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157話

「はろー」

 という訳で、やって参りました、女神本の世界であります。

『よく来たな』

「作ったものに責任持ってもらうために来ました」

 流石に、こいつに聞いて分からないって事は無いだろう!

『ふむ、思い当たる節はあるが……何の話だ?』

 あるよな、そりゃ!

「元凶の話です」

『この世界自体の事では無いのか!?』

「いや、まあ、間接的にはそういう事になるんだけど、つまり、『虚空の玉』です」

 この名前を出すと、女神本の雰囲気が変わった。

『ドミトリアスに会ったか』

 ドミ……なんだって?

 困惑していたら、それを察してくれたらしい。

『ドミトリアスというのは、魔王の名だ。良い名だろう?余が付けたのだ!』

 ああ、魔王さん、ドミトリアスさんというんですな。オーケイ、覚えた。けど多分使わない!

「うん、会ったよ。魔王さんに」

『ふむ、そうか。……あいつは相変わらずなのだろうな』

 魔王さんが言った事と、同じことを言うんだなあ、この女神さまは。

「1人チェスしてた。病気とかではなさそうだったよ……あ、そうだ、「つまらぬ嫉妬を詫びておいてくれ」とのことです」

 とりあえず伝言を伝えた所、本の頁が勢いよくめくれてパタパタした。

 ……笑ってるらしい。

『そうか!あいつがか!……そうか』

 なんというか、本当に、この本、魔王さんが好きなんだなあ。うん。


 そして、しばらくパタパタしていたなあ、と思ったら、やっと頁が大人しくなった。

『して、聞きたいこと、というのはどういう事だ?あいつの所へ行ったなら、既に『虚空の玉』が何かは知っておるのだろう?』

 この女神本も割と話が速くて、私、好きよ。

「ああ、うん、つまりね、魔王さんが作らなかった部分……消そうとすると化け物が出てくる仕様についてなんだけど」

『消そうとすると化け物?それはまことか?』

「知らない?」

『知らぬ』

 ……な、なんだってーッ!?


 衝撃を受けつつ、なんとか詳しく聞いてみる。

 ……あれだ、ゲームの最初のダンジョンで詰まって攻略本見たら『最初のダンジョンは自分の力でクリアしよう!』とか書いてあった時ぐらい絶望しているぞ、私は!

「元凶って、特に、そういう仕様にしたとかじゃなく……?」

『余が変えたのは、魔力の流れのみだ。余に向かって流れておったのを、なんとか捻じ曲げた。さもなくば、この世界は1年経たずに滅びておったであろうからな。……余は、魔力喰いである故に』

 ……魔力喰い……ええと、エコじゃない、って事かな?うん。

「ええと、元凶の仕様が、誰かに変えられる可能性は?」

『本になったとはいえ、余ですらあいつの作ったものを破壊しきれず、しかも変更できたのが魔力の流れのみだ。そうそう変えられるものでは無かろう』

 お、おお、そうかね。

 しかし、だとしたら、誰が何をどうやって変えたっていうんだ。

「その魔力の流れとやらが、故意に変えられる可能性は?流れが変わって仕様が変更になったりしない?」

『勿論、可能性はある。しかし、化け物が出てくるほどの変化、となると……相当に膨大な魔力と術式が必要であろうな。わざわざやるものでは無い。……まあ、多少は何とかなるものだ。やっただろう』

 ……やったっけ?

 え、やったっけ!?

『汝の『共有』だ』

 ……あー……はいはいはい、うん、分かった。

 成程、あれは……元凶と『共有』して、元凶がちょっと白っぽくなって、それで負担が減った、っていうのは……元凶が私から魔力吸って、で、その一部が私に戻ってくるように……魔力の流れ、とやらが変わった、っていう事なんだろう。

『であるからして、汝が『共有』した元凶ならば、化け物が出てこない可能性もある』

「『共有』した元凶からは『奈落の灰』が得られない、という事は」

 もしそうだったら、元も子もないぞ!

『原料は変わらぬのだ、そうそう変わるまいよ』

 ……そういうもんか?原料変わらなくたってなあ、スクランブルエッグとオムレツは違うもんだぞ?

『どうせ『共有』した元凶はあるのだろう、ならばそれで試してみよ』

「無責任な」

 もし、『共有』済みの元凶が外れで『奈落の灰』が手に入らなくて、けど、消したカウントには入って、その次に消そうとした時にもっと強い化け物出てきたら本当にどうしようもないんだけども!

『……汝はおよそ『消す』という動作については他の追随を許さぬであろうに』

 え、今なんと?

『おそらく、その化け物とやらは、『お掃除』で消えるぞ』

 ……OH。




 衝撃的なアドバイスを頂いた所で、とりあえず帰してもらった。

「お疲れ。どうだった」

「ええと、元凶の化け物化については、知らないらしい。そういう風には弄ってないって」

 とりあえずそこら辺の話をすると、皆さん深刻な顔になってきてしまった。

「それでだな、私が『共有』した元凶でやってみろ、って、言われた。それから……おそらく、『お掃除』が効くぞ、とも」

 言ってみると、案の定、渋い顔された。

「一撃必殺、決まらなかったらアウト、だよねえ、それ」

 そうなると、必然的に敵が動かない時……つまり、出てきた瞬間がねらい目なんだけど、そのタイミングって、加鳥の『滅光EX』のタイミングでもあり、『お掃除』に『滅光EX』を超える価値があるのか、っていう話になってくる。

「んー、まあ、女神さんが言うなら、そうなんじゃないの?少なくとも、『滅光EX』で一撃で倒せない奴が出て来ちゃったらさ、そうするしかないと思うし」

 鳥海がなんか、怖い事言い出した!

 なんだよ!『滅光EX』で一撃死しない敵って!そんなの生物じゃない!


 その後も、会議は紛糾してだな、結局、鈴本が纏めてこういう事になった。

「女神曰く、舞戸が『共有』した元凶は出てくる化け物が出てこない可能性があるらしいな。とりあえず、それでいってみよう。もし駄目だったら、加鳥の『滅光EX』で頼む。その次の事はその次に考えよう」

 明日は明日の風が吹く。

 うん、いいね。次の事は次考えよう。

 ……いや、現実逃避とか、そういう意味じゃなくて、マジで、情報が無さすぎるのだ。

 全知全能の女神(本)と、魔王に聞いて分からなかったんだから、後はひたすら試行回数重ねて、法則性見つけるしかないよね……うん。

 うん、人間の底力、見せてくれようじゃないか!




「じゃあ、いくよー」

 今度はじゃんけんで負けた針生が『碧空の種』を植えることになった。

 勿論、今回消すのは、私が『共有』した、ちょっと色が薄くなってる元凶である。

 そして、針生が種を植えた瞬間。

 ……自分の中に深く根付いた根を無理矢理引っこ抜かれるというか、鋏でぶつり、と無遠慮に断ち切られるというか、そういう……激しい喪失感を伴う激しい痛みが走った。

 私にとって幸運だったのは、こう、元凶の変化に気を取られたのか、私の方に気付く人がいなかった事である。

 元凶から溢れる光は白っぽく、そして、それが収まった時に現れたのは。

 ……こう、なんというか、うん。一言で言うならば、こうだ!

 幼女のマネキン!


 幼女のマネキンの出現に、なんとなく皆さん及び腰である。

 うん、まあ、幼女体型した人型、だから、なあ……。

 ……しかし、甘えたことも言ってられないのである。

 幼女マネキンは、すっ、と、その手を掲げたかと思うと、左手に盾を、右手に剣を持っていた。

 そして、一気に地面を蹴って、私に向かってくる。

「『滅光EX』!」

「『箱舟』!」

 しかし、加鳥が予定通りビームをぶっ放し、刈谷が全員をガードし。

 ……ビームが消えた時には、もう幼女マネキンの跡形も無かった。

 ……いや、さ。私、思った。

 ビームでワンキルしちゃうと、強さが、全く分からん!




「あれは何だったんだ」

「明らかに形状変わったよね」

 うん、今までこう、もうちょっと動物っぽかったり、ただ丸っこかったりしてただけなのが、いきなり人型になったもんね。しかも、こう……意志を持ってるんじゃないか、っていう動き方してたし。

「……とりあえず、奈落を見てきてくれ。『奈落の灰』が必要量になっていればこれ以上元凶を消さなくていいからな」

 まあ、次があるのか無いのかによっては、これ以上考えても無駄だもんね、という事で、私は社長を連れて、奈落へ『転移』。

 青い花畑の一角に着くと、社長は慣れた様子で『奈落の灰』回収ポイントを見る。

「どう?」

「……ぎりぎり、アウト、ですかね」

 ……あちゃー。

 まあ、アウトなもんはしょうがない。

 とりあえず、一旦戻る。

「どうだった?」

「ぎりぎりアウトですね」

 社長が報告すると、皆さん落胆である。

「どうする?次も舞戸さんが『共有』した元凶でやる?」

 もう一回遊べるドン!っていう幻聴が……。




 もう一回やる事になりました。はい。私は元気です。

 ということで、私が『共有』した元凶2つ目も消すことになりました。

 ああ、私の左の二の腕が久々にすっかすかな感覚である。寂しい。

「えっと……こう?」

 じゃんけんで負けたのは角三君だったので、種を植えるのも角三君である。

 ……そして、またしてもこう、何かを盛大に引っぺがされるような感覚になって吐きそうになったりしながらもなんとか持ちこたえた。

 光が収まった時に出てきたのは……幼女、じゃなく、少女、位になったマネキン、である。

 ……しかし、まあ、なんというか、さっきとちょっと違うのは、その手が掲げられることは無く、その手に剣と盾がもたれることも無かったという点である。

 ……まあ、だからと言って、戦闘にならなかった訳では無い。断じて。

 少女マネキンは、腕を下ろすと、右手には杖が現れ、左手には……なんか、明らかに魔法っぽいものが出てきた。あー!やばいやばいやばい!

「『滅光EX』!」

 しかし、それが放たれる前に、エネルギー充填を終わらせていた加鳥が一発お見舞いする。最早、様式美!


 ……ビームの光が収まった時、恐るべき事実が明らかになった。

 ……生き残りやがった。


 少女マネキンが杖を振り、左手を翳すと、衝撃波のような物が表出する。

 私?私は圏外ですよ、そりゃ勿論。教室の中から見ておりますとも。外に出てみ?死ぬぞ?

 ……そして、衝撃波は音も無く辺りを薙ぎ払い、皆さんにダメージを与えていく。

 ……ダメージが入る、っていう事は、やっぱりあれは魔法じゃない、っていう事なんだろうか。

 だとしたら、スキル?

 ……考えてる間に、決着はついてた。

 鳥海と角三君が同時に仕掛けて、それぞれが右手と左手から出た透明な盾みたいなものに阻まれてる間に、刈谷が剣で少女マネキンを刺し貫いた。

 ……やるなあ。




 少女マネキンも無事消えた所で、私は再び社長を連れて奈落へGO。

 最早あんまり期待せずに『奈落の灰』を採集している社長を見ていると、社長がにやり、としながら振り返った。

「これで足ります」

 ……おお、やっと、かあ。

「お疲れ」

 疲れたような笑顔を見せながら掲げられた社長の手に手を打ち合わせて、何とも疲れた雰囲気のハイタッチをする。

「あー、これで、やっと、合唱部の人達も復活できるね」

「他に死んだ人がいなければいいんですがねえ」

 ……おい、やめろ、やめてくれ!怖い事言わないでくれっ!


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