさん人形達が愛されていたという事なんだろうから、私としては嬉しい限りである。
『あー、テステス』
そして、今は糸魚川先輩が『先導者』としての装備を身に纏い、『拡声』の杖の調子を確かめている。
集まった全ての人が椅子に座って先輩の言葉を待っている。
『皆さん、こんにちは』
そして、先輩が喋り出した。
『もう怪我している人は居ない?死んだままの人は居ない?周りを見て、そういう人がいるなら、今挙手して頂戴』
その言葉に、少しざわめきつつ、生徒諸君は辺りを見回し、そして、誰も挙手しなかった。
まあ、刈谷も確認してるから、間違いないと思う。
『そう。良かったわ。皆無事で』
そして、先輩は切り出した。
『明日の正午、私たちは元の世界に帰ります』
知っていた人は覚悟を決めるように表情を引き締め、聞いていなかった人はざわめく。
中には、「嫌!」とか言う人もいる。
『静粛に』
先輩がそういう事言って収まるざわめきでは無い。
『静かに』
ざわめきは収まらない。当然である。
……先輩が息を大きく吸ったのが見えて、私たちは慌てて耳を塞いだ。
『だ!ま!れ!』
……耳を塞いでも聞こえた音量に、場が静まり返る。
『今回は、前回みたいにいかないわよ。まず、戦えない人、戦いたくない人。その人たちには安全を保障します。詳しくはこの後の説明を聞いてね』
また五月蠅くなりかけた場を牽制しつつ、先輩は話しを進める。
『それから、戦ってくれる人を募集します。その人たちには最高級の装備を配るわ。だから、っていう訳じゃ無いけれど、力を貸してほしいの』
そこで先輩はこちらを見て、にやり、と、笑った。
『じゃあ、詳しい話に移るわ。柘植、後は頼んだわよ』
「……こうきましたか」
隣にいる社長を見ると、珍しく凄く嫌そうな顔をしていた。
『柘植、早く』
先輩は満面の笑みで社長に手招きしている。
それを見て社長は観念したのか、先輩と入れ替わる形で壇上に上がった。
『……作戦の解説をします。大したものでもありませんが』
社長を良く知っている人はにやりとし、ちょっと知っている人は慄き、全く知らない人は首をかしげる。
『まず、戦えない人は、室内で待機です。その際、室内にも化け物が出るので、こちらで対策を取ります。……いえ、とりました。事後報告になりますが、皆さんが食べていた食事には少量ずつ毒を混入させてありました』
……阿鼻叫喚である。
大混乱。
絶対わざとだろ!お前!この混乱を見て楽しんでるんだろ!
『大丈夫です。現に死んでいないでしょう。これは、『毒耐性』を付ける為です。室内に出る化け物は毒を噴射してくる蛞蝓らしいので』
なんというか、あっという間にこの混乱である。
ああ、社長が輝いて見える。
君は混乱と波風の中でこそ輝くのだね。うん、自重してくれ、話が進まない。
『ですが、万全を期すために、戦わない人にはそれぞれスキルを使って無敵状態になってもらいます。そして、室内の化け物を殲滅し次第、その状態は解いて、その後は教室で籠城、という形になります』
無敵状態、という非常に分かりやすい単語のおかげか、割とすんなり受け入れられた模様。
これ、『眠り繭』って言ってたら多分反発大きかっただろうなー。
『次に、戦う人に付いてです。前回の敗因は、戦えない人のフォローで手いっぱいになってしまった事以上に、バトルフィールドを生かしきれなかった事が大きいと思います』
前回は、中庭に全員揃った状態で開戦してしまった。
そのせいで、脚を引っ張る人は引っ張りまくり、戦える人も手狭な空間でうまく戦えない、という状況になってしまったのだ。
『ですから、今回は最初から攻めに行きます。グラウンド、中庭、昇降口前。あらゆる屋外を利用しましょう。それから、屋内もですね。籠城だけに使っているのでは勿体ない。遠距離攻撃できる人は屋内から狙撃してください。大丈夫です。前回の戦いで、校舎はとにかく頑丈であると結論が出たので。利用しないのは勿体ない』
校舎に化け物がぶつかろうが、外した攻撃が当たろうが、校舎は窓ガラス一枚割れたりしていないのだ。
思えば、溶岩の中でも無傷だったりしてたし、この教室は案外凄いかもしれない。
『それから、できる限り、『転移』というスキルを持っていない人は持っている人と『共有』してください。危なくなったら、絶対に死なないで。今回の戦いでは、死なない事が第一です。危なくなったら、保健室に『転移』してください。よって、回復が得意な人は保健室からスタートしてください』
保健室は1Fの隅っこにある。
外に出ればすぐ中庭とグラウンドが見えるから、復帰するにも丁度いい。
『いいですね?絶対に死なないでください。……挽肉になっても死ななかった奴もいます。下半身が消えても死にません。案外死なないので安心して死なないように、死ぬ一歩手間で保健室に戻ってください』
挽肉になった奴と、下半身焼失した奴が顔をひきつらせてるぞ。
『この後、詳しい説明をします。近接戦闘をする人は小体育館、狙撃する人は大体育館、回復する人は保健室、戦闘に参加しない人はこのままここに残って下さい』
社長がそう言うと、会場はざわめき、そして少しずつ人が動いていく。
「説明漏れはありませんでしたか?」
社長が苦笑しながら戻ってきた。
「多分無いんじゃない?後はそれぞれで説明すればいいんでしょ?」
羽ヶ崎君が言うと、社長はにやり、と例の社長スマイルを浮かべて、言った。
「では、近接班は鈴本、狙撃班は加鳥、回復班は刈谷、待機班は舞戸さんが説明をお願いします」
……。
織り込み済みって訳かあ……。
それから、社長に聞いた内容をそのまんま話した。
なんというか、戦わない人達っていうのはこう、申し訳ながってたり、卑屈になってたり、逆に逆切れしてたりと、方向性もさまざまだったので、説明の腰をべきべきとよく折られた。
最終的には先輩の如く『黙れぃ!』をやったけれど、まあ、なんとか説明は終了した。
教室内の化け物を消すのは私だ、という事が分かった以上、彼らも私の機嫌を損ねる事は得策じゃないと思ったんだろう。
うん、別に良いんだけどさ。私は職務はしっかり全うする所存だよ。
各班の説明も終わって、お昼ご飯(お昼はお好み焼きを各自で焼いてもらった)も終わり、装備の配布も終わった。
そして、峯原さんの人形用にミニチュアのドッグタグを作ってきた加鳥が帰ってきたところで、魔術師系の人達は、羽ヶ崎君と社長の先導の元、ククルツに杖のお買いものに出かけた。
このお買いものはジョージさんの提供でお送りしております。
「早いな」
そして晩御飯の支度を始めると、それを見ていたらしい鈴本が零した。
「ね」
針生は暗器の手入れをしている模様。珍しく口数も少ない。
「今度は全員強くなってるし、何とかなる気もするんだけれど、何ともならない気もするんだよね」
加鳥が不安げに零す。
一回負けた相手に挑む、というのは、心理的にプレッシャーなんだろう。
「まあ、いざとなったら窓から戦況を見て、私が撤退させるから」
撤退、というのは、まあ、つまり、『解体』。
あれやればとりあえず一時撤退ができるからね。
そう思うだけで結構気が楽になるよね。
「そうだよね。それが分かってるだけで気が楽だわ」
「まあ、何にせよ、明日だ。……今度こそ、な」
緊張もするし、怖くもあるけれど。
……とりあえず、明日への英気を養うためのご飯を作ることにしよう。
今日は宴じゃー。




