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172話

 おはようございます。朝です。まだちょっと暗いけど。

 さあ、今日も朝から頑張ろうね。

 昨日はご飯だったから、今日はパンだ。パンの日だ。

 パンもまた作り直さないといけないね。その前に小麦粉が無くなったので、麦を土に蒔いて、「んーっ、ぱっ!」ならぬ、『萌芽』と『生長』で、麦に育ってもらう。

 それを『ウィンドエッジ』で刈り取って、『スプラッシュ』で水流を作って回収、『お掃除』で脱穀と乾燥を行って、できた麦の実を、鳥海の『デストロイ』で粉砕!

 ……小麦農家の皆さん、こんなに簡単に小麦粉作ってごめんなさい。


 今日も数種類パンを作る。『発酵』して寝かせておいたら、メイドさん人形フル動員で、むにむにこねこね、整形する。

 それをオーブン(またしても増設してもらった。もうここがパン工場だって言われても疑う人は居ないと思う)で焼けばパン。

 凄くパン。

 大量の焼き立てパンの他に、ジャガイモのポタージュとオニオンスープと茸のクリームスープを用意。

 他に、ジャムとかバターとかと、あと焼いたベーコンとかだね。

 メイドコンベアーは遂に、注文を取りに行ってテーブルに届けに行くレストラン方式になった。

 メイドさん人形の進化が留まる事を知らない。なにこれ!




 さて、ご飯が終わったら、とりあえずお昼ご飯の仕込みをしてから、装備を作り始める。

 ちなみに皆さんは、元凶との戦闘訓練をしに、演劇部や情報室・新聞部あたりから、元気のある人たちを連れて3Fに行った。

 ……そこら辺って、戦闘経験がある人達で、つまり、私たちが直接交渉して、元の世界に帰る方法を実践してくれてた人たちだ。

 だから、反感が無かった訳じゃ無いんだけど、それ以上に、まあ……分かってくれる人も、大勢いたのだという。

 あの戦い……っていうか、一方的にやられっぱなしたあの時、なんで社長が死んでたのかが疑問だった。

 だって、普通死なないじゃない、社長。引き際を見誤るとは思えないし。

 それ、何故かって言ったら、新聞部の女子達を庇って大技出して、それで死んだらしいのだ。

 社長の言い分は、「『奈落の灰』の都合上、命を数量的に見た方がいいと考えました」とのことだ。

 やだ、かっこいい。

 ということで、そういう理由もありつつ……まあ、結局は、うん、皆さんの人望だと思うよ。


 はい、じゃあ、早速作ろう。

 とりあえずは、グライダの進化した糸をひたすら織っていく作業になるかな。

 自分でも見えないスピードでガタガタガタガタやりながら、ケトラミさんとマルベロの毛をどうしようか考えよう。

 やっぱり、布にするにはちょっと足りないかな。

 編んで紐とか、ベルトとかが妥当かもしれないね。

 よし、方針が決まった所で、まずは毛の『鑑定』から。

 ……おお、流石ケトラミさんだ。その毛は、『風無効』『勇敢』という効果が付いている。

『風無効』はそのまんまだね。風属性の攻撃は無効、という。

 そして、『勇敢』は……自分より強い相手に対して、自分の能力を底上げする、というスキルだった。

 これは……これは、皆さんに装備させねば!


 ケトラミさんの毛は、長い。20㎝以上あるね。長い奴は30㎝ちょいぐらいある。

 そりゃ、でかいんだから、毛も長くて当然だね。

 しかしだな、その割には繊細でしなやかな手触りなのだ。これに埋もれると幸せになれる。

 色は鈍色。けれど、ちゃんと繊維の方向を揃えて光沢を出せば、銀に近くなるだろう。

 ……そして、まあ、毛の抜け代わりの時期だったらしく、結構な量の毛を頂いている。

 それを、少しずつ撚りをかけて糸にしたら編んでいき、細い細いロープ状にする。

 更にそれを編んでいって、ベルト、というか、飾り帯にした。

 それが8本なんとかできた辺りで、毛は殆ど尽きてしまった。

 ……残った毛を編んで、紐をつくる。これは私が貰ってしまおう。腕か髪にでも結んでおくことにしようかな。……ちょっと『勇敢』になれた気がする。


 さて、じゃあ、マルベロの毛に移ろうかな。

 こっちも質感はケトラミさんの毛と似てる。色は黒いね。

 さて、こっちの効果は、『再生』と『警備』。

『再生』は、『回復速度上昇』の上位互換みたいな、おっそろしいスキルで、『警備』は、自分の周りの物事をより繊細に、的確に捉えられるようになるスキルだ。

『探知』と違って指向性は無く、全方位のある一定区間、っていうかんじだね。

 こっちもケトラミさんのほうと同じように、紡いで、編んでいく。

 ケトラミさんの毛の方と合わせて、銀と黒の飾り帯になった。……よし、とりあえずこれでこれはよし。


 じゃあ次だ。

 次は、進化した『玻璃蜘蛛の糸』で織った布で、皆さんの装備を新調していく。

 消滅したり、ぼろくなったりしてるからね。それに、糸が変わる訳だからさ。少しでも性能を上げられるなら妥協しませんよ。

 部分部分でマイナーチェンジや、結構大胆な変更なんぞも含めつつ、ひたすら縫っていく。

 色んなスキルを分けてもらって集中力とかが増したのかな、前よりも早く縫いあがった。

『染色』とかも精度が増してるっぽいなあ。

 ……あ、やべ、もうお昼ご飯時である。

 支度しなくては。いそげいそげ。




 今日のお昼はお魚フライですよ。

 分速100から揚げを超えた我々にとっては、この程度の揚げ物、朝飯前よ。

 お魚フライの他は、ポテトサラダと野菜スープ。

 そして、デザートが付くよ!

 それが、朝ご飯の後に作っておいた牛乳寒天だ!

 フルーツソースか黒蜜かを選べます。どっちもたっぷりかけて食べるのが美味しいよね。

 ……あ、そうだ。メイドさん人形達の装備も、刷新してあげたいね。


 午後は午後でまたお裁縫である。

『染色』した後は、ひたすら刺繍。もう、これでもかっていうぐらい、刺す。

 社長辺りのスキルと互換性があるのか、『調合士』で、より広い範囲で色んな効果が付くものが分かるようになった分、刺繍が捗る。

 その結果、鈴本の着流しが染と刺繍で花鳥風月になってしまった。……いろんな色使おうとすると、さ。

 ……鳳凰の方が良い、って言われたら、そっちも作ろう。


 それから、まあ、ちょっと実験だ。

 以前やった、『神聖加護』を付けるための、模様を織り込むあれ。

 あれ、さ、その後ククルツの市でおまけに貰った『魔除け』の模様と一緒だったわけだ。

 つまり、模様自体に効果があるんだと考えられる。

『刺繍』だと駄目だったのは、『刺繍』の判定が先にでちゃう、とかそういう話なのか、それとも、少しでも立体になるのが悪いのか。

 分からないけれど、色々なスキルを貰って精密な操作ができるようになった『染色』なら、一発で模様を染抜くことができる。

 そして、それなら、やはり模様の効果を得ることができる模様。

 ……っていうのは、全て前提。

 ここで、私、思った訳ですよ。

 ……模様に特殊な効果があるなら、ほら、『祈りの歌』で出てくる模様、あれにも効果は無いか?と。


 結論。

 ありました!

『祈りの歌』、『願いの歌』、それから『水鏡の歌』の模様、それぞれに効果があり、しかも重複可能!

 ……よし、裏地は決まったな。


 そうして、結局丸一日かけることになっちゃったけれど、皆さんの装備と、それから私の装備も新調した。

『刺繍』と『染色』で最大限に強化した服です。

 ……ちょっと気になって、ぱぱっと『刺繍』と『染色』した布を作ってだな、包丁で切り付けてみた。

 そしたら、恐ろしい事に、弾かれた。

 うん。満足だ。私は満足だ。最高の仕事ができた。

 あとはこれを量産するだけだ。……ここまでのクオリティはできないかもしれないけれど、最大限に性能のいいものを作るつもりだよ。


 晩御飯は中華炒め物三昧という事にさせていただいた。

 いや、さ?マルベロとハントルが持って帰ってきたお野菜の中に、人間の身長を上回る豆の莢があってだな。

 ……それは、もう、アホみたいにでかい空豆であった。

 お察しの通り、寝た。思わず、そのふっかふかの莢の中で、寝た。

 ケトラミさんとはまた違うふかふか具合。ああ、幸せ。

 憧れだったのだ。空豆のベッド。

 ……っていうのは置いておいてだな、その空豆の、ベッド部分じゃなくて、豆部分。

 これを唐辛子と塩と一緒に『発酵』させて、豆板醤を作る。

 作っちゃったら、作りたくなっちゃうんだよね、中華。

 という事で、麻婆豆腐、青椒肉絲、回鍋肉、鶏肉と木の実の炒め物、ニラ玉、と、大量にこさえてみた。

 鶏肉と木の実の炒め物、この世界に来る前はカシューナッツで作ってたんだけど、この世界でカシューナッツは見つけられてない。

 なので、よく分からないけれど、甘みの強い胡桃みたいな、この世界特有のものらしい木の実で代用してる。

 ……おかずはそれで、後はご飯と、中華風卵スープ。デザートはマンゴープリンである。

 メイドさん人形達が各テーブルに炒め物の大皿を持って飛んでいく様子を見て、点心三昧も楽しそうだなあ、と思った。

 点心が入った蒸篭とか、お皿とかをもってうろうろしてるメイドさん人形に声を掛けると、それが貰えるっていうシステムで。

 ……メイドさん人形達にチャイナドレスを縫って……あ、いやいや、そうするとメイドじゃなくなっちゃうな、うん。




 飛び回るメイドさん人形に対して、何の疑問も抱かなくなった生徒諸君がテーブルについて、楽しく食事をし始めた頃。

 戦闘訓練をしていた人たちが帰ってきた。

「お帰りなさいませー!」

「ただい……なんだこれ」

 あ、そういえば皆さんはレストラン形式のメイドさんコンベアーを見ていなかったね。

「進化した」

「わあ、かわいいねえ」

 加鳥がお皿をもって飛び回るメイドさん人形達にほんやりしている。

 早速戦闘訓練組にも席を用意して、配膳する。

「……なんか、このクオリティのもの食べてると……今までなんだったの、って、思うわ」

 月森さんが何とも言えない顔をしながら炒め物をつついている。

 その横の横辺りで、峯原さんがメイドさん人形にちょっかいかけるものの、すげなく振られている。

 ふふふ、うちの従業員は仕事中にそういう事をしないだけの、理性と知性、そして品性を兼ね備えたメイドさん達なのだよ!


 あ、そうだ、次に作るのはこの人たち……戦闘訓練をしている人たちの装備だろうから、希望を聞いておこう。

 ……という事で、テーブルを回って、戦闘訓練組の装備について、聞いて回ったのであった。

 よし、明日も裁縫だ。明後日も裁縫かもしれない。

 そして恐らくその頃には、死んだ人も生き返るだろう。

 そうしたら、今度こそ、リベンジ、である。


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